日記20240131

 「リアルとリアリティは何が違うのか」としばしば尋ねられる。とてもよい質問だ。

 フィクションを描く上で、リアリティはとても大切である。適切なリアリティは物語への読者の没入を助け、もう一つの世界を体験する大きな手がかりとなる。

 好例は今放映されている『ダンジョン飯』におけるダンジョンの生態系や冒険者たちの生活の細部だろう。あれらは当然現実のことではない。つまり“リアル”とは違う。しかし、「ありそうだな」と強く感じさせるリアリティの強度を持っている。よく練り込まれ、様々な角度から照射される疑念にも耐えられるだけの「本物らしさ」がある。これが“リアリティ”である。

 リアリティはファンタジー作品やSF作品に限ったものでもない。弁護士ものや医療もの、普通の恋愛ものに至るまで、「現実ではそんなことはないが、読む者聞く者見ている者に本物っぽいと思わせる細部の書き込み”というのはいくらでもあるものだ。それは必ずしも“嘘のこと”に限らない。小道具が本物っぽい、このキャラクターなら机の上が散らかっているだろう。飯の不味い店という雰囲気が厨房の散らかり具合から伝わってくる……物語は無数のリアリティによって支えられている。

 ではリアルとは何が違うのか。
 リアルは嘘を許さない。戦車砲が直撃すれば中に乗っている女の子は怪我をしてしまうし、この人数でこの規模の店を切り盛りすることはできない。名医が診ても患者は死ぬし、ロボットが人型であるためには恐ろしく複雑な背景を必要とする。

 物語はリアルである必要はないが、リアリティを感じた方が、スムーズに没入できる。この違いを知っておくことは、物語を創る上で無益ではないはずである。

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