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これからの「ウチららしい」マーケティング 〜スター顧客を事業加速のエンジンに〜【2022/12/9 KEENイベントレポート②】


2022年12月9日にKEEN Manager β版リリースとKEEN株式会社への社名変更をご報告する自社主催イベントを行いました。イベントではウイングアーク1st株式会社でユーザーコミュニティ「nest」を運営する河村雅代さん、
パラレルマーケターの小島英揮さん、Web3.0の領域に深い知見を持つ公認会計士の水地一彰さん、株式会社Unyteの上水雄暉さんにご登壇いただきお話を伺いました。
本記事では小島英揮さんの登壇セッションのレポートをお届けします。

登壇者
Still Day One合同会社 代表社員 パラレルマーケター 小島英揮さん
KEEN株式会社 CEO 小倉一葉

※以下敬称略


コロナ禍を経ても変わらないコミュニティマーケティングへのニーズ

小倉
小島さん、本日はよろしくお願いいたします。
まず小島さんに、コロナ禍が始まり気づけば3年が過ぎようとしていますが、その中でBtoBマーケティングやコミュニティマーケティングにどのような変化があったと思いますか、ということを伺いたいです。
コロナ禍ではイベントは基本的にオンラインオンリー、デジタルの接点が増えたことで情報にはアクセスしやすくなった一方で、オフラインのコミュニティの場に求められていたものを今どこが担っているのか、オフライン回帰が叫ばれる中でもまだ完全にオフラインに戻りきらない状況をどうご覧になっていますか?

小島
変化したところでいうと、これまでのオフラインファースト時代にはオフラインならではの、リアルな場で参加者同士がつながって熱量が上がっていくこと、これを僕は「発火」と呼んでいますが、これがオンラインだと難しくなっていますよね。

一方、コミュニティマーケティングというものに多くの人が可能性を感じているということは変わらないと思います。
なぜかというと長期的にお客様に選ばれなくてはならない、推奨されなくてはならないという状況は、より一層シビアになっている。日本の人口も減ってマーケットが小さくなる中で、新規だけでやっていける状況は終わりになってきています。本日ゲストスピーカーの河村さんの所属されている、ウイングアーク1stさんでも(見込み顧客ではなく、既存顧客にフォーカスする)「カスタマ―マーケティング」という部署が立ち上がっているように、コミュニティ的なものを活用して既存のお客様の声をもっと広げたい、活用したいというニーズはこの世の中にすごく広がっていると思います
だからと言って、うまくできているということはまた別です。


オンラインとオフラインが交差する今、「予熱」が大事

小倉
コロナ禍でもうまくコミュニティを運営できているところはどういうところだと思いますか?

小島
もともとコロナ前にオフラインでうまくやっていたところは、ベースがあるうえでオンラインというやり方がプラスされた形なのでうまくいっているように思います。しかし、これからコミュニティを立ち上げようというところは、一緒に走り始められるコミュニティメンバーを見つけにくい。オンラインのイベントだと、オフラインのようにとなりの人と盛り上がるなんていうことができないじゃないですか。オンラインイベントの主催者は一生懸命参加者をzoomのブレイクアウトルームに放り込むんだけど、そんなことは起こらない。
…会場のみなさんもうなずいてらっしゃいますね。

そんな中でもうまくやっているところって、結局(前もって)会うべき人に会っているんですよね。オンラインでも事前・事後の1on1をいろんな人とやっています。
僕は「プレヒート(予熱)」という言い方をしていますが、例えばオンラインで50人いたら、10人から15人はすでに火が付いた状態で入る。これをやっているところはオンラインでもいい立ち上がりをしている。
いきなり全員オンラインで参加して、「今日からコミュニティスタートです」っていうのは、実際なくて、その前に仕込まれている。そうすると、もっと大事なのは最初に誰を巻き込むかということ。これは目利き力が求められる。

コミュマネこそデータを味方につけるべし

小倉
2019年とくらべて、今最初に巻き込んでいくのにベストな人物像は変わっているように思われますか?ふるまい方や行動様式など。

小島
ふるまいなどは変わっていないと思いますよ。ただ、オンラインの場はオフラインよりも記録に残りやすい。オフラインイベントは誰が来たか結構わからない状態だったのですが、(オンラインになって)トラッキングしやすくなったのはよいことだと思います。
僕の著書のなかでも、オフラインだと話の中心になっていてかつ周りの人にビールを注げる人は結構いいぞと書いているように、オフラインだとファーストピンを見つけるコツみたいなものがきっとある。ですがオンラインだとその場でファーストピンになるような人を見つけるのはとても難しい。
ですので、あらかじめ行動データが取れていて、誰とエンゲージしておこうとか、次のミートアップでこの人とこういう風に会話しようとかがわかっていると打ち手が打ちやすいですよね。

小倉
自分自身も最近オフラインのイベントに参加者として参加したときに、まさに「放流」されたような感じで、「どこで誰と話したらいいんだろう」という戸惑いがありました。2019年ごろには事前にSNSでつながって、オフラインでも会って、というのを自然とやってきましたが、それが一度断絶されたように思います。コミュニティの在り方が新しくなったからこそ、場もリフレッシュされてきている感じがします。

小島
確かにそうですが、メカニズムは変わっていなくて。最近だと(「はじめまして」をもじった)「リアルまして」というのが良く聞かれます。つまり、オンラインの時にだいぶ仲良くなったんだけど、実はリアルで会うのは初めてです、というような、まさに「予熱」です
そういうように、オンラインとオフラインを行き来できるような、そういう体験を促せるようなコミュニティであるのが、やはり一番いいですよね。いきなりオフラインにみんなを集めて、参加者が戸惑ってしまうような形ではなく。正確にはそれはやっちゃいけないんですよね。
だから、そういう風にならないように、誰とエンゲージメントをつくっておけば、ほかの参加者をケアしてくれるかというのを見極めておくことが大事です。できるなら視野が広くて会話を広げられる人を各テーブルに配置できるといいですよね。

小倉
運営側の立場になると、(参加者の方が)放流されたと思ってしまうところから、サヴァイブできるような、手を差し伸べるような仕掛けだったりを事前にできるなら、良い体験にできるかなと思うのですが。

小島
僕の書籍でも、それ(ファーストピンになるような人を見つけること)は「コミュニティマネージャーがやるべき」というトーンで解説していました。それぐらいできてしかるべきだ、と。しかし、だんだんやっている中でそういうことが得意な人ばかりではない、と。イベントに参加して、「この人はいいぞ」とピンと来る人ばかりじゃない。
だからこそ、あらかじめ(良い人が)透けて見えるようになるのは大事な気がします。「コミュニティマネージャーのスキルでなんとかせい」という時代ではもうない。なぜかというと、コミュニティマーケティングへのニーズが高まった今、もっと多くの企業がコミュニティを立ち上げなくてはならないとなっているのに対して、(ファーストピンを見つけ出すのが得意な)人が足りていないわけですよね。なので、間違った人を(ファーストピンとして)配置する前に、データで見えるほうが良いんじゃないかなと思ったけど、それもそれで大変だよねってずっと思っていたんですよね。
なので、KEEN Managerでユーザーの行動量でスター顧客の候補を見つけるというのは、理にかなっていると思います。僕はね、アンケートってあんまり信用していないんですよ。ヘルススコアをとって、傾向として下がっている上がっているを見るのにはいいかもしれないけれど。アンケートはその時どう思ったかであって、やっぱり嘘をつけるんですよ。
その点、イベントに参加する、ツイートする、ブログを書く、といった行動は嘘をつきません。だから行動だけを見ていくのはすごく良いと思っています。
さっきデモ(=イベント会場で公開していたKEEN Managerのデモ)を見た方は、(KEEN Managerで計測するイベントスコアとシェアスコアを見て)「これだけ?」って思ったかもしれないですけど、その2つが大事な指標なんです。それをエクセルやスプレッドシートなどを使って人力で一生懸命やるにしても、コミュマネがどれだけ(ユーザーの行動や特性について)覚えていられるのかとも思います。なので、KEEN Managerの中でファーストピン、スター顧客を生み出していけるようになる状況が作れるとすれば、(KEEN Managerの登場が)大きなマイルストーンになる可能性があるなと思います。


データをもとに背中を押すべき層をターゲティングし、ムーブメントをつくる

小倉
ありがとうございます。
KEEN Managerでユーザーの行動データをとっていくと、SNSなどでたくさん発信している人たちはやはり目立つのですが、イベントにしか参加しない人たちもたくさんいる。発信かイベント参加か、どっちかという人たちが多いんですよね。なので、そういう人たちをどうするか、どう次のステップにいっていただくか、そういうことをKEEN Managerの中で支援できたらなと思っています。

小島
そういうところは、たぶんみなさんと一緒に作っていくところじゃないかなと思います。
今このツールって体重計みたいなもので。そのときのスナップショットがわかる。じゃあその次にどうしたらよいかは今後さまざまなケースを学習していかなくてはならない。例えばイベント参加頻度は高くないんだけれど、アウトプットが多い人は(今後のロイヤリティ向上施策のターゲットとして)注意したほうがよい、とか、そういうのが出てくると思うんですよね。その勝ち筋をみなさんとどんどん作っていけると、面白いところに行けるような気がします。

小倉
ありがとうございます。
スター顧客の中でも傾向が全然違って、みんな同じようにステップアップしていくわけではなくて、やはりみなさん行動傾向って違っていて。

小島
たとえば「この人最近すごくツイートするようになったね、だからスター顧客だ」っていうのも間違いはないんだけど、ツイートを頻繁にするようになった因子はどこになるのか。実はほかのスター顧客のひとからアウトプットしたほうがよいと促されているかもしれない、とか。
あとはその人と会話するということもすごく重要です。なにが要因で行動が変わったのかや、ブロッカーがあったとしたらそれはいったい何だったのかなど。ブロッカーを理解すればそれを外すことができます。ブロッカーの理解がないまま背中を押すのは結構難しいですよ。

小倉
そうですね。さらに、今までは1000人2000人コミュニティメンバーがいたら、均一に施策を行ってしまっていたんですよね。「この人を育てたい」というターゲットはいたんですが、それだけでは対象が少ないのでみんなに同じ施策を行ってしまっていた。でも、注力すべきところやちょっと背中を押すと大きく変わる層がデータで見えてくる、ということをKEEN Managerを通じて身に染みて感じています。

小島
もしくはピタゴラスイッチみたいなもので、どこを押したらムーブメントが起きるかを理解することが重要。だから初めから全員をターゲットにするわけではない、きわめてマーケティング的なんですよね、コミュニティって。ボウリングのように順番に連鎖してしていく、その数字をどう設計するかがコミュニティマーケティングだと思います。なので、最初から全員にあたろうとすると結構失敗してしまう。なので火が付きやすい人からアプローチすべきです。
KEEN Managerはそれをあらかじめデータで可視化しようということだと思います。そして、ユーザーの行動の変化のタイミングで実際に何があったのか、変化のきっかけになったのは何かを直接聞いて、発火の仕組みを理解するというように活用するとよいと思います。


コミュニティマーケティングこそ会社と事業のゴールへの近道。会社のパーパスの実現をスター顧客とともに目指す

小倉
もう一つ小島さんに聞いてみたいのは、コロナ禍でコミュニティを一度止めたり再検討するようなところも多いのではないかと思っているのですが、その点についてどうお考えですか?

小島
今のやり方が通用しなくなったからやめたというのは思考停止そのものじゃないかと思ってしまいますね。マーケティングをやっているんだからやめる必要はないだろうと。

小倉
もしかしたら別の方法に取り組まれることになったのかもしれませんよね。コミュニティのほかにも、コンテンツマーケティングとか…

小島
それはありだと思っていて、ただコロナ禍だからコミュニティを辞めましたっていうのはメイクセンスではないと思います。
今までのやり方が通用しないのでほかの方法でやります、というのはその通りだとは思いますが。そもそも、なんでコミュニティマーケティングをやっているんですか?というところから問い直す必要があるかもしれません。マーケティングは会社のビジネスゴールがあって、それの近道となる手段としてやっているわけで。コミュニティはマーケティングの手法としてよかったからやっていたはずです。これが止まるということは、お客様の声をどんどん広げていくこととか、お客様の中からスピーカーを探すことをあきらめることになってしまいます。
もしかして、(コロナ禍でコミュニティが止まっているのは)、事業の目標とコミュニティという手段がリンクしていなかったのかもしれないです。コミュニティのゴールがふわっとしているから、やり続けるのが難しいとなってしまっているのかもしれないですね。
逆にいうと、これからコミュニティをやられる方は、会社のゴールや目標達成のための近道となる手段のひとつとしてコミュニティをやっていかないと、どこかで行き詰ったことになってしまうのかな、と思います。

僕がコミュニティマーケティングを勧めているのは、たまたまやって面白かったからじゃないんですよ。マーケティングを長くやってきて、どうやらこれが一番近道だぞ、スケールするぞと思っているからコミュニティの話をしています。
ボウリングのピンが倒れるように、初速はゆっくりかもしれませんがあるところからものすごく伸びる。

僕の古巣の話ですが、AWS(Amazon Web Services)がラスベガスで「re:Invent」というオフラインのイベントをやっていて、日本からも1000人くらいが参加しています。最初日本から参加する人は100人に満たない数だったのですが、参加した人たちが周りに「行ってみたらすごく良かった」というもんだから、次々に参加する人が出てきた。やっぱり「よかった」と言われたものには影響されるじゃないですか。別に宣伝費用をかけたわけでもないし、お客様の旅費なんて一度も出したことはありません。お客様の声でここまでくるということは、スケールする方法に他ならないと思うんですよ。
でも多くの企業では、(コミュニティで使われる)はっきりとした指標がないから、「コミュニティがうまくいかない、やめよう」となってしまうのかもしれないですね。だから、KEEN Managerは、(コミュニティメンバーの)行動から見ていきましょう、そこからいろいろ考えましょうというのを促す、すごくいいツールだと思います。

小倉
私たちもどんどんコミュニティイベントやコミュニティメンバーからのシェアが増えていくとよいと思っていて、それをご支援していけたらいいなと思っています。

小島
やっぱり発火しやすい(=参加者の熱量が広がりやすい)イベントの作り方ってあると思っていて、オンライン時代はそれが難しかった。どうしてもセミナーになってしまう。オフラインの交流会である、ビールを継ぎまわって会話を広げるような、それっぽいことをオンラインでもどうやっていくかですよね。

小倉
最後に、事業のゴールへの近道がまさに「ウチららしいマーケティング」だと思うのですが、自社らしさや自社らしいマーケティングの活動計画をしていくということをお聞かせいただきたいです。

小島
やっぱりその会社が持っているユニークなゴールがウチららしさを作るんじゃないかなと思いますね。最近では「パーパス」というようにもなってきていますが、売上を作るだけじゃなくて「世界をこういうふうにしたいです」というゴールを掲げるようになってきた。その世界観を一緒に作れる人は誰なんだろう?つまりウチららしいお客さんて誰なんだろう?ということだと思います。
それって単にイベントにたくさん来ているだけじゃない。KEEN Managerのデータを使ってみなさんが決めることだと思います。誰をスター顧客にするか。会社のパーパスややりたいことに近い人を見つけ出すということですね。
それって採用活動に似ていて、「こういう人にコミュニティに入ってほしい。こういう風に活躍してほしい」という人物像を決めて、リクルーティングしていく活動に他ならない。面白いのは、途中からコミュニティメンバーの方が自分と同じような人たちを呼んでくれて、それが連鎖して会社にとって必要なお客様の支持を集めることができる。それができるようになることが、「ウチららしいマーケティング」のターニングポイントになるんじゃないでしょうか。

小倉
小島さん、ありがとうございました。




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データ活用でカスタマーマーケティングを実践。そのリアルと未来に向けて【2022/12/9 KEENイベントレポート①】




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