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2021.11.7|仙台@福岡|強豪らしさなんて

東地区の優勝を狙う仙台89ERSが、西地区のダークホース的存在になりつつあるライジングゼファー福岡のホームに乗り込みました。

ここまで事前の予想を覆す健闘を見せている福岡。それゆえに注目のカードだったわけですが、GAME1ではジェラルド・ビバリーのファウルトラブルに見舞われながらも粘る福岡を振り切り、仙台が強さを発揮しました。チャンスを逃した翌日はえてして大差になることも多いのですが(同節の西宮と熊本がその典型)、どっこいGAME2では福岡が一矢報いました。そこで慌てて観直してみたわけです。まったく福岡さんには頭が上がりません。

福岡の好調の要因については私なりに考えたので、ここでは格上(と思われた)仙台の視点で考えてみたいと思います。

この試合ではスリーがとにかく入らなかったことが指摘されていますが、実際はどうだったのでしょうか。

■仙台89ERSの3FG%
vs福岡GAME1 6/22|27.3%
vs福岡GAME2 8/31|25.8%
2021-22シーズン(11試合) 8.2/24.4|33.6%
2020-21シーズン(59試合) 7.6/23.0|33.3%

こうやって見ると2試合とも確率は大して変わってないんだよね。積年の課題であるアウトサイドシュートは今年もそれほど進展していません。成功数は少し上がっているものの、B2全体で見れば可もなく不可もなくといった印象。いや、優勝を目指すのであれば物足りないと言わざるを得ません。敗れたこの試合に関して言えば、その入らないスリーを多投してしまったことが敗因の一つではあるでしょう。

もう少し詳しく見てみると、Qごとの3FGAの内訳は10→6→6→9。しかし、1Qこそ渡辺翔太が4本決めたものの、それはどうやら確率変動だったみたいで、その後は2本→2本→0本という結果。特に勝負のかかる4Qで決めきれなかったことがモロに響いてしまった格好です。

それにしてもなぜ仙台は得意でもないスリーに頼らざるを得なかったのでしょうか。この試合、福岡はほとんどの時間帯でゾーンディフェンスを敷いていました。当然、ジャスティン・バーレルやジェロウム・メインセラら屈強な仙台インサイド陣を意識したものですが、これがなかなか厄介。スタートは2-3や3-2なんだけど(後半はほぼ2-3スタート)、後列の外国籍選手が仙台のビッグマンの動きに合わせて高い位置にまでポジションを移動してきたり、そのスペースを埋めるために前列の選手が下がったり入れ替わったりして、かなり変則的な守り方をしていました。いわゆるマッチアップゾーンというものです。

そうしたゾーンに手を焼き、攻めどころを絞り切れずにスリーで打開しようとしたのはまあ理に適っているのですが、ちょっと待て、仙台ってインサイドが強いんじゃなかったっけ。この試合では外国籍選手同士のバチバチのやり合いが見どころの一つで、これはジェラルド・ビバリーがファウルトラブルで出場時間を失ったGAME1には少なかった要素の一つです。それもあってよく笛が鳴る試合でもあったけど、コールが多いのに慣れているのは福岡の方。そうしたこともあって仙台はアウトサイドを選択したわけですが、それが自分たちの強みを手放すことになったとも言えそうです。

相手の強みを真正面から潰しにきた福岡と、自らの強みを貫けなかった仙台。これは結果論で、実際にはワイドオープンもつくれていたし、それが決まっていればどうということもなかったのでしょう。しかし、戦い方という観点では、メンバー的に格下である福岡が相手を抑えることに集中しやすいのとは対照的に、強豪たる仙台はそれを受けて立ってこその面もあるわけで、ジョーダンやビバリーの高さとパワーに打ち勝って欲しかった。

この試合の仙台は、福岡の戦略を意識するあまりに、合理的に勝とうとして自分たちのアイデンティティを蔑ろにしてしまった。…なんてことは物語的な思考に過ぎるでしょうが、強さでねじ伏せようとするのか相手の弱みを突くのか、強豪の立ち居振る舞いというのは難しいものだなと考えさせられる試合でした。

ところで、福岡はこの試合で14本中8本(57.1%)のスリーを成功させました。スリーが当たりのチームと外れのチームの差というのは簡単ですが、試投数14本ってぜんぜん多くないよね。成功数は仙台と一緒だし。ちなみに福岡は3FG%でB2トップを走っているのですが、面白いことに平均試投数では一番少ない。つまり、ものすごく高効率でシュートを決めていることになります。これに関しては、GAME1では福岡のバックコート陣は仙台のオフボールDにかなり手を焼いていましたが、GAME2では序盤に仙台ガード陣のハンドチェックが立て続けにファウルと判定され、仙台が守りづらくなったことも遠因になったのかもしれません。


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