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2021.11.20|香川@佐賀|防御は最大の攻撃

怪我人続出で早々に上位争いから離脱するかと思われた佐賀バルーナーズでしたが、苦しい台所事情をやりくりしながらの健闘が光ります。前節は熊本ヴォルターズから1勝をもぎ取り、今節は西地区首位を走る香川ファイブアローズをホームに迎えました。最初に結果を言うと、第1戦は佐賀が快勝。その要因は巧みなディフェンス戦略にありました。

この試合ではまず井上諒太の貢献が挙げられます。香川の大黒柱であるウッドベリーに対してとても上手く守っていました。簡単にボールを渡さないオフボールディフェンスはもちろん、ドライブに対してもしっかりコースに入って守る。平均20.5得点のウッドベリーをFG4/11の11得点に抑えたのみならず、与えたフリースローはわずかに3本。チーム全員で無駄なファウルを与えないことを徹底していました。

また、佐賀は香川のスクリーンに対して基本的にスイッチで対応していました。サイズのミスマッチを臆することなく、むしろ素早く積極的にスイッチをすることでズレが生まれず、香川のオフェンスが後手に回っていました。ファイトオーバーする時も判断が早く、かつスクリーンをかわすのが上手いため、試合を通して香川のスクリーンがあまり機能せず。香川の3FGAは18本(成功は4本)で、これはアベレージよりも10本以上少ない。それだけ佐賀のディフェンスがしっかり相手を追えていたということでしょう。

一方で、ギャレット・スタツやファイパプ月瑠らのビッグマンがスクリーナーになるケースでは、スイッチせずにドライブに対してペイント内で待ち構えるプランだったようで、これがウッドベリー対策としてハマりました。ウッドベリーのドライブアタックは、スピードで抜き去るというより、ディフェンスを巻き込み抜群のボディバランスでエンドワンを奪う点にあります。ペイント内でしっかり対応できたことで、ドライブに対してスタツらが正対して守れたことが、ファウルコールが少なかった要因でしょう。

あまり目立ちませんが、佐賀はもともとディフェンスのいいチームです。スティールではB2トップ(9.2)で、この日も11のスティールを奪い、香川に22ものターンオーバーを強いています。出足の鋭いスイッチやファイトオーバーでスリーライン付近を死守、ペイント内に誘い込んだらスタツの高さやガルシアの長さを活かしてシュートを封じ、苦し紛れのパスを奪って速攻に繋げる。走り出したら止められないガルシアを擁する佐賀にはぴったりのディフェンスプランです。「攻撃は最大の防御」とはよく言いますが、この試合の佐賀はその反対、攻撃に連なる見事な守備でした。

ディフェンスの話ばかりしていますが、オフェンスでは復帰したマイルズ・ヘソンや新加入の西川貴之が持ち味を発揮していました。どちらも2桁得点をあげたように、スクリーンからのドライブは新しい強力な武器になりそうです。

熊本戦ではひたすらガルシアやスタツのローポストアタックを繰り返していましたが、それはそれでだんだん小慣れてきて、ガルシアのポストアップだけでも大変なのに、そこへハイポストからスタツやファイがスクリーンに来るもんだから厄介。ポストの逆サイドにはしっかり岸田や井上がスタンバイしていて、西川やヘソンも加わったために脅威がアップ。ガルシアが日本人選手にマークされることの多い点を逆手に取ったもので、限られた人数でなんとか効率よく戦うために組まれたセットのような気がしているのですが、今や鉄板の佐賀のセットになっています。まさに怪我の功名。

そんなわけで、絶対的エースのウッドベリーがリズムに乗れず、PGの兒玉も岸田の執拗な守備に晒され、まったく調子の掴めない香川は、アンガス・ブラントやリース・バーグもポロポロとゴール下を外しまくり、いいところを出せないまま敗れてしまいました。その発端になったのはウッドベリーが井上に上手く守られたことでしたが、ウッドベリーにボールを預けた後、そのまま「おまかせ」みたいな形になっていることが多いのが気になりました。全体的にスクリーンプレーも少ない印象で、今までは兒玉やウッドベリーが個人の能力で簡単にマークを外せていたのが上手くいかなかったために混乱してしまったのかな。

また、ウッドベリーが井上に上手く守られたのに対して、ガルシアに対しては主に筑波が付いていたものの、まったく止められませんでした。外国籍選手に日本人選手が付くのは同じでしたが、結果は明暗が分かれました。いずれにせよ2戦目では何か香川も手を打ってくるでしょう。それもまた楽しみの一つです。



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