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2021.11.14|愛媛@奈良|試合の終わりとフリースローワンダーランド

バンビシャス奈良はこのところ接戦続きだ。勝ったり負けたりなので、これをどのように評価すればいいかはわからない。ただ、とにかく試合が最後までもつれる。象徴的なのがフリースローだ。

愛媛をホームに迎えたGAME1では、愛媛があと1本フリースローを決めていればほぼ試合が終わっていたはずのチャンスを残り30秒で2回も逃し、ジョーダッシュ・マブンガの逆転スリーの呼び水となってしまった。さらに、俊野佳彦が2本とも決めればそのままサヨナラ勝ちのフリースローを落としてオーバータイムへもつれ込み、愛媛は奈良に勝利を攫われてしまった。

GAME2では反対に、愛媛3点ビハインドの残り1分8秒で俊野佳彦がフリースローを獲得。2本目を落として万事休すと思われたが、アンドリュー・フィッツジェラルドがリバウンドをティップする「3点プレー」で同点に追い付き、またもや延長戦になったというシーンもあった。すると今度は奈良の木村がフリースローを2本ともミスするわ、愛媛は愛媛でせっかくもらったフリースローを決めきれずに最後まで奈良に追いつくワンチャンを許し続けるわで、とにかくまあフリースローミスが勝負の綾になった2試合だった(試合は愛媛が勝った)。

なぜか奈良の試合では、重要な局面においてフリースローが外れる。まさにフリースローワンダーランドだ。そう言えば昔、ならドリームランドってあったよね(まだあるんだっけ?)

奈良をフリースローワンダーランドたらしめた一戦としてB2民の記憶に新しいのは、熊本ヴォルターズとの一戦。同点で迎えた残り24秒、是が非でも2本決めたいフリースローを奈良の薦田が1本ミスし、熊本がタイムアウト。嫌な流れの中、タイムアウト明けの熊本の攻撃では、果敢にドライブを仕掛けた佐々木隆成がファウルを奪う。この瞬間、多くの人々が逆転か少なくとも同点を信じたはずだ。ところが、昨季は90%以上の成功率を誇った佐々木がなんとフリースローを2本とも外してしまうのである。

残りはわずかに11秒、ファウルゲームにいくしかない熊本はデビッド・ドブラスにフリースローを与える。奈良に訪れたアップセットのビッグチャンスだったが、ミスは伝染する。なんとドブラスは2本連続で失敗し、わざわざ熊本に逆転のチャンスをお膳立てしてしまう。千載一遇のチャンスを得た熊本はもちろんLJ.ピークのパワープレー。必死の守りも虚しく、残りわずか1秒で審判の笛が吹かれる。意気揚々とフリースローレーンに向かうピーク。「終わった」と誰もが思った次の瞬間、あろうことかピークもまたフリースローを2本とも外してしまったのである。

たった11秒間で、両チーム合わせて6本連続でフリースローを外して試合が終わるというまさかまさかの結末。そこそこ長くバスケットボールを観てきたけれど、こんな終わり方は初めてだった。ここに「奈良フリースローワンダーランド」が誕生したのだ(してません)。

続く山形との対戦では2連敗を喫したものの、山形の終盤のフリースローミスによって「あわや」と思うシーンが生まれ、フリースロー魔境感は揺るぎないものとなった。一体奈良に何があるというのだろうか?

そこで、これまで奈良と対戦したチームのフリースローの確率を調べてみた。奈良との対戦時のみフリースロー成功率が下がっていれば、いよいよフリースローワンダーランドは本物ということになる。

無題のスプレッドシート

…うん、そんなことあるわけないよね。半ば予想できたことではあったが、相手チームのフリースロー成功率と奈良の勝敗や試合の点差には何の関係もないことだけがわかりましたとさ。ちなみに、グレーのベースが奈良が敗れた試合です。山形、香川、青森、佐賀とフリースローランキング1位〜4位のチームとの対戦が多かったというのはちょっと面白かったけど。

ともあれ、最後までもつれる試合が多いということは、それだけ粘れるしぶといチームであるとも言えるはず。これは昨季から感じていたことですが、単純な強い・弱いではなく、勝てそうな試合を落とさないことにかける執念にこそ奈良の特徴が現れている気がします。

昨季も西宮や名古屋など上位チームから複数回勝利をあげたことからも知れる通り、勝負強さは折り紙付き。今シーズンも早速、熊本を倒しています。決して潤沢な予算のあるチームではなく、補強らしい補強もできなかった中で、これだけ白熱した試合をできる要因は何か。そう考えながらこの試合を観てみたものの、やっぱりこれといった理由は見つけられませんでした。だってワンダーランドだからさ。

編成的な観点では、実績のあるベテランが多いことや、ゲームを読む能力に長けたPGとインサイドの汚れ仕事を引き受けてくれるセンターがいることが大きいとは思います。今季の横江豊とドブラスしかり、昨季の大塚勇人とショーン・オマラしかり。相手の隙を見逃さず、自分たちの流れになれば絶対に離さない。油断していると、気づいた時には奈良のペースに絡め取られている。見ろよ、あのシカッチェの潤んだ瞳を。

強いとは言いづらいけれど、虎視眈々とチャンスを窺う。そんなしたたかさが奈良には感じられます。リーグのレベルを健全に保ち、観ていて面白い試合が生まれるためにはこうしたチームもまた必要不可欠。試合だけでなく、西地区やリーグ全体をもつれさせる存在になってほしいです。




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