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【資料】ALPS処理水の海洋放出 「食物連鎖と生物濃縮」

[2023/9/9更新]
Cs-137を例に、海洋放出された核種の食物連鎖による被曝の可能性の考える。

Cs-137は比較的早期に体外へ排出されるので、蓄積や濃縮の心配はないとする意見があるが、一定の放射性物質を常に摂取する環境では、摂取と排出が平衡する量(平衡量)の蓄積があるとするのが正しい。
粗い試算だが仮に以下のように計算できる。

a) 海域濃度: 0.5Bq/L(5号機取水口前の検査値)
b) 魚介類の濃縮係数: 平均100
c) 魚介類の生体内濃度: a*b=50Bq/kg
d) 年間一人当たり魚介類の消費: 24kg(2018年)
e) 人の摂取量: c*d=1,200Bq/年=3.3Bq/日
これに学習院大 田崎研究室の資料(参考文献参照)にある係数を掛け合わせると…
人の体内に蓄積する平衡量:143*e=成人472Bq
人の被曝量(実効線量): 5.6*e=成人0.02mSv/年

今回の海洋放出で懸念される核種はCs-137だけではない。他のC-14,I-129,Sr-90等のリスクも、同様にこれに加算される。

年間追加被曝線量の規制が年間1mSv以下である。人が普通に生活をして基準値内の食物を普段食べたときの摂取量が0.6mSv/年。残り0.4mSvであることを考えると、この0.02mSv/年は無視できる量ではない。

◾️Cs-137
放射線: β,γ
物理学的半減期: 30年
生物学的半減期: 70〜100日
濃縮係数:
生物中濃度(Bq/kg)/海水中濃度(Bq/L)=5〜100
平衡量:
1Bq/日を摂取したときの平衡量: 成人143Bq
内部被曝量: 
1Bq/日を摂取したときの被曝量: 成人5.6μSv/年

———参考文献———

◾️環境省HPhttps://www.env.go.jp/chemi/rhm/h28kisoshiryo/h28qa-02-04.html

◾️海洋生物環境研究所(2013/10)
「海産生物と放射性物質」
海水に溶け易いセシウムが海産生物の体内に取り込まれる経路は、飲水、呼吸器官である鰓などを通じて海水から直接吸収される経路(海水経路)と、海水中のセシウムを吸収した餌生物を食すことにより,消化管を通じて吸収される経路(餌経路)がある。体内に取り込まれたセシウムは、体液を介して一旦全身に分布するが、骨等の硬組織には取り込まれ難く、筋肉等の軟組織には取り込まれ易い。排出は、鰓や排泄器官から体外に急速に排出されるが、筋肉等の軟組織に取り込まれたものはゆっくりと排出され、最終的に筋肉等に多く蓄積する。
https://www.kaiseiken.or.jp/study/lib/news120kaisetu.pdf

◾️環境省HP
https://www.env.go.jp/chemi/rhm/h28kisoshiryo/h28kiso-04-04-10.html

◾️水産庁
「ヨウ素とセシウム」
https://www.jfa.maff.go.jp/j/kakou/Q_A/pdf/qanda_j.pdf

◾️厚労省
「食品中の放射性物質の 新基準値及び検査について」
https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/iken/dl/120801-1-saitama_2.pdf

◾️IAEA 放射線防護と放射線源の安全:
国際基本安全基準
https://www.nra.go.jp/data/000354300.pdf

◾️原子炉等規制法https://www.nra.go.jp/data/000308625.pdf

◾️放射性同位元素等規制法https://www.nra.go.jp/data/000045581.pdf

◾️水産庁(2023/8)
「水産物の放射性物質調査について」https://www.jfa.maff.go.jp/j/housyanou/attach/pdf/kekka-21.pdf

国立研究開発法人水産研究・教育機構
「水産物ストロンチウム等調査結果」
https://www.jfa.maff.go.jp/j/housyanou/attach/pdf/kekka-16.pdf

◾️学習院大 田崎研究室(2014/11/3)
「食品中のセシウムによる内部被ばくについて考えるために」
https://www.gakushuin.ac.jp/~881791/housha/details/CsInBody.html#2
放射性セシウムを一日に平均 1 ベクレルずつとり続けたときの、体内での放射性セシウムの平衡量

放射性セシウムを一日に平均 1 ベクレルずつ、ずっと摂り続けたとき、どれだけの内部被ばくがあるかを、ICRP(国際放射線防護委員会)の換算表に従って求めた。一日に摂取するセシウムの量と被ばく量は比例する。 だから、たとえば一日に平均で 10 ベクレルを摂取するときは、この表の値をそのまま 10 倍すればいい。

◾️食品安全委員会
「放射性物質を摂ったときの人体影響(計算方法)」
https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/iken/dl/131008-3.pdf

◾️国際放射線防護委員会(ICRP)
自然界に存在するバックグラウンド放射線や医療関連の放射線を除いて、線量相当は年間に5ミリシーベルト(mSv)を上回るべきではなく、年間平均1ミリシーベルト、一生の間に70ミリシーベルト以下に抑えておくべきである。

◾️水産生物におけるヨウ素の形態別濃縮係数
https://www.ies.or.jp/research_j/data/2012/2200_H24.pdf

◾️汚染水の海洋放出におけるヨウ素129の問題点
https://note.com/chidaism/n/n062148a900a4