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「ポルノ蜘蛛の糸」

最近は夢を見なかった。
夢を見ないのは、辛い。
なぜ辛いのかははっきりとはわからない。
多分夢の中でしょっちゅう原稿を書いているから、きっと現実の世界で「面白いことを書けない」のがストレスなんだろう。
書きたいと言う思いも強くあるのだろう。

今年は人にたくさん出会えないから、原稿が浮かばない。
いつもに比べて時間があるから、ヘルパーさんに本を読んでもらっている。
人のものを読むことで刺激を受けて、何か書けるかなぁと期待していたが、どうも他人の原稿を読んで自分らしい原稿を書けるものではない。色々なところに行って、人と会って、皮膚で感じたことを考えて、それを書くしかないと悩んでいた。

私には原稿をとったら、何もなくなってしまう。
私にとっては書くことが、生きる武器だ。
それがnoteでも、要望書でも、ポルノ小説でも。

豊かに生きているときは、面白い夢ばかり見た。
そのときは現実と夢で見たことを編集しながら原稿を書いていた。
それは幸せな仕事だった。

去年はヘルパーさんが集まらない年だったので、本でも書いてベストセラーにすれば、注目を浴びて、志願者がくるのではないかと思い、初めて小説というジャンルに挑戦した。

それは障がい者を主人公にした「失楽園」のようなものだった。
障がい者にとってのリアルなセックス・シーンも盛り込んで、何とか本にできる程度の長さにはしたものの、できた原稿をどこの出版社に送ってもいい返事が返ってこなくてショックだった。

本当のところ、自分自身でもダメだなぁとわかっていたことだ。
その原稿に費やしたのは6ヶ月。

その半年分の疲れが出て、膀胱炎になり、生まれて初めてカテーテルを当てた。
トイレに行かなくてもいいから、我慢しないで遠慮せずにたくさん水を飲めるものの、カテーテルは皮膚を傷つけて血が出てしまった。

小説を書いているときに、「私ってやっぱり変なのかな?」と頭をよぎった。
よくよく考えたら、小説がいくら売れても、それで直接ヘルパー志願者が増えるわけではないのに。社会は変わるわけではない。
でもそういうバカな自分も好きだ。
いずれにせよ、「ちょっとおかしくなったんじゃない?」と言われるようなことをこれからもやりたい。

「こんな夜更けにバナナかよ」を書いた、ルポルタージュ作家の渡辺一史さんにも、最近その「失楽園」の原稿を見せた。
「これは小山内さんのことじゃないの?」と読んだ渡辺さんから聞かれた。
「違うよ、これは全くフィクションだよ」と私が答えると、「小山内さんは人のことを書くんじゃなくて、自分のことを書いたら売れるんじゃない?」と言われた。

私が書いた小説には色々なセックスの経験を書き連ねてはみたものの、私自身にはあれほど激しい(どのぐらい激しいかは、note読者の皆様にはまだ秘密です)経験はない。

そういえば、ものが書けないことで悩んでるとき、面白い夢を見た。
暗闇で、着物を着た背の高い男性が立っている。
上に蜘蛛が浮いている。
蜘蛛が糸を出して、私の胸に落ちていこうとしている。
すると、立っていた男性がサッと蜘蛛を手に掴んで、窓の外に投げた。
私は、一瞬その男性に、恋をしてしまった。
蜘蛛を掴んだ手で、私の胸をいじってほしかった。
私は蜘蛛になりたいと彼に言った。

そこで目が醒めてしまった。
私は慌てて、夢の続きを見たかったので、二度寝したが、残念なことに、続きは見られなかった。
でもこのようなことを書いていくと、面白い小説になるだろうなと、感激し、蜘蛛の夢の続きを見たいと毎日願って眠っている。


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