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優しいって言われるのは好きじゃない。褒め言葉は、ときに傷つける言葉となる

「俺さ、優しいって言われるの
 好きじゃないんだよね」
「えっ、どこが優しいの? 」
「(笑笑)
 そう言うと思った」

そうやわらかく笑った彼の表情を見たら、
なんだか急にコーヒーが飲みたくなった。

……落ち込んだところから蘇生した。よかった。

一時は、どうなるかと思ったけど、
その笑顔は、昔から変わらない少しだけ意地悪で優しい彼の顔だった。

彼は、他人に優しい人間である。
怒鳴ったところをみたことがない。
他人のために喧嘩をしたり
他人のために怒りが溜まって涙する姿を知ってる。
自分のためには、嫌味も流す強さがある。
落ち込んでると、笑い飛ばしてくれるし
自己犠牲も厭わない。

でも、
私限定で優しくないのだ。

優しいんだけど、優しくないのだ。

無理難題は当たり前で、
スケジュール変更も当たり前。
自分が合わせるなんて頭はひとつもなくて、
合わせるのは私ばかり。

「ごめん、会えるかどうかわからないんだけど
 待ってて欲しいんだ」
と言って、3時間近く待たせた挙句に
会えたのは40分。
付き合ってた時は、そんなこともあった。
待ち時間がわかれば、
映画でもどこでもいくのに、
いつ呼ばれるかわからないから気が気じゃない。
読書好きでよかったと、そのときは本当に思った。

ここだけ見ると、全然優しくないでしょ?

でも、
寄り添って話を聞いてくれて
大変なときには駆けつける。
3分だけ活動する
ウルトラマンみたいな人なのだ。


私にだけ甘えてると理解してしまってからは
その3分のヒーロー姿だけで、
普段の姿を許せてしまう私も、私なのだ。


私は、
塾のバイトのときから、
人が成長して育って
私から巣立っていくことに
すごい喜びを感じる。

きっとこれは、友人の影響なんだ。

小学校からの友人に
中学時代、勉強を教えてた。

数学15点
国語40点
理科18点
社会22点
英語8点

とかいう、
私にとっては、奇跡的な点数の友達で、
なんだかんだと世話を焼いた。

一緒に勉強して、友達がテストで、
人生初の68点を取ったとき、
泣きながら2人で喜んだ。

その経験からなのか
【人は誰しも可能性があって、絶対に成長する】
と思っているし

【その手伝いをするのが好き】
なのであり

【卒業は嬉しいこと】
と思っているのだ。

だから、
【私といて、成長しないんだなぁ、この人】
と思うと、すぐに別れる(3ヶ月は様子を見てる)

【この職場で、成長する余地、もうないわ】
と感じると転職をする。

【この協会で、やることが見つからない】
と察するとすぐにやめてしまう。

私の人生を構成するど真ん中に
【成長することは楽しいこと】
【知らないことを知ることは、ワクワクすること】
なのだ。

だから子育ては、楽しくて仕方ないし
他人と話すことも苦ではない。
読書も大好きであるので、note徘徊もよくしている。
今、自分でしている子どもレッスンも、お料理で運気を上げる講座も、ここに通じているのだ。


「優しいよね」
「優しい男性が好き」

世間では「優しさ」がもてはやされるのに、
彼は
「優しすぎて……」とフラれたことも多い。

「女の子は大事にしなさい」と育てられたから
決して、手をあげたり、突き飛ばしたり、
チカラで勝とうとすることがない。
チカラでなんか、大抵の女子は負けるだろう。
そのくらい身長もチカラもある人だ。
そういう意味では、非常に優しい人間なんだと思う。

でも、
だからこそ「優しい」が標準装備すぎて
褒め言葉にならないのだ。
言われても嬉しくないし、
なんならフラれたことを思い出して
ヤキモキした時代もあったらしい。

私にも同じような言葉がある。
「勉強できるよね」
「仕事できるよね」
と言われることだ。

褒め言葉として使われたこともあれば、
嫌味として使われたこともあるし、
仕事に邁進しすぎて
「俺と仕事、どっちが大事なん?」と言われて
別れたことが何度もあるから。

できる自分、が標準装備なのだ。
なんなら、できない自分には価値がない、と思ってた時代もあった。
今は、そんなことないけど。

勉強?
やればできるのだ。
やってもできないのは、やり方が悪いだけ。
なら、やり方を変えて、
各教科、自分に合うやり方を探すだけなのだ。

だから、
塾の先生のときも、
いろんなやり方で子どもたちにアプローチしたし、
やり方が合わないとわかると、
【東大生の勉強の仕方!】みたいな本を借りてきて、やり方を仕入れた。

成長するのも
努力するのも
自分自身でしかなく
私が代わりに英単語を覚えても
子どもたちの点数にはならない。

トイレに行きたいときに、
代わりにトイレに行ってもらっても、
あなたはスッキリしない。
同じことなのだ。

結局は、
どうしたら成長するレールに早く乗れて
自分で「勉強って面白いじゃん」と感じて
進めるようになるのか?

そのサポートしか、できないのである。

だから、
成長したら嬉しいし、
卒業したら嬉しいのだ。
私の元から「こんな夢、叶えに行きますね!」と
卒業して羽ばたいていく後ろ姿に、
感動を覚えても、寂しさはほとんどないのだ。

成長して帰ってきたよ!と、
報告してくれたら、
こんなに嬉しいことはない。



優しいよね、と言われるのが嫌な彼。
できる人だよね、と言われるのが嫌な私。

どちらも、その能力は標準装備で
その能力のせいで
悲しい思いをしたことがあるから。

  

そう思うと
万人に使える褒め言葉って
実はないのかも知れない。

  

彼が、他人にばかり優しくて
自分自身には優しくできないことも、

本当はすごく優しくて
私のヒーローって知ってる。

でも、そう褒められるのが
嫌いなのことも知ってるから

「私には優しくなかったじゃん。
 思い出してみて?? 」

って、冗談っぽくのぞき込んで
笑い飛ばしてあげることにしてるんだ。

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