ジストニアになった(3年前から)ギタリストの話。

長いですが最後までお読み下さい。

主にクラシックギターを演奏する私は3年前、2021年の明け頃から右手の中指が徐々に動かなくなり、殆ど使い物にならない状態でこの3年間の演奏活動を続けてきました。様々な治療や検証を経て現状、ジストニアという症状以外には考え辛いという診断になっています。

音楽家にとってのジストニアを簡単に説明しますと、日常生活では全く問題なく動く指(管楽器奏者の場合は口)が、楽器の演奏になると途端正常に機能しなくなる症状のことを指します。痛みは全くありません。
よくメンタルが原因と勘違いされますがそれは間違いで、間違いというより、まだ詳しいことが解明されておらず分からないということのようです。
ピアニストとギタリストに特に多いというデータもあり、その点でもメンタルとは別の部分に根拠があると感じています。確かな治療法は今のところありません。

長年作曲とクラシックギター(指弾き)を専門にしてきた私が、コンサートの頻度を下げ、アニメーション制作を始め、エレキギター(ピック弾き)の機会を増やし、自炊や食事に気を遣い、今まで以上に作曲のペースを上げていること(作曲は指に関係なく演奏以上の本命でしたが)。全てはこの指の不調がきっかけなのです。

※前提となる私の活動内容はこちら


この記事でお伝えしたいことが2つあります。

コロナ禍から4年。演奏家仲間が辞めてしまったり、コロナ禍の活動に対する考え方の違いで疎遠になってしまったり、とても悲しい思いをしてきました。加えて自分に関しては指の不調も重なった「最悪」とも言える期間でした。
でも、バンドを仕切り・曲を書き・公演を主宰してきた自分がギターを満足に弾けなくなったからといって、創作・発表の意欲を削がれるようなことは全く持ってありませんでした。

指弾きが出来ないならピック弾きを練習すればいい、音楽(公演)ができないならアニメーションでも何でも違う創作をすればいい。
世の中は刻一刻と悪くなっていずれライブだのアートだの言ってる場合じゃなくなるかもしれません。それでも生きる時代は選べないのです。生きる時代や自分の境遇・国を憂いで毎晩飲んだくれているだけじゃあなたのその健康持て余したままあっという間にくたばって死んでしまいますよ?
それよりも、現状をできる限り前向きにとらえて、いま出来る・すべき活動に積極的に・楽しんで取り組んだほうが余程充実した音楽家人生だと思うのです。思いませんか? これがお伝えしたいことの1つめ。

指の不調から、実際にピックをほぼ初心者から猛練習し、いまではピックで叶う奏法に関してはかつての指弾きと同じくらい自由に演奏できるようになりました。
ピックを会得したことでエレキギターの演奏が満足に行えるようになり、出来る活動の幅も以前より広がりました(※一般的にクラシックギターは指弾き、エレキはピックで弾きます)。

また、自分にアニメーション制作の道が拓けたのは幸運でした。
「音楽やめてアニメに行ったんですね」とも随分言われましたが、指が動かず・そもそもライブ活動のできないコロナ禍に、それでも休むことなく「創作し続ける」という思いを叶えてくれる、本当に唯一の手段だったのです。

近年の私を演奏を知る方たちのほうがこの告白には驚きだったかもしれません。コンサート中の演奏から直に私の指の不調を察した方はほぼ皆無だったはずです。共演者ですら、耳の良い数人にしか指摘されていません。
これは、不調の指をなるべく使わない(命名:一本指打法)、指弾きとピック弾きを混ぜて演奏する等の工夫をして活動してきたからです。
真面目な運指だと今は『禁じられた遊び』すら弾けません。でも不真面目な運指だったらいくらでも弾けます。

要は「十分なんとかなってる」ということです。

既に症状を説明してある日頃の共演者たちにも、指の影響を感じずに共演できているとお墨付きを頂いています。テクニックはさておき音楽的にはむしろ上達しているとの言葉も頂いています。
この苦しい3年間を文句一つ言わずに付き合っていただいた共演の何人かには本当に感謝しかありません。

▶ さてそこで、これから音楽活動の主軸は、まず作曲(何でもやります)。そして演奏に関してはピック弾き(特にエレキ推し)中心でしたら問題なく出来ますので、是非ためらいなくお誘いいただけたら嬉しいです。
ライブもレコーディングも、出来る部分の活動は増やしていきたいと考えています。

これまでは出来ることも出来ないことも一緒くたに控えてきてしまいましたが、出来ることに関してはもう一度積極的に取り組んでいきたいと考えています。
また指の不調以降は正直「初共演」にとても億劫になり、本当にごく数人としか出会えていません。これも積極的に解禁していきたいと思っています。これがお伝えしたいことの2つめでした。

この文章を打つタイピングの指にも最近、若干の力の入らなさを感じることがあります。でもじゃあ、それってほんとにジストニアなのか?と疑うことが未だにあります(良いのか悪いのか知りませんが……)。
ジストニアは能動的にそれであると診断することができず、消去法的に他には考えられないと判断するしかないからです。ま、腕のMRIまで撮って異常皆無でしたが。

それと、発端である右手中指の負担をかばう形で、ほかの指や左手の指にまで症状が少し現れているのも確認しています。もしかしたらいずれギターを弾けなくなる日がくるかもしれません。もしそうなったとしてもその時できる活動をし・創作を続けるという強い決意でおりますので、皆さまのご協力・応援を頂けましたら幸いです。

同じ症状の演奏家、また治療する立場の方や治療のヒントをお持ちの方。これをきっかけに是非お話できたら嬉しく思っています。治せるものならもちろん治したいです。メッセージを頂けましたら幸いです。


最後までお読みいただきありがとうございました。

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