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おおきな夜。

2023.12.31


除夜の鐘
白い息ゆれる
火の粉 舞い上がって溶け落ちる
人がわらう

腕時計ちらちら
スマホのロック画面つけたり消したり
日付変わるまでの何十秒は
毎年やたら長いもの

住宅地はみんな電気がついていたし
普段さみしい参道に屋台が並んでいるし
へんな夜
みんな ひとつのできごとを待っている

人というものが
人というものが
一年に一度
おなじ ひとつの
おおきなできごとの 到来を
こんなにも
いっしょの気持ちで
待ちかまえている
何十秒

塗り替わる時空間
人というものは
ほんとうは
深い夜の底でつながっていた

みんなそのえだわかれ

人というものが
一年で一番 切実に信じる
おなじ ひとつの
おおきな
「期待」っていうことば

時がまるく満ちて
はじける
境内のあちこちにあふれる
「あけましておめでとう」

そんな一言
どうせ2月には忘れているのに

あの人に送った
「あけましておめでとう」が
もう返ってこないことを
どこか納得しきれていない自分に

わらってしまう
わらってしまうんだけど

やっぱりさっぱり
ぼくは
おめでたい空気に
飲まれてもいて

一年で一番
おおきな夜

除夜の鐘
白い息 こぐま座α星へのぼる
お焚き上げの火 爆ぜる音

みんなぱちぱち
わらっていた

天ぷらそばをかって帰った
あたたかくて おいしかった


2024.01.01


#詩 #のようなもの