認めろ、俺が正しいと。

「お前は正しいこと言えばいいと思ってるからな」

……ちがうの?

「ちがうんだよ。正しさは人を傷付ける」

……正しさは正しさだ。それで傷付く人の気持ちなんて知らない

「知れ。いいか。正しい情報を理解するには知識が要る。経験が要る。自分が"足りなければ"理解できない。人は正しい情報を見た時に、往々にして自分の知識や経験の不足、相手の優位、自分の劣位を無意識に感じて動揺する」

……それを受け止めるのが正しい道でしょ?

「人を鼻で笑うな。お前は正しいけど間違っている」

間違っているのはみんなのほうだ。自分が傷付きたくないから真実を否認する。みんな自分が傷付きたくない。みんな自分が大事

「ああそうだ」

だから正しい言葉は普及しない。知識がなくても納得できるフェイク、経験がなくても理解できるフェイク、傷付くことも劣等感感じることもなく受け取れる嘘情報ばかりが溢れて真実を駆逐していく。世界はごちゃごちゃになってしまう

「人は傷付きたくない生き物だから」

だから

「それが一番真実だ」

……

「人は、人を傷付けずに正しさを伝える方法を模索してきたんだよ。みんな。ずっと昔から。」

……

「それをお前が壊すな。お前だって人を正しさで壊そうとしている。優しい言葉、傷つかない言葉は、人を傷付けずに正しさを伝えるためのクッションだったはずだ。それをお前も使え」

……ふしぎ。非効率だ

「なんだよ。納得いかないのか?」

……

「認めろ。俺が正しいと」

……傷付くよ、その言い方



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