犬が歩く音

20歳頃に働いた職場で
たまたま父の実家のお向かいさんの家の
娘さんと再会した。

年上だったので小さかった私はうっすらとした記憶しかないけど家は覚えてる。

昔からあった家じゃなくて引っ越ししてきた家族やったと思う。

「ちよこちゃんのおばあちゃんち、あの後小さいホームセンターなったやん?そこで働いてたんよ〜」

そう。
父の実家はある日いきなり競売にかけられて
祖父祖母が家無しになった。
その後、実家は潰されてホムセンになった。

「でさ」

とOさんは細い肩を小さくして
声をひそめて話を続ける。

「一階が売り場で二階が事務所やってんけどさ
階段が見える作りになってて、あ、今だれか事務所あがってるなって足元が見えるのね」

私は声をださず頭だけでうんうんとうなづく。

「その日もカンカンカンって階段をあがる音がしたから何気にみたらスカート履いてる足でさ」

「スカート履いてるスタッフなんておらんのよ」

(え?なにそれ…)

「でさ、事務所あがっても誰もおらんのよ」

「降りてもこーへんしあがっていくだけで」

「たまに違うスカートも見えるから2人いてるんかも」

「ほんでさ」

(まだあるの!?)

「これは音だけやねんけど二階の事務所を歩く音がするねん」

パンプスの音?

「ううん、チャッチャッチャッてあれは多分歩く犬の爪の音やわ〜」

はっとした。

私の大好きやった雑種の犬。

犬小屋に入って一緒に寝るくらい大好きで
甲斐犬みたいな色と体格でかしこい犬やった。

おじさんに殺された犬。

殺された場所は当時の建物の屋上。

競売にかけたのもおじさん。
父の妹の旦那と結託して自分の両親きょうだいを
騙して何千万というお金を持ち逃げした。

でもしばらくして祖母が言ってた。

「ずっと砂利にしてあった場所は白蛇様が眠る場所やから、あそこをコンクリで埋めたらよくないことが起こるよ」

その後、父の妹一家は離散し、旦那は心臓発作、妹も泡を吹いて亡くなったそう。
2人いた子供たちもそれからは全く居場所もわからず。

今その土地には違う建物ができてるけど
営業してるのをみたことがありません。

祖母が生きていた頃
「白蛇様の祟りやよ」
て言ってた。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?