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手塗りだから、ムラが味です。

[コワーキングスペースのコミュニティ運営について考える:第3回]

最初に前回書ききれなかった話を。先日行われたワーク スタイリングEXPOでリクルートの方が言っていたんですが、リクルートさんでは社内にさまざまな部活動があり、部門や立場を超えて同じ興味を持つ人が集まっているそうです。その活動には一つだけルールがあって、それは、「役職者は部活動のトップにはなれない」というもの。部活動リーダーの若手社員がヒラ部員の役職者に「次回の会場、決めておいてくれ」とか言っているそうです。あー小さなウソをつきました、敬語は使うでしょうけど。

これ、まさに、ヒエラルキーを固定化しないことでコミュニティの風通しを良くしている素晴らしい例だと思います。

コワーキングスペースと違って会社組織では固定的なヒエラルキーを創らないというわけにはいきませんが、そこに部活動という横軸のコミュニティを重ね、かつ、そっちにはビジネスのヒエラルキーを持ち込ませないようにしている。話を聞いていて、あーやっぱりそういうのが大事だよねー!と勇気をもらいました。

で、今回はその、タテ軸ヨコ軸ナナメ軸、という話です。

・1つの大きなコミュニティなんて要らない

上の図は、KOILに集まるみなさんが全員等しくまんべんなく繋がっていて、1つの大きなコミュニティになっているさまを表しています。丸がKOILのユーザーの皆さま。

こんな風になったらいいよね、という感じ、しますか?

んー、本当にこんな風になれるなら、良いかもしれないですよね。でも実際には、左上のAさんと右上のBさんには「KOILを使っている」ということ以外に共通点はなく、Cさんは便利なワークスペースとしてKOILを使っているだけで他のユーザーさんには興味がない、というのが現実です。こうしたときに「どうしたらバラバラな全員を一つにつなぐことが出来るだろうか?」という風に考えがちですし、実際できるだけ多くの人に声をかけるための方策を考えて実行する、なんてことは珍しくないと思いますが、いや、こんなふうに全体を一つにつなぐ必要なんか無いのではないでしょうか。

「ん?それは職務放棄でしょ。AさんとBさんをつなぎ、Cさんを促してコミュニティの良さを実感して貰って、彼らの活動を活性化することこそ、コミュニティマネージャーのしごとでしょ?」と言う方もいると思いますが、えーと、それはもしかしたらその通りかもしれません。

でも、そのためにAさんBさんCさんの手を無理やり引っ張るのは違います。仕事してるCさんのところに言って「こんにちはー大須賀ですー、ヨシくん、って呼んでください。ちょっとお時間良いですか?」ていうのは、僕は違うと思っています。なぜか。押し付けられた何かは、押し付けられたことでその魅力を失うからです。教科書で読まされた小説には、僕たちは感動しない。むしろ反発する、ストレスを感じる。「同じクラスなんだからみんな友だちにならなきゃいけない」という観念がいじめを生む。だからつまり、これは方法論の話です。

・必要なのは、「色々な種類のつながりが重なっている場」

結局こういうことではないかと。

受発注のパートナー、共創プロジェクトのメンバー、趣味の集まり、同業の情報交換会、異業種交流、出身地が同じ人の集まり、ランチ会、子育てママのサークル、様々なテーマの勉強会、などなど。多様な目的・趣旨のつながりがたくさんあって、それが重なっている。こうしたつながりの重なりを少し遠くから見たとき、もやーっと星雲のように見えるのが、KOILという場です。それをKOILのコミュニティと呼ぶことは可能かもしれません。

この図でもAさんとBさんはつながっていませんし、Cさんは誰ともつながっていません。それはそれで良い。押し付けられて居心地が悪くなったら、彼らは去っていってしまうからです。ちなみにこの図ではCさんだけが例外みたいに見えますが、私の感覚ではユーザーの6〜7割がCさんです。大多数と言っていい。なので、少なくとも営業上、彼らが去っていくようなことをするのは、上策ではないです。(彼らを排除してはいけない理由は他にもありますが、ここではいったん置いておきます)

さて、ここでのつながりは不完全でムラがあります。でもある日何かの弾みでAさんとBさんが話す機会があったら、あるいはCさんが何かのきっかけで誰かと話したら、もしかすると今まで考えたこともないアイデアや新しい情報に出会えるかもしれない。それこそがセレンディピティであり、「弱い紐帯の強さ」ですよね。「1つの大きなコミュニティ」は「強い紐帯」に近づいていってしまうから、その部分の価値はむしろ低減してしまう。だから、コワーキングスペースのつながりは、不完全でムラがある方が面白い。僕はそう考えています。

でも、そもそも場使いユーザーのCさんがある日突然誰かに話しかけることなんてあるのか。

うん、そう思いますよね。そこがこの話のポイント。あるんですよ、そういうことが。

次回はその話をしたいと思います。コワーキングスペースのコミュニティが生み出す、自然で自発的な意識変容・態度変容について。

って、あー、最初に5〜6回に分けて書くと言いましたが、嘘でした。全然終わる気配無し。ノープランで書き始めたからですね。あはは。まぁ、行けるところまで行くです。

#ビジネス #コラム #コミュニティ #コワーキングスペース

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