見出し画像

勤務医は他の業界のサラリーマンより好待遇なのか

医者になったばかりの20年前は、同世代の他の業界の人の給料など知らなかった。

他の業界の友人はたくさんいるが、他人に給料を聞くことなどない。
そもそも私の妻も他の業界で働いているが、自分の妻の給料を知らない(笑)
が、最近はSNSの発達で、年収チャンネルや給与明細買取屋などといったデリカシーのない記事(や動画)ができたので、他の業界の待遇が容易に分かるようになった。

勤務医の年収はこちらのリンクの通り。

まあ平均すると大体当たっていると思う。

このサイトにはいろんなデータが含まれている。

まず経営母体によって異なる。

大学病院は少なく、民間病院が多く、公立病院がその間。

次に同一県であっても、県庁所在地などの都心部は少なく、僻地は多い。

ただし、例えば多少安くても都心部で働きたい医者もいれば、妻子をおいて単身で僻地勤務して当直も多めでガッポリ稼ぎたい人もいる。これは総合的に様々な医者のニーズに合うようにできている。

県をまたぐと、北海道や東北地方など医療過疎地域は劇的に給料が高い。
その分医者が少ないので、自分の専門外の患者も診なきゃいけなかったり、当直も多かったりする。

それにしても体は一つなので普通に考えて給料が東京都心部の2倍や3倍になるはずはないのだが、何かしらの力が働いて、どこからかの補填で、医者を好待遇で招致している(詳しくは書かない)。

このサイトには「診療科目別」のデータがあり、脳神経外科や産婦人科の給与が高いと書かれているが、わずかな差に留まっている。

一般的に、同一病院で同一年次の医師の給与は同じに設定されている。しかし当直や緊急手術で自宅から呼ばれる回数が多ければ、その手当分だけ増える。産婦人科は当直が多く、脳神経外科は緊急手術で呼ばれる回数が多いため、そういった手当を含めた給与はやや高め、と考えてよい。

医者が年収を上げるには?

「勤務時間を増やす」と書かれているが、これは今後働き方改革で少しずつ制限されるので難しくなりそうだ。

部長などの「役職」や専門医や学位などの「資格」で確かに手当てがつく病院は多いが、それほど大きな違いにはならない。「技術」をアピールして昇給を交渉、これは医局人事を外れて民間病院で働いている医者はやっているのかもしれない。

「アルバイトや定期非常勤で働く」・・・これが最も不公平。

例えば眼科や皮膚科など緊急入院や手術のほとんどない診療科や、麻酔科や救急科のようなオン・オフのはっきりしている診療科だと、オフ日にバイトができる(ただし公立病院などの公務員は一般的には禁止)。しかし心臓外科や脳神経外科、内科でも循環器や消化器など患者急変や緊急入院・緊急手術が多く、オフ日でもたびたびコールされる診療科だと、バイトする時間がない。その分当直手当や夜間呼び出し手当が出るんでしょ?と言われるが、楽な診療科医師のオフ日のバイトに比べると圧倒的に少ない。

では本題に戻って、

他の業界のサラリーマンに比べてどうなのか?

自分もついお金の話に目が向くので、前述のようなデリカシーのないサイトを見るのだが(笑)
一流大学を出てコンサルや商社、外銀などに就職すると、かなり給料はいいようだ。

ただよくよく情報収集すると、高収入の職場環境ではかなり無理を強いられていることも少なくない様子。
会社の求める業績を出すためには長時間残業が当たり前だったり、生き残りをかけて自ら残業して必死に働いている人も多いように思う。
(勿論そうばかりでもなく、比較的ホワイトな労働環境なのに好待遇の業種もあるようだが)

それに比べて勤務医の待遇はどうなのか?

自分は循環器内科医として20年働いているが、夜間休日を問わずたびたび家から呼び出される仕事、と考えると、労働時間の単価に換算するとやはり少ないように思う。最近は自分自身は緊急手術のために出勤することはなくなったが、「いくら循環器に興味があって、やりがいを感じてくれても、この労働条件では二の足を踏んでしまう」若者が多く、当科の先行きを憂いている。

一方で楽な診療科でまったりと働いている医者、9時出勤17時退勤、週末はどうせ呼ばれないから土曜を隔週ぐらいでバイトしようか?という医者にとっては、かなりいい仕事だと思う。

もし勤務医の給料が下がるとどうなるのか?

ハードな診療科のなかで何とかモチベーションを維持している医者であっても、給料を減らされるとついに心が折れて、開業したり健診や美容などの非保険診療の業界へ走る医者が増えるかもしれない。

楽な診療科の医者はどうかな・・?開業しやすい皮膚科などは開業する人が増えるかもしれないが、開業の難しい科の医者は比較的残るかもしれない。

もう一つ考えなければならないこと、それは「働きながら学費ローンを返済している医者」が一定数いることである。

医学部を志す場合、学費の安い国公立大学医学部を目指す者が多いが、どうしても受からない場合、実家が裕福なら迷いなく私大へ行く。しかし実家が太くない場合でも、最近ではいろんな道がある。入試の点数に少しゲタを履かせてもらって国公立大学の地域枠に入り、無事医師になった暁には数年僻地で働く(条件は様々)、学費を下げてもらって(逆に入試のボーダーは少し上がる場合が多い)私立大学の地域枠に入る、自分(又は親)が学費ローンを組んで、私立大学の通常枠に入る、という主に3パターンがある。

これらは今の「勤務医の年収」や「開業した場合、実家を継いだ場合の年収」をベースに成り立っている。

動機が純粋であれ不純であれ、また地域枠についてもいろんな批判があるのも承知の上で、何はともあれ「成績があと一歩、実家も太くない人が医者を目指せる道が複数用意されている」ことは良いことだ、と私は思っている。

何度も書いているが、国は診療報酬を操作できる。何とか上手に舵取りしてほしい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?