エリクソン研究会記録『ミルトン・エリクソンの心理療法セミナー』P337〜P340 第45回

※本記事はめんたねにて2013年3月〜2017年6月まで行われたエリクソン研究会のメモ書きを文字起こししたものです。テキストは『ミルトン・エリクソンの心理療法セミナー』を使用しました。メモ書きなのでテキストを読んだ前提でないと、わからない書き方になっていることにご注意ください。
また、エリクソン研究会では現在別のテキストの『2月の男』を読んでいます。
http://mentane.net/workshop/pg167.html

P=ページ数 L=行数
読んだページ数P337〜P340

赤ん坊には自分と他人の区別がない。「よいおっぱい」「悪いおっぱい」の話がある。赤ちゃんは吸っているおっぱいが誰のおっぱいかわからない。飲めるおっぱいは良いおっぱい。飲めないおっぱいは悪いおっぱい。という判断しか赤ちゃんはできないという話だ。

だが、そもそも、赤ちゃんは「おっぱい飲むぞ」と思って飲んでは居ない。動物的にインストールされている能力で飲むことができる。お腹が空いた、飲む。満腹だ。という感覚だけがある。意識が発達していないので、本当は良い悪いという言葉を使わないし使えない。満腹感とおっぱいに吸い付くことが連動しているのだろう。快不快の体験記憶がある。ここでエリクソンは赤ん坊に中にはどのように自意識が芽生えるのかという話をしている。

エリクソンは、17歳になってポリオで全身麻痺になってから、赤ちゃんが学ぶであろう体の学習を再体験した。

この話を参加者に話す意図、この話は腕浮揚の原理そのものである。

腕浮揚は上げろといって腕が上がるのではない。上がる上がるといっているうちに、勝手に腕が上がる。腕浮揚はちょっとずつ腕が動く無意識が腕を動かすことを学習する。

エリクソンも体を動かす学習をゆっくりとやった。腕浮揚が腕をゆっくり動かすことと、エリクソンが腕をゆっくり動かして体を動かす学習をしたのは似ている。そして、赤ちゃんの体を動かす学習も同じくゆっくり動かす。


学習のための催眠
初めての被験者に催眠の恐怖を与えない。ワークに参加している人間への学習になるように。ショー催眠とはちがう。

ゆったりとしていますか?大抵の人はゆったりとしていたい。疑問文だけど暗示になる。暗示は当人が望むことに反応する。

腕浮揚の最中も、腕が固まっているから動かしたり下ろすのに苦労をするが普段腕を動かすのに苦労をする?と質問をすると、普段の状態と違い、激しく催眠に入っていますよという暗示になる。腕が下りるときの位置づけも変化する。ただ腕が降りたのではなく、腕を下ろすのに苦労をしていつもと違う状態である。

トランスは依存が起きやすい。自分で自分を褒められるように、自発性を促す誘導をする。あくまでも催眠に入るのは催眠に入った当人の力だ。誘導者のお陰で催眠ができるとは思わせてはいけない。依存的になる。


P340L9
子供の成長の話
何のためにこの話をしている?
P335参照ゼイクの要請によるもの。ここまでは成長の話をしている。大人が小さくなったのが子供ではない。大人が当たり前だと思っていることは子供は知らない。体のバランスも変化し続けるし、常に不安定な存在だ。子供とはそういうものだ。

ただ、子供の成長の話をして、子供は大人と違うという話をしても、「ああ、そうですね」で終わってしまって、話を聞いた参加者が動くことはない。だから、話題を出す。子供のみに起きる微細な変化を言って聞かせる。そこに注意して気をつけろと。エリクソンが常々一貫して言っている。細かく見なさい、観察をしなさいということだ。

輪読している最中にアシストントの大杉くんは手を動かしていた。エリクソンはこういう学習をしてほしいと参加者に望んでいる。実際に話を聞いて、どういうことだろう?と思ってエリクソンの言ったような動きをしてみる。
そうやって動くことで学習を追体験する。話を左から右に流していては意味がない。いかに相手の中にフックを掛けられるか。伝えたいことをなんとかわかってもらいたいとコミットする。

この話はEarly Learning set(アーリーラーニングセット)でもある。
狙い
①過去の話をすると退行、催眠が起きやすい。
聞いている人間が自分はどうだったかな?と内側に潜りやすい
②学習意欲につながる
子供はどんな気持ちで学習をしただろうか?子供時代に学習したことは歯を食いしばって学習したものではない。自然学習をしたものだ。頑張って学習していない。そして、不思議そうに興味を持って学習をしていた。

それ故に楽しそうに不思議そうに学習をする話をする。これを聞いた参加者は好奇心が湧いてくる。こうした好奇心を引き出す目的がある。

赤ちゃんのこういう話は、自分が赤ちゃんだった頃を振り返ってみればわかるが、覚えていない。一番古い記憶がある以前は一体どんな学習をしたのか?覚えていないことは体験していないのか?覚えていないけど学習していることはある。

意識していること、既に知っていること、これが全て正しいのだ。そういう頑なな人がいる。そういう人は自分と同じ考えは受け入れても、自分の意識と違う考えは間違いであると思っている。飲み込まざる得ないような状況設定をする必要がある。

意識しなくても、知らないことがあっても既にやっていることがあるということ。エリクソンはそれを知っている。知恵比べをしてエリクソンは勝つことができる。そうすると、その後のエリクソンの話が入っていきやすい。

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