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5年間毎日続けた「洋書多読」で得た英語力と宝物の話

この記事を書いているのが2023年8月29日。2018年8月、43歳の時に「英語多読」という学習法に出会って5年が経過したことになります。

初めて手にとったのが、アメリカの出版大手PRH(ペンギンランダムハウス)の英語圏の小学生向けの伝記ものである『Who was 〜?』シリーズの『Who was Steve Jobs?』でした。

僕の手元の記録によると同年8月22日に購入し、8月25日に読了しているようです。

それ以降毎日欠かさず30分〜1時間程度「ネイティブがネイティブに向けて英語で書いた易しい本」を読み続けた結果、今の僕の英検1級・TOEIC925点という英語力があります。

今日は多読開始5周年を記念して、多読を始めてから今日までの僕に起こった様々な良き変化を、英語に関することを中心に据えながらご紹介していきたいと思います。


劇的に伸びた英語力ー英語を英語のまま理解できる力

これを執筆している今ぼくは、かつて日本でも一斉を風靡したミステリーの巨匠シドニー・シェルダンの大ヒット小説『明日があるなら』を原文のままで読んでいます。

実は上述の『Who was Steve Jobs?』を読んだとき、僕は愕然としました。これがネイティブの小学校低学年生に向けて書かれたものだと言うことが到底信じられないくらい、ほとんどと言っていいほど読めなかったからです。

当時の僕はフィリピンのセブ島というところに住んでいて、海外生活は2年になろうとしていました。まがりなりにも英語を用いながら生活していましたから、海外生活の用を弁ずるのに全く不足のない英語力を持っていたという自負があったんです。おれイケてる!と思ってました。

にもかかわらず、この『Who was〜?』が全くと言っていいほど読めませんでした。これは正直に言ってとてもショックでした。

でもそこは気持ちを切り替えて「自分は海外で生活しているにも関わらず、ネイティブの小学校低学年生が読むような児童書も読めないんだ」という事実を涼しく受け入れたのでした。

そして当時お世話になっていた勤務先の語学学校CEOから進められた最強の英語学習法「多読」を学習に取り入れ、それ以外の学習をすべて手放していったのです。

その後、僕が日常生活で実感した(おそらくこの記事をお読みくださっている皆さんがお知りになりたいであろう)「英語力の伸び」が以下になります。

1.スピーキング力が伸びた

個人的に多読の効果として一番顕著であると感じているのが「話す力」です。

不思議なことですが、そして第二言語習得論的には周知の事実なのですが「大量のインプットが良質なアウトプットにつながる」というのは英語学習における大原則、外国語習得の一丁目一番地なんです。

ネイティブみたいにペラペラ喋りたいのなら、喋る練習以上に読んで・聞かなければならない、ということ。

詳しいメカニズムは他の拙記事に譲りますが(探してね)、とにかく「シンプルな(=簡単な)英文を大量に読む」ことで、自然と英語が口をついて出てくるようになるというのは、多読を取り入れた英語学習者に割と早い段階で共通して起こることです。僕ももちろんそうでした。

ま、日本語でも、本を沢山読んでいる方というのは喋り方や言葉のチョイスがうまいですよね。それと同じことが英語でも起こる。ものすごく単純化して言ってしまえば、ただそれだけのことなんですけどね。

2.リスニングが苦にならなくなった

上述の「スピーキング力の向上」に一役買っているのが「英文を日本語に訳さずに英語の語順のままで処理する力の向上」です。

多読によって涵養することができる最もパワフルな英語技能の一つがまさにこの「英語を英語の語順のまま理解できる力」なんです。

もちろんリスニング力をより高めるためには「音に対する感受性」を同時に鍛える必要があるのは論を待ちませんけれど、音が聞けても英語を英語の語順のままで理解できる力がないと、聞き取った英語を日本語(の語順)に訳し直して理解しなければなりません。

そんなことをしている間に、英語の音声はこちらの事情にはお構いなく流れていってしまいます。そして英語話者を前にした会話において、それは『レスポンスの悪さ」として現象するわけです。つまり、相手の言ったことに常にワンテンポ・ツーテンポ遅れてからでないとリアクションできない、ということです。

その空白は「英語を日本語に訳す」という脳内処理のプロセスがが働いているがゆえに生じる訳ですが、ネイティブスピーカーを始めとする英語話者は、このかすかな空白の時間を嫌います。

僕も海外で嫌っちゅーほど経験しましたが、相手が複数人であれば、英語を英語の語順のまま理解する事ができない人間は、そのソーシャルカンバセーションからは完全に取り残されて惨めな思いをするだけです。誰もあなたがそこでやりとりされている英語を咀嚼して理解し、何かを話し始めるのを待ってはくれません。そういうのを待つというのは欧米人のマナーや常識には登録されていないからです。

多読はこの部分に非常に効く学習方法なんです。特にシンプルな英語を大量に読んだ時にこの能力は飛躍的に伸びると思っています。

3.自然な英語が書けるようになった

ネイティブがネイティブに向けて書いた英語というのは当然ですが、ネイティブが聞いても読んでも違和感を感じることのないという意味においてパーフェクトな英語です。

考えてみてください。英語を母語としてある人に向けて書かれた商業的出版物が、対象と想定している読者にとって気色悪い言語を用いて書かれるということがあるでしょうか?(もちろん反語です)。

洋書で出会う英語は、ネイティブが読んでも違和感のない、100%信頼することのできる正しくてナチュラルな英語です。読めないとすれば、それは書き手の表現力のせいではなく、純粋に読み手である私たちの英語力の至らなさが原因なんです。

だから安心して自分の英語力の不全を省みてレベルアップに勤しむ事ができます。

そういう意味で、ネイティブがネイティブに向けて書く英語というのは本当に教化的でパワフルなんです。当たり前ですよね。

そのような英語に毎日30分から1時間程度触れていると、自分がいざ英語を書く段になったとき、単語やフレーズのチョイスがネイティブがするそれに近くなっていきます。僭越ですが、これは個人的に大変ありがたいと思いながら実感していた英語力の伸びです。

英語を読み慣れていない人、聞き慣れていない人の書く英文というのは一種独特の「座りの悪さ/気持ち悪さ」があります。申し訳ないけれど、これは厳然たる事実です。

多読は、英語のセンテンスが持つうねりやリズム感を、ロジックや法則の学習なしに楽しみながら身につけることができる大変効果的なアクティビティです。

ネイティブが英語を書く時に無意識に意識しているであろうリズムや抑揚のある、読みやすい英語をアウトプットできる力。これはフィリピン人さんとのお仕事においてチャットツールを使う機会が多かった僕にも大変有意義だったと思っています。

4.語彙力が増えた

あと、普通に語彙力が増えていくのもありがたいことです。

但しこれには一応留保があって、僕の場合はある時期から単語帳をシコシコ回すというあの退屈な単語学習を始めたので、それと多読との相乗効果で語彙力が増えたというのが正確かもしれません。

僕たち日本人英語学習者の単語学習は「英語⇔日本語」の一対一対応をウンウン唸りながら覚えていくというものですが、これだとその単語の持つ記号的な意味しか覚えることができません。

これは端的に言うと「使えない」知識しか身につける事ができないということです。

ratify:【動】批准する、承認する

Weblio 英和辞典

という英単語を考えてみましょう。

まず「批准」という日本語の意味を知らない限り、その知識は殆どなんの役にも立ちません。そしてそのなんの役にも立たない知識を得るために苦しい思いをしてする暗記作業は、申し訳ないけれど英検などの資格試験にチャレンジしている人以外にはシンプルに「時間の無駄」ということになります。

だって覚えても使えないんだから。

けれど、単語帳で学んだことのある単語にネイティブが書いたテクストの中で幾度となく出会っていると、このr-a-t-i-f-yなる文字列は、国際条約を発効させるために必要な手続きに関する動詞である、という推測が成り立つようになります。

そして単語帳に同時に記されている「承認する」という訳語の持つコノテーションも習得できることになるんです。

しかしながら、この単語をゴリゴリと力技で暗記してしまった方は、「I ratifyed him as a lawer(✗)」(=私は彼を弁護士として承認した)というとんでもない英文を書く・話してしまう可能性を排除できません。ここでいう「承認」は、国際的な関係のなかて成文化された法や約束事に対してなされるものであって、目の前にいる人間を弁護士や医者として認める・認めないとかいうことを論じるために使う単語ではありません。

多読は、こういうジャパングリッシュを使って「What…?」な英文を話す/書いてしまう危険性を知らず識らずのうちに取り除いてくれる効果的な学習法です。

なんかわからないけど、こっちの語を使うのが正しいような気がする。こういう用語法はなんか変…。そういう判断が自然に身につくようになる。ここで僕が言う「語彙力の伸び」というのはそういうことです。単に単語の意味に対する雑学的知識を量的に拡大していくに留まらないということです。

多読を学習に取り入れてから英語コーチになるまで

次に、多読を学習に取り入れ始めてから僕に起こった変化について書いていこうと思います。英語を伸ばして脱サラしたい人、英語を使ってなんらかの仕事につきたい人に読んでいただければと思って書きました。

1.英検準一級/一級に一発合格した(43歳)

多読を始めて1年後の7月に受験した英検準一級には対策無しで合格しました

特に英検を受験する職業的必然性はなかったんですが、当時フィリピンの語学学校で働いていて日本に帰国するための口実がどうしても欲しかった僕は「英検準一級にチャレンジするために」というそれなりの大義名分(という名の大風呂敷)を広げる必要があったんです。

日本に帰ることがだけが目的だったので、試験に受かるのはまぁどちらでも良く(ごめんなさい)受験対策なんか全くしませんでした。

これはメタファーとかではなく、リテラルに全く1ミリも英検準一級対策をしませんでした(二次試験は対策しました)。やっていた英語学習といえば、ただ洋書を読み、英語のポッドキャストを聞いていただけです。毎日30分くらいずつ。

結果は自分で言うのもなんですが、かなりの高得点で合格することができました。具体的には東京都の受験者(東京で受験したので)の上位1%に入る高得点とのことでした(そういうの教えてくれるんです)。

東京で上位1%なんだから、全国でもそれくらいだろうと思っています。CSEスコアは確か2100点ぐらいでほぼ満点に近いスコアでした。

もう一回言います。「英検対策全くなしで」です。

ね、多読って本当にパワフルでしょう?しかも、読んでた洋書ってネイティブの小学校低学年生が読むような本ですよ。

調子に乗った僕は、そのままCEOに「英検一級も視野に入るスコアです。ついては恐縮なのですが、次の10月の試験も受験したい(ので帰国したい)です」と厚かましくお願いしたのでした。

そういうチャレンジは素晴らしい。そういうことなら!と二つ返事で送り出していただけることになったのもあって、一級はさすがに単語対策だけは真剣にしました。

「多読多聴をやってんならそれでいい。ただ、変態レベルと言われる単語だけは真剣にやっとけ。足元掬われるぞ」

そのアドバイスを胸に『出る順パス単英検一級』を、毎日毎日アホみたいに回しました。それがCEOから頂いたほとんど唯一と言っていい僕の英検一級必勝法だったからです。

逆にそれ以外には何もせず(笑)やったことといえば引き続き、ただ朝起きて日課のポッドキャストを30分聞くことと、夜寝る前に多読を30分ほどしていただけです。

そしてなんとなんと、見事に英検一級にも一発合格したのでした。当時44歳、洋書多読歴1年3ヶ月、英語学習歴4年目の秋でした。

そしてこの「40代、多読多聴で英検一級一発合格」という実績が、その後の僕の人生を大きく動かしてくれることになったんです。

2.サラリーマンからオンライン英語コーチに転職できた(45歳)

コロナウイルスのパンデミックがあってフィリピンセブ島をあとにしたのが2020年の3月でした。

帰国して就職した渋谷のIT企業では散々なパワハラにあい、ほうほうの体で退職しましたが、捨てる神あれば拾う神あり。その年の12月、以前お世話になっていたフィリピンの英語スクール「Crossxroad」からオンライン英語コーチとしての業務委託契約をいただくことができたんです。

その翌年の2月には、当時コロナ禍で大打撃を被っていた北海道ニセコに開設された期間限定の英会話スクールの日本人スタッフへのお声がけをいただき、2ヶ月間世界屈指のスキーリゾートであるニセコで英語を使ってお仕事をさせて頂く機会を、コーチングに並行して得ることができました。

このときは本当に、多読による英語力の維持・向上の力を強く実感したのでした。なにせ日本に帰国して一年近くほぼ全く英語を喋っていなかった僕が、ネイティブの外国人英語講師を前に全く物怖じせずに英語を話していたからです。

フィリピン在住時のそれよりも成長している英語スピーキング/リスニング力を感じていた僕は、日本に帰ってから「多読/多聴」以外にはな~んにもしていませんでした。

それでスピーキング力が伸びているんだから、多読がスピーキング力向上に大きく貢献していると考えることは極めて自然なことでしょう。

3.TOEIC925点を獲得した(45歳)

僕は人生で都合4回TOEICを受験しています。最後の1回は日本で、それ以外はセブ島で受験しました。スコアの変遷は次のとおりです。

2018年12月:700点(多読開始5ヶ月)
2019年7月:790点(多読開始11ヶ月)
2019年12月:835点(多読開始1年5ヶ月)
2021年1月:925点(多読開始2年6ヶ月)

僕においては多読継続期間とTOEICスコアの伸びが綺麗に相関していることがご理解いただけると思います。

もちろん、「多読継続期間」を「英語学習期間」と読み替えることもできますから、多読だけでTOEICのスコアを伸ばせる!という主張は短見のそしりを免れないのかもしれません。

でも繰り返しになりますが、僕は多読と出会ってからは基本的に多読以外の学習はしていません。だから僕にとっては控えめに言っても多読が英語力UPに資するところ多であった、というくらいのことは主張してもバチは当たらないんじゃないかと思っています。

4.フリーランスとして独立して生計を立てるようになった(〜現在)

今年の4月、僕を英語コーチに抜擢してくださった語学学校「Crossxroad」から独立し、完全なフリーランス英語コーチとして新たな人生を歩むことになりました。

これまでも一応フリーランスではありましたが、集客からコーチとしてのスキルアップに至るまで、多くの部分をCrossxroadに依存していた僕にとっては大きな決断でした。

今年の7月に入り、これまで温めてきた「こうすれば絶対に英語が伸びる!」という学習プラン・セットをサービスとして公開し、今の所ご好評を頂いてコンスタントにお問い合わせ、お申込み〜成約へと至っています。

こうして集客からお金の管理などなどまでをすべて自分で行うようになって、本当に小さな会社の一人社長のような気分でお仕事をさせてもらっています。

クライエントさんは皆さん向上心が強くて意識が高い、社会的な地位もそれなりにお持ちの方たちばかりです。今まで精神科のソーシャルワーカーとして出会ってきた人たちや、世界一周で出会ったユニークな旅人たちとはまた違った、普通に生活していては決して出会うことのできなかったようなハイソな方たちとともに「英語力アップ」という目標に向かって一緒に歩んでいくことができる今のこの職業は、まさにCALLING-天職であると感じています。

多くの友人や幼なじみ、知人たちが年齢を理由に新しいことにチャレンジすることを躊躇い、日々のルーティーンの中に小さな喜びを見つけながら穏やかな毎日を過ごしている一方で、こんなにも自由で、刺激的で、希望に満ちた第二の人生を享受させてもらえていることの奇跡。

間違いなく「英語多読」がもたらしてくれた日々に感謝するばかりです。

多読で新しい人生の扉を開いてみませんか?

それもこれも、すべては5年前の8月に一冊の児童向け洋書『Who was Steve Jobs?』を手にとったことから始まりました。

最初はただ単純に「英語力アップのための一学習手段」でしかなかった洋書多読は、気がつけば僕の生活の一部になってゆき、多読しない日があると気持ち悪いと感じるようになり、それが自分の生活と切り離せないものになっていくに従って、僕の人生のあり方そのものをも大きく変えるものになってゆきました。

今の僕は英語コーチとしての立場から、非常にパワフルな英語力UPのためのメソッドである「洋書多読」を、クライアントさんだけに限らず、折に触れてたくさんの方におすすめしています。

が、同時に、ただ単純に英語力アップのためだけを目的として日々の生活の中に英語多読を取り入れていくのはあまりにももったいない、そんな気もしています。

少なくとも僕にとって洋書の多読は、あまりぱっとしない40代のおっさんだった僕の人生そのものを根本からドラスティックに変えていってくれる劇的な力を持っていました。そのことは、すでにここまで書き記してきたとおりです。

それは「〇〇ページ読めば、TOEICのスコアが〇〇点UPする」とか、「〇〇万語読めば英検一級合格!」いったような陳腐な話にとどまりません。

ある一人の人間に、それを始めたときには想像することもできなかった素晴らしい未来をもたらしてくれるような、そしてそれをしているときはいつだって幸福でゴキゲンでいられるような、そんなアクティビティがこの世にどれくらいあるだろうか?

そんな事を考えたとき、洋書の多読は単なる合理的・合目的的な英語力UPの手段であることを超えて、一度きりの人生で出会うことのできたかけがえのない仲間、宝物のように、僕には思われてくるのです。

さあ、皆さんもぜひ「最初の一冊」を手にとってみてください。そのほんの小さな始めの一歩が、あなたに、僕が今まさに経験しているような未来をもたらしてくれるに違いない。

そのことを心から祈念して、今日は筆を置きたいと思います。

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