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南極に行ったときのことと、終わらない旅

こないだ(と言っても2週間ほど前ですけど)『Where is Antarctica?』という児童向けの洋書を読みました。Antarcticaは「南極」のことなので、この本は南極について、英語を読む児童にわかりやすく説明するための洋書ということになります。

僕は英語学習に「多読」を取り入れはじめて以来、一貫してこの『Who was / Where is〜?』シリーズを読み続けています。読める英文の幅が英語力の伸びとともに広がっていってもなお、たまに立ち戻って、自分の英語力を確認するために、このシリーズを読んでみるんです。

もう一つ、この本を手にとった理由の一つが「なんか懐かしいな、南極」と思ったから。実は2017年の2月に、僕は世界一周の途中に南極に立ち寄ったんです。

ラストミニッツで6000ドル

南極って、お金さえ出せば誰でも行けるんです。

アルゼンチンの南の端にウシュアイアという街があって、そこから南極ツアーのクルーズ船が出ています。

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街には南極への船旅を取り扱うツアー会社が複数あります。正規の金額を払うと130万円から200万円くらいするツアー代金ですが、「ラストミニッツ」という、いわゆるギリギリまで売れ残ったチケットをたまに格安で放出してくれる時があって、うまくそのラストミニッツにありつくことができれば、通常の半額以下の金額で、南極へのクルーズ船に乗ることができるのでした。

僕は6000ドルで運良くチケットをゲットすることができました。昔は3000ドルも出せば十分お釣りが来ると言われた南極への(ラストミニッツを使った)船の旅ですが、今は結構メジャーになっちゃって、ここ10数年で倍近くに跳ね上がっちゃったらしいです。「中国のニューイヤーと重なるとかなり高くなるのよ」。ウシュアイアのツアー会社の女性スタッフが教えてくれました。

クルーズ船に乗って、10泊11日の南極の旅へ

ウシュアイアから南極大陸までは中型のクルーズ船で三日三晩かかります。往復と現地の4日間を含めて10泊11日の船旅です。

同じく「ラストミニッツ」でチケットを購入したというメキシコ人と相部屋になりました。アメリカで看護師をしていると言うだけあって彼の英語はかなり流暢でしたが、当時の僕の英語力では(たとえ10週間フィリピンで語学留学したとは言え)ネイティブレベルの外国人とフリーカンバセーションを続けることは到底叶わず、よく話したのは最初の1〜2日で、それ以降は彼の方がラウンジに出て積極的に友だちを作っていたこともあり、僕たちはほとんど言葉をかわしませんでした。

中央デッキにある講堂では、定期的に南極に関する講義のようなものが開催されていました。もちろん英語で日本語の通訳なんてあるわけもなかったですが、聞くともなくよく聞きに行っていたものです。

あとはひたすら展望デッキに座って、どこまでも続くドレーク海峡の青い海を眺めていました。ドレーク海峡は南米のホーン岬と南極半島の北端に連なるサウス・シェトランド諸島の間に横たわる海峡です。

常に強い偏西風にさらされて荒れに荒れる海峡として有名だそうですが、僕が乗船した時は、行きも帰りもよく晴れていて、そこがたくさんの命を海の藻屑へと変えていったという魔の海峡であるとは想像できませんでした。

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同じ地球上とは思えなかった場所、南極

南極では本当に美しい景色に出会いました。

此処から先、いろんな写真を掲載しますが、全部加工なしです。ちなみにカメラはキャノンの「PowerShot」という「コンデジ」です。

僕にとって一番忘れられない風景が南極半島にの西側に位置する「ルメール海峡」です。頭上300mにのぼる両岸の切り立った岸壁が迫り、風光明媚な海峡ですが、この日は晴れて完全に海が凪いでいて、静寂の中を静かに進むクルーズ船の甲板に立ってここに佇んでいた時に、気がついたら涙が流れていたというなかなか得難い経験をした思い出の場所です。

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景色を見てただ涙が出るなんて初めてのことだったので、とても驚いたのをよく覚えています。でもそれくらい美しい場所でした。南極クルーズは僕の世界一周の旅の序盤でしたので、その後もたくさんの世界中の絶景を見ましたが、あそこはやっぱりちょっと別格だったなと思っています。

その「ルメール海峡」の南に「プレノー島」という島があって、その辺りの湾状の浅瀬には、周囲の氷河から流れ着いた氷山が漂い「氷山の墓場」と呼ばれています。

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ここの景色も本当に美しいものでした。お天気にも恵まれて、文字通り透き通るような青と白だけの世界を漂うことができました。

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同じく風光明媚な場所として知られるのが「パラダイス湾」です、僕はここから南極大陸への上陸を果たしました。

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世界一周の旅で世界7大陸全制覇!と思っていた僕は、南極大陸を自分の足で踏みしめた時点でもうその目標の半分は達成したもんだ!と思ったものでしたが、まさかアフリカ大陸渡航直前に怪我で日本に帰国することになるとは…旅って本当に思うようにいきません。

思うようにいかないと言えば、大満足だった南極の旅で唯一の心残りだったのが、同じく風光明媚で有名「ネコ・ハーバー」が悪天候のために全く堪能できなかったことです。

幸か不幸か、その日の夕方から天候が一気に持ち直して、怖いくらい美しい夕焼けを見ることができたのも思い出です。

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これまで本当にたくさんの夕焼けを見てきましたが、南極のそれは世界中のどんな夕焼けとも違ったある種の荘厳さがありました。「紅い色」に荘厳さや崇高性を感じることはあまりありませんけれど、南極のあの夕焼けの朱は、それ以外の適当な形容詞を思い浮かべることができません(単にボキャブラリーの問題かもですが)。

いろんな生き物

もちろん、ペンギンはもとより(飽きるくらい見た)南極ならではのいろんな生き物にも出会うことができました。

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でも、なんと行っても一番のハイライトだったのは、若いザトウクジラが、僕が乗っていた「ゾディアック」という小型船のところに遊びに来てくれたことです。

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あれは本当に感動したなぁ。手を伸ばせば触れられる距離を30分近く泳いでくれていたザトウクジラ。周りにもたくさんのゾディアックがいましたが、何故か僕たちのところが一番気になっていたようで、ずっとそばを離れませんでした。最初は警戒していたスタッフも、クジラに完全に敵意がないことを確認してからは、たくみにボートを操って、積極的に絡みに行ってくれました。

ただ、直接手に触れるとなんだかの法律だか条約だかに引っかかるそうなので、それだけは強く禁止されたんですけど。

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まだ、旅の途中

世界一周の旅を終えてフィリピンに2年半住み、その後日本に帰ってきて色々ありながらもそれなりにストレスフリーに生活していますけれど、ワクチンを接種したこともあり、またふつふつと、旅に対する欲求が亢進してきています。

やっぱり同じ場所にいるとなんだか息苦しさを感じてしまって。多分色々敏感なんです。考えなくていいこと、感じる必要のない他者の視線、考え、いろいろ頭の中を巡っていってしまう。

そろそろまた、旅を再開するときなのかも知れません。

っていうか多分、僕にとって旅って生きることそのものなので、やめるわけには行かないんですね。止まっちゃうと死んでしまう。「ラムジュート換水法」で呼吸するマグロのようなものですね、止まっちゃうと窒息しそうになるんです。

僕ももう人生の折り返し地点は過ぎてしまって、この生活を続けれられる時間もだんだん少なくなってきた。だから今しばらく色んな場所を旅しながら、「ここが自分の居場所だ」と胸を張って言えるような、穏やかに過ごすことができる場所を探し続けたいと思います。

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