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思春期の頸(くび)〜名探偵カッレとエヴァのシンジくん

 はじめまして。スヌーピーが好きな「おすぬさん」です。
 本や映画などをネタに個人的な発見や体験を書いていきたいと思っています。

 夏休みが終わってしまいましたが、今回は夏に子どもたちが活躍するお話を取り上げます。(2つ目はお話じゃなくて歌です)

*『名探偵カッレ 地主館の罠』リンドグレーン作
(1958年発行の旧訳は『カッレくんの冒険』)
*『残酷な天使のテーゼ』 

 最初のカッレくんは、『長くつ下のピッピ』や『やかまし村』シリーズで知られるスウェーデンの作家リンドグレーンの作品。カッレくんシリーズは3冊あってこの本は2冊目です。
 すっかりオバサンの私がカッレくんを初めて読んだのは中1の時(もちろん旧バージョンで)。当時としてもちょっと子どもっぽかったし古い本だったけど学校の図書館にあったので読んでみました。

 名探偵に憧れるカッレくんが、夏休みのあいだ遊び仲間とバラ戦争ごっこを繰り広げる中である事件に巻き込まれ、機転をきかせて解決していくお話です。
 真夜中に屋根に登ったりハラハラする場面もありますが、私が大人になっても妙に記憶に残っていたのが紅一点おてんば娘のエヴァロッタ(旧訳だとエーヴァ・ロッタ)のこの場面。ざっくり要約します。

 うだるような暑さの昼下がり。エヴァロッタのお母さんが広場で屋台のサクランボを買ったところに娘(エヴァロッタ)と遭遇。娘はサクランボを手掴みにして次々口に入れながら笑顔で去っていく。地面に点々と種を残しながら。(旧バージョンの挿絵では足元に種らしきものが描かれてます。)
 娘の後ろ姿見送りながらエヴァロッタのお母さんはふとこんな風に思うのです。

あの子の首筋の、なんと細いこと。なんだか、とても小さく弱々しく見える。ついこのあいだまで、おかゆを食べていた赤ちゃんだったのに、いまは秘密の用事だとかいって、夢中でかけずりまわっている。もう少し、あの子に注意をはらったほうがいいのかもしれない……。

名探偵カッレ 地主館の罠

 例のバラ戦争ではカッレ、エヴァロッタ、アンデッシュの3人は白バラ軍に属していて(対する赤バラ軍も3人います)、エヴァロッタはこのとき白バラ軍の秘密の任務を帯びていました(もちろんごっこ遊びの)。その任務の最中に殺人事件の現場に遭遇してしまうのです。まさにお母さんの不安的中。

 
 さて2つ目の『残酷な天使のテーゼ』。言わずと知れた『新世紀エヴァンゲリオン』の主題歌です。無理矢理だけどエヴァも夏のイメージありますよね。
 たまたまある合唱団が歌う動画を見ていて(聴いていて)2番の歌詞にハッとしました(検索してくださいませ)。もう、もう…母性愛の泥沼。送り出さなきゃいけないとわかっているけど危険な世界に行かせたくない、という母ちゃん目線。ここでも「細い首筋」が出てきます。
 

 自分の中で、あのエヴァロッタのシーンにつながりました。母性のかけらもなかった時期に読んだ一節が、こんなふうによみがえるなんて。
 どうして思春期の頸(くび)は、首筋は、細く見えるんでしょう(我が家にも一人いますけど)。どんなに体が大きくなっても親から見れば危なっかしい。その象徴かもしれません。そして今が巣立つ前の最後のゆりかご、という直感も。
 あ!スポーツやってるガッシリ男子には当てはまらないのかな、知らんけど。

 ちなみに、Wikipediaによるとカッレくんは1946年にシリーズ開始とあります。もう古典かもしれませんね。子どもたちの親は自営業だったり郵便局長だったり医者もいたり。昔読んだ時には気づかなかったけど、家庭環境に経済格差があったり、カッレの仲間のアンデッシュの父が暴力的だったりと、子どもを取り巻く普遍的な環境が(問題が)垣間見えるように思います。


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