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ジブリ都市伝説の謎を解け!&大好評サイコパス人生相談

 岡田斗司夫です。

 今日は、2019/11/17配信のニコ生・岡田斗司夫ゼミ「ジブリ都市伝説の謎を解け!&大好評サイコパス人生相談」からテキスト全文をお届けします。

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本日のお題

 こんばんは、岡田斗司夫ゼミの時間です。

 今日はもう雑談をダラダラ話すので、スーツはやめて、もう、超気楽なパーカー姿ですね。

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【画像】スミソニアン博物館のパーカー

 一応、スミソニアン博物館のパーカーなんですけど。まあ、そこら辺くらいは合わせるだけ合わせて、今日は気楽にやって行こうと思います。

 放送が始まる前に、しばらくみんなのコメントを読んでいるんですけど。「『鉄腕ダッシュ』の時間とかぶるのは勘弁してくれ」と言う人がいて、まあ、すまないと思いますね。申し訳ございません。

 まあ、2画面で見るのもツラいでしょうから、『鉄腕ダッシュ』を見た後で、これを見るのでもいいんじゃないかと思うんですけどね。

 あとは「風邪を引いたらどうする?」という話も、ちょっとコメントに流れてたんですけど。まあ、基本は葛根湯ですよね。

 葛根湯は、もう本当に、風邪のひき始めは抜群に効くんですけど、それ以外の時はあんまり効かないので、風邪を引いたら、もう初期症状には葛根湯で、後はもう、どんな薬も関係なく、要するに「寝てろ」ということだから、寝るのが一番良いと思います。

 ということで、今日は雑談をしたり、皆さんからのお便りを読んだりするんですけど。

 今日、お便り採用した人には……これ、今月のステッカーのデザインなんですよ。

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【画像】ステッカーのデザイン

 『恋のから騒ぎ』のパロディとして「岡田斗司夫ゼミ」というロゴを作ってみました。

 『恋のから騒ぎ』のオープニング画面には、後ろにお城があるんですけど、それも合わせて『カリオストロの城』で作ってみたという。まあ、そういう、ちょっとだけ凝ったステッカーをプレゼントしますので、よろしくお願いします。

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 では、どうしようかな? まあ、一番最初はダラダラと世間話からいきましょうか。

 ええと、この番組の後半には限定放送というのがありまして。チャンネルに入っている人だけに呼びかけたオフ会というのが、昨日あったんですね。

 「オフ会」というか、まあ、皆さんからのお便りを募集していると、時々、恋愛相談がやたら多くなる時があって。それがだいたい年末にかけての、この寒くなる時期なんですよ。寒くなって、世の中がクリスマス気分になってくると、恋愛関係の相談が増えるんです。

 と言っても、「好きな人がいます」みたいな相談ではなくて、「いや、全然、恋愛に興味がないんですけど、どうすればいいでしょうか?」とか「本当に親に怒られてるんですけど、恋人とか欲しくないんですよね」とか「なんか、結婚とかって、損ばっかりだと思うんですけど」とか。そういうのが同時期にドサドサ来るわけです。

 「じゃあ、そういう話をしましょうか」ということで、限定の人だけ集めて、男女同数にしたオフ会というのをやってみたんです。

 そこで僕、講義を開いたんですよ。なんか色々と、まあ45分くらい、バーッと喋って、その後に質疑応答ということで、皆さんから来た質問に片っ端から答えるという例のやつをやってたんですけど。

 これが終わった後、僕が帰った後も、勝手に皆さんが交流会をやってくれてたみたいで。

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【画像】交流会の様子

 こんなふうに、もう、来た人の3分の2くらいが帰った後なんですけど。3分の1くらいの方が残って交流会を開いていたという、まあ、そういうお話です。

 今日は、後ろ半分の限定の方で、ちょっと講演で話しそこねた話があるので、そこら辺の補足も話してみたいと思います。

お便り紹介 『千と千尋』についての「俺ジブリ」と「都市伝説と記憶」

 では、最初のお便りは、ジブリネタが来ているので、その紹介から行ってみようかと思います。

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> はじめまして、前回放送の「千と千尋の神隠し」解説、大変興味深く拝見させていただきました。
> 生放送をYoutubeから見ていたのですが、続きが気になりすぎて、ニコニコ動画のゼミにそのまま入会してしまいました。そのくらい、おもしろかったです。
> 改めて、本編を観たところ、今までぼんやりとしかわからなかった部分がはっきりと整理され、やっと、初めて「感動」することができました。ありがとうございます。
> 本編を見返して「これは、、」と思った部分があり、ぜひともお伝えしたくてメールしました。
> 千尋がハクのことを思い出して話すシーンで「川は、今はマンションが建って、なくなってしまった」と言っていることです。これがもしかして「荻野一家の引っ越し」の原因ということではないかな、、と思いました。
> 長男が溺れ亡くなった川が埋め立てられてマンションになってしまう、ので、もうそれを見ないように、関わらないように、お母さんの気分転換のための引っ越しだったのかな、と推測しました。
> 今度とも放送内容を楽しませていただきたいと思います、よろしくお願いいたします。

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 ありがとうございます。まあ、面白い論ですね。

 こういうのを僕は「俺ジブリ」って呼んでいるんですけど。これも、やっぱり自分の視点の1つなんですよ。

 要するに「何が正解なんだ?」とか「それはもう宮崎駿に聞くしかない」とか、そういうことを言う人がいるんですけども。それは高校生までの考え方なんですね。

 つまり、ある1つのテキスト……まあ、こういう文芸の対象のことを「テキスト」と言うんですけどね。「あるテキストに対する解釈とは、作者が意図したものただ1つ」というのが、高校生までが習う、テスト期間の文芸に対する態度なんですけど。

 ところが、大学に入る頃にはそういうものはなくなってきて、「研究によってこういう可能性がある」とか「このようにも読める」とか、そういうふうに物を考えるのが、基本的には大学以降の文学研究の方式なんですけど。

 そういうのが俺ジブリ。「俺にとって、こういう読み方が出来る」というもの。これに対して「これは正しいか? 正しくないか?」っていうので言うと、僕はあんまりピンとこないんだけど、すごく面白いと思います。

 だから、後は、すごく面白いことの論拠みたいなものをどれだけ集めてくるのかになってくるんですけど。

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 まあ、こういう「俺〇〇」が増えると、作品を見るだけでなく、その作品に参加することが出来るんですね。

 参加して、それを他人に話すことによって「ああ、それ、面白いな」と思ってもらえる。そうやって、面白いと言ってくれる人が増えていけば、それはセカンドクリエイターという状態になるんですよね。

 これは、もともとはキングコングの西野君が作り出した言葉で、別の意味だったんですけど。僕、その語感がすごく面白いなと思ってるんですよ。

 まあ、いわば「お父さんが引っ越した原因はこれじゃないか?」ということで、同人誌を作ることが出来るんですね。そして、その同人誌を先に読んだ人にとっては、もう、その解釈が正しくなるんですよ。

 例えば、『機動戦士ガンダム』にも、富野由悠季が作った設定ではなく、「後になってバンダイが作った設定」とか「後でホビージャパンが作った設定」とか「後でガンダムのプラモのマニアだったストリームベースという大学生のお兄さんが作った設定」というのが、今ではメインになっているわけですね。

 後に、安彦良和さんが「あの時の富野さんとは、どうしても意見が合わなかったが、俺はこうだと思う!」と言ってやっていた『ガンダム THE ORIGIN』というのも、やっぱり、後から作られた設定なんですけど。

 ところが、後から生まれたガンダムファンにとっては、その後の設定を読んで育つので、それが正しい設定になるんですよ。だから、昔の『ガンダム』を見たら「何か変だ」ということにもなるんですね。

 なので、今の世界というのは、テキストの正しい解釈というのだけではなくて……それはそれで、もちろん大事なんですよ? だから、氷川竜介さんみたいな本物のアニメ評論家の方々は、そっちをやっているんですけど。僕はそうじゃないんですね。

 そうではなくて、2次創作が当たり前の世界、コミケがこの世界にあるのが当たり前の世界に生きているので、「セカンドクリエイターみたいな人が増えて来て「俺ガンダム」みたいなものが増えてきたら、すごく楽しいな」と思います。

 これは掲示板に載っていた意見なので、このステッカー欲しければ、僕にメールをして、自分の住所と名前を教えてください。

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 『千と千尋』については、もう1つ来ています。

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> 岡田センセイ、こんにちは。メール募集と言うことで思い切って送ってみることにしました。
> 先日はニコ生、千と千尋の神隠し、お疲れ様でした。大変楽しく、興味深く拝見させて頂きました。また、その際にまんまとプレミアムに入会してしまいました。満足しています(笑)。
> 千と千尋の神隠しについて、くどいようですが質問させてください。
> 都市伝説レベルですが、「映画公開初日は別のエンディングが流された」という噂は本当なのでしょうか?
> 噂の内容は「荻野一家が引っ越した先の近くに川が流れており、その川の神様としてハクが戻ってくる」というハッピーエンド的な内容です。
> デマなのでしょうか?
> また千と千尋の神隠しについてお話しする気力があれば、お願いします。m(_ _)m

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 ということなんですけど。

 あの、まず、この噂がどうかというよりも、事実関係だけで言うと「映画館での差し替え」というのは、基本的にやらないんですよ。

 なぜかと言うと、まあ、21世紀に入るまで、というか、もう本当に10数年前くらいまでは、映画ってフィルムだったんですよね。フィルムというのは物理的な存在であって、プリントなんですよ。

 東洋現像所とかイマジカとかそういうところで、原版となるネガフィルムから……まあ、コピーネガを撮るんですけど。そこからフィルムを焼いて、各映画館に配るんですね。

 このフィルムのプリント代が、1980年代後半当時、映画1本当たり135万円くらいするわけですよ。135万円ですよ?

 『千と千尋』は、公開時は日本全国で343館で公開してたので、この差し替えに掛かる経費というのは、フィルムのプリント代だけでも、まあ、だいたい4億6千万円を超えるわけですね。

 「そんな経費、どこが負担するんだよ?」と。つまり、監督の意地でそれを変えるんだとしたら、「その4億6千万円は誰が出すんですか?」っていう話になっちゃうんです。

 なので、まあ、よっぽど、無茶なことをしない限りないんですね。

 「よっぽど無茶」というのは、例えば……「例えば」ですよ? 例えば『宇宙戦艦ヤマト』のとあるシーンに、西崎義展さんというプロデューサーさんが「どうしても納得出来ない!」と言う。こうなったら、もう「プロデューサーが全責任を持つ」というような形で、差し替えということもありえます。

 だから、そういう例がゼロではないんですけど、まあ、もしそんな事が本当にあったら、ものすごい騒ぎになりますので、絶対に記録に残るんですよね。

 現実的には難しいと思います。

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 この都市伝説の出どころは、2ちゃんねるへの書き込みだそうです。

 2014年の11月24日。もう、都市伝説が生まれた日までわかっているというのはすごいね(笑)。

 金曜ロードショーで『千と千尋』が放送された時に、ニュース速報の掲示板にこんな書き込みがあったそうです。

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> 1 :以下、\(^o^)/でVIPがお送りします:2014/11/21(金) 09:32:46.04 ID:R2BYzI01K.net
>
>  多くの人はトンネルから抜けだし髪留めがキラリと光り車を走らせて物語は終わり。だと思っているでしょうが本来この後には続きが存在します。ちなみに映像化、アフレコもされており公開当時映画館でも一部で実際に流されていました。
> 現在何故以下のラストシーンが無かったかのように扱われているかは謎である
>
> ・千尋が車の中で来る前に着けていた髪留めが銭婆からもらった髪留めに変わっていることに気が付き不思議がる(何故かは覚えていない)
> ・新居に向かう途中、丘から引っ越し業者が既に到着しているのが見え母親が「もう業者さん来ちゃってるじゃないのー」と父親に怒る
> ・新居に到着後、引っ越し業者の1人から「遅れられると困りますよー」と注意される
> ・千尋が1人何気なく新居の周りを歩いていると短い橋の架かった緑ある小川があることに気付く
> ・橋から川を眺めていると千尋は一瞬ハッと悟ったかのような状態になりこの川がハクの生まれ変わり、新たな住み処であることに気付いた?かのように意味深に物語が終わる
>
>  以上が千と千尋の神隠し本来のラストシーンです。今回の地上波放送でもこのラストシーンが流れることはおそらく無いでしょう

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 とまあ、こんな書き込みがあったんですね。それで、一気に広がったと言われているんですけど。

 実はこれ、半分は本当なんですよ。

 この都市伝説が上手く出来ているのはここなんですけど。引っ越し業者以下のくだりは、コンテまでは本当に描かれているんですね。

 コンテまで描かれているんですけど、まあまあ、宮崎駿のことだから、描いたコンテでも、ボツになったものは、もう処分しちゃうんですよね。

 実際に作画打ち合わせまではやってたらしいんですよ。しかし、もちろん線の仕上げの段階までは持って行ってないし、アフレコもしていない。

 当時のジブリには、そこまでの余裕はないんですね。『千と千尋の神隠し』って、もうギリギリの体制でやっていたので、一応、後ろの尺が2時間に収まるようにということもあって、切ってしまった。

 宮崎駿も、一番最初は、ラストシーンとして引っ越しまで描く予定だったらしいんですけど。でも、コンテ段階で「あ、これは違う」と。「神隠しが終わったら、もう1ヶ月か2ヶ月経ってることにしよう。そしたら、その後ろのシーンはやらなくていいから、バッサリ捨てられる」と。

 まあ、そういうふうな流れらしいんですね。

 でも、「公開当時、一部の映画館だけで実際に流されてました」というふうに都市伝説の後ろに書かれると、日本国内の全ての映画館の関係者のチェックを取らないと、完全な真偽はわからないんですよね。

 なので、このデマは、わりと事情を知っている人の作為的な、意図的なデマだと思うんですよ。この書き方を入れるということは。

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 じゃあ、次に、この都市伝説を信じている人が多い理由について、なんですけど。

 これって、僕だけが知っている話ではなく、「ここまでコンテが出来てた」っていうのは『千と千尋』の物語の資料集を見たらどこにでも書いてある話なんですね。

 なので、この噂が流れた時に、脳内で作っちゃうわけですよ。

 なぜかと言うと、人間の記憶というのは、現実そのものを記憶するのではなくて、脳内で整理されたパッケージとして記憶しているからですね。

 記憶というのは、短期記憶から長期記憶へとカテゴリー移動する時に、そのままではデータ量が多過ぎるんです。なので、人間というのは、例えば映画を見て「うわぁー!」って思った時の記憶を、長期記憶へ保存する時に、データを間引くんです。

 そして、このデータを間引く時に、全体を再構成する。だから、映画によって、ハッキリ覚えている部分と「えっ? そんなシーン、本当にあった?」みたいな差が誰にでも生まれるのも、当たり前なんですね。

 さらに、この再構築された記憶って、それを頭の中で思い出す度に、つまり、アクセスする度に、微妙に壊れるんですよ。

 アクセスする度に、微妙に壊れて、再び再構成し直してを繰り返して、どんどんパッケージを小さくしていくんですね。

 このデマというか、2ちゃんねるの書き込みを読んだ瞬間、みんなは頭の中から、わりと省略された『千と千尋』に関するデータを読み出すんですけど。それを解凍して、バッと広げる時に「こんなシーンがあった」と言われると、あったかのように思い出しちゃうわけですね。

 記憶を読み出す時、あっという間に、映画館の中で本当は存在しないシーンを見た記憶まで思い出してしまう。本当は、そんなシーン存在しないんですけど、「あっ、そんなのを見た気がする。……いや、確かにあった! 絶対に見た!」と。

 だって、この2ちゃんねるの書き込みというのは「おおっ!」という内容ですから。あったような気がしちゃうわけですね。

 人間の記憶というのは、遥か昔に見た映画より、2ちゃんの書き込みの方が優先されるから。なので、頭の中で、その記憶が上書きされて、実際に見た映像よりも、脳内で作り出した映像の方が、ものすごくスムーズに繋がってしまうわけです。

 というわけで、これを投稿してくれた方、やっぱりメールに住所が書いてなかったので、ステッカーが欲しければ、メールをください。よろしくお願いします。

お便り紹介 『魔女宅』に作画ミス?/『ターミネーター』シリーズについて

 ジブリに関してのお問い合わせ、最後です。

 『魔女の宅急便』について、ハンドルネームりこらさんからのお便りです。

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> 『魔女の宅急便』のあるシーンについて教えてください。
> 物語の中盤、老婦人の料理を孫へ届けた後、その家から引き上げようとする時に、キキの足元が映ります。
> そのシーンでキキの足元が靴の形と反対になっているという作画ミスがあります。
> 発見当時は、こんなこともあるかくらいに思っていましたが、岡田斗司夫ゼミを見るようになってから、「宮崎駿さんのような人がそんなミスを許すだろうか?」と考えるようになりました。

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 これ、僕も知りませんでした。

 確かにその通り。そういうミスは許さない人ですね。

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> しかし、一方で「ワザと間違えるなんてことをやるだろうか?」と、やっぱりただの作画ミスではないかと思ってしまいます。
> これがただの作画ミスか、何かのメッセージか、岡田さんの意見を聞かせてくれないでしょうか? よろしくお願いします。

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 まあ、意見を求められても、まずは調べてみないとわからないので『魔女の宅急便』のDVDを出して、調べてみました。

 問題のシーンは、雨がザンザンに降っていた時に、ちょっとツンケンしたお金持ちの女の子のところに、ニシンのパイを届けたんだけど、虚しく、やるせなくなって、キキが引き上げるシーンですね。

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【画像】キキの足元1 © 1989 角野栄子・Studio Ghibli・N

 この、クルッと振り向いて引き上げるシーン。これですね。ジジが見ている中、キキが最初、ここら辺に立ってたんですけど、1歩2歩と歩いて、立ち去ろうとしています。

 問題は、この2歩目です。

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【画像】キキの足元2 © 1989 角野栄子・Studio Ghibli・N

 2歩目、なんか、ちょっと変な足跡になっているんですよ。足跡の形が確かにちょっと変なんですよね。

 じゃあ、「これは逆なのか? そもそも、何が描いてあるのか?」ということで、拡大してみました。

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【画像】足あと拡大 © 1989 角野栄子・Studio Ghibli・N

 拡大してみると、この足跡自体が変なことに気が付きます。

 足跡自体が、真ん中から割れて、右側が何かクリーム色っぽくなって、左側には何か模様みたいなものがあるんですね。

 これは何か? 結論から言うと、実は、この右側のクリーム色の部分は、キキの足なんですよ、で、下側がスカートの中なんですね。

 つまり、こうやって見るとわかりやすいかな? 画面には写ってないんだけど、キキは、まだここにいるわけですね。で、そんなキキの姿が、水たまりに反射して映っているんですよ。

 この水たまりには、キキの足が反射していて、ここにはキキの胴体が見えてて、ここにはキキのホウキが見えているんですけど。つまり、この上にいるキキの姿が鏡写しのように水たまり全体に映っているんですね。

 つまり、宮崎駿は、ものすごく正確な絵を描こうとしているんですね。水たまりに反射したキキすらも描こうとしているんですけども。

 でも、それより何より「キキのスカートの中を描きたい!」という、ただそれだけなんですよ(笑)。

 僕もこれ、全く気が付かなくて、言われて調べてみたら「確かに足跡、変だな」と思って、コマ送りで見てみて初めて気が付いたんです。

 つまり、コマで見ないとわからないんだけど、宮崎駿は「そろそろ俺的にはこんなシーンが欲しいな」とか思って、合法的に、水たまりに映った女の子のスカートの中を覗けるシーンを作るという「お前はAVかよ!」というようなことをしてたわけですね(笑)。

 だから、これは作画ミスじゃないです。

 作画ミスじゃなくて「キキのスカートの中を覗きたい」という、エロじじいハヤオの、誰に向けたかわからないようなサービスカットなんですね。

 りこらさんにはステッカーを差し上げます。ありがとうございました。

 ジブリに関しては、今週はここまでです。

 いや、すごいよね、宮崎駿って。すごいっていうか、バカでいいよね(笑)。

 あんなに偉くなっても……「偉くなっても」ってことはないんですけど。なんというのかな? 「童貞の心を忘れない」というか。どんな小学校・中学校時代だったろうな?

 ただ単に、水たまりに女の子のスカートの中が映っているというのを合法的に描こうとしただけなんですけどもね。

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 じゃね、ちょっと予告でも喋った通り、『ターミネーター』の話を少しだけしようと思います。

 本当にね、長くないです。ちょっとだけなんですけど。

 昨日、フジテレビで『ターミネーター2』のテレビ放送をやってたんですけど。

 やっぱり、すごいですよね。その内、1分刻みで解説をやりたいんですよ。『ターミネーター』と『ターミネーター2』って、本当に、シナリオが神の如く完璧に出来ているから、勉強するところがいっぱいあるんです。

 『1』が理想的な低予算映画だとしたら、『2』は理想的な続編なんです。だけど、それも、1カット1カット見せて話をしないと、なかなか伝わらないと思うので、そのうち、ちゃんとやりたいと思います。

 だから、今日はちょっと軽く話すだけね。

 しかし、残念ながら、『ターミネーター』というのは『2』以降は、基本的に割りと残念な出来なんですよね。

 唯一、僕が面白いなと思うのは、ユニバーサルスタジオにあるアトラクション「ターミネーター3D」くらいなんですよ。

 なぜ残念なのかというと、基本的に『ターミネーター2』に出て来る液体金属の敵というのが、強すぎる……というか、映画的に完璧過ぎるからなんですよ。

 つまり、SF映画を撮る時の、嘘としての塩梅が抜群なんですね。リアリティがあるように見えて、いくらでも強くすることが出来るし、弱点も作ろうと思ったら作れるし、弱点がないようにも出来る。もう、制作者のさじ加減次第で、いくらでもやりようがある。

 究極の敵というのは、ただ強いというだけではなく、「映画的に抜群に見栄えがして、強そうに見える」というヤツなんですよね。

 なんであんな敵を思いついたのかと言ったら、もう、それは単純な話で。キャメロンは『ターミネーター』の1の時から、あれを出そうと思っていたそうなんですよね。

 だけど、1を作っている最中に『遊星からの物体X』という映画が公開されてしまって、その中に何にでも変形できるエイリアンが出てきて、そっちの方が遥かに出来が良かった、と。

 その頃は、CGで作れるほどの技術がなかったので、結果『ターミネーター』1で液体金属の敵を出すのを諦めた、と。

 そういう「もともとは『1』で出す予定があったところを諦めたアイデアを『2』で使った」という流れがあるので、『1』と『2』というのは、お話としてもすごく整合性があるわけですよね。

 なので、やっぱり、ターミネーターの『3』以降の作品っていうのは気の毒なんですよ。さっき「残念」と言いましたけど、何をやっても上手くいかないと言うか。

 だから、もう、モノマネに近いんですよね。それ以降のターミネーターっていうのは、だいたい「未来から来てこうですよ」というフォーマットは決まってて、その中に独創的な解釈を新たに入れて作るという、なんかモノマネに近いものがあって。

 『スター・ウォーズ』も、最近、そのパターンにハマりかけているので、「年末の『スター・ウォーズ』、大丈夫かな?」と思っているんですけど。少なくとも『スター・ウォーズ』のエピソード7と8は『スター・ウォーズ』のモノマネみたいな感じになっちゃってましたね。

 今日はもっと語るつもりだったけど、キャメロンを語る回というのを作ることにしたので、続きはそっちの方に回そうと思います。

お便り紹介 YouTuberの「自分のジャンル」/結婚と恋愛の順序

 じゃあ、次は質問コーナー行きます。

 最初の質問は「人気YouTuberになるには?」というお便りです。

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【画像】人気YouTuber

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> 趣味でYouTuberになって動画配信してみたいなと思います。
> でも、そんな軽い気持ちの人が始めたところで、さほど人気も出ないのが現実問題でしょう。
> 人気YouTuberになってPV数が増えないとモチベーションも上がらないので続かないだろうと思います。
> どういう戦略とマインドがあれば良いでしょうか?

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 真面目に答えると、もう「なる」から「する」へのマインドセットというやつですね。

 「何かになろうとするのではなく、何かをしよう」という、僕がいつも言っているやつです。「マンガ家になろうとするのではなく、マンガを描け」というやつなんですけども。

 「YouTuberになる」のではなくて、「YouTube動画を作って投稿する」に切り替えろ、と。

 だけど、この答えは、建前なんですよ。言ってることは本当の本当なんですけど、やっぱり、建前なんです。

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 どういうことかと言うと、ちょっとこれを見てください。

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【画像】ふーみんチャンネル

 これ、ふーみんチャンネルという、芸人さんのYouTubeチャンネルです。

 ふーみんさんという芸人さんは、現在、35歳。僕は昔『あらびき団』というお笑い番組の年末スペシャルで「奥歯ガタガタ言わせ節」というネタを見たことがあるんですけど。

 気に食わないやつらを例に挙げて「ケツの穴から手を突っ込んで、奥歯をガタガタ言わせ節~♪」と言うという、本当にそれだけの、実にくだらない芸なんですけど。なんか、僕、妙にインパクトを受けてしまって(笑)。

 「ケツの穴から手を突っ込んで、奥歯をガタガタ言わせる」というのを、本当に、お尻の穴をまず作って、腸とか食道とかの器官を作って、最後に歯まで作って、そこに手を突っ込んでガタガタ言わせるだけなんですよ。これしかないので、いつも「〇〇って、ナメとるね」みたいな前フリを山程やってから、この歌に入るんですけど。

 まあ、この芸人さんのチャンネル登録数が「860」なんですね。チャンネル登録数が860人しかいないんです。

 だけど、この人、毎日、動画を投稿しているんですよ。すごいですよ? このふーみんさん。

 この人の最大のヒットは、1年前にYouTubeを始めた時に上げた「奥歯をガタガタ言わせ節」という、この人の唯一と言ってもいい持ち芸の動画なんですけど、この時の再生数が2万3千回なんですよ。

 この2万3千回がトップで、2万3千回再生してても、チャンネル登録数は860しかないんですよ。

 彼の最新データなんですけど、今日の動画が……本当に、毎日投稿してるんですよ? 今日の動画は42回再生。昨日は39回。

 一昨日は、ちょっと増えて84回再生ですね。「祝ふーみん紅白歌合戦出場決定!」という、自分でフェイクニュースを流して89回なんです。

 3日前は69回。いつも30回くらいなんですけど、ちょっと多いです。なぜかと言うと「パチンコの攻略動画をやってたから」なんですね。

 キツいでしょ?

 皆さんも、この放送を見ているのも何かの縁だから、このふーみんチャンネル、動画を見なくてもいいですから、チャンネル登録だけでもしてあげてください。すみません。

 俺は、このふーみんに対して「2年前に大爆笑させていただいた」という恩があるので、僕も4ヶ月前からチャンネル登録をしているんですよね。

 4ヶ月前から時々気になって、ふーみんチャンネルを見てたんですけど、ビックリするくらい再生数が伸びてなくて。「この再生数32とかの中に俺も入っているのか?」と思うくらいで。しょうがないから2回見たりしてるんですけど。

 普通、こんな再生数2桁で、毎日、頑張れないですよ。だから、ふーみんって、すごいんですよ。これで1年、頑張ってるんですから。

 でも、登録数や再生数を上げるには、面白い動画を作るしかないんですよね。

 要するに、さっき僕が言った「有名YouTuberになりたいと思ったら、毎日毎日動画を投稿しろ」というアドバイスは、間違いなんですね。

 さっき僕が言ったのは建前なんですよ。毎日毎日やっても、それもテレビに出た芸人さんでも、毎日投稿しても再生数が36というのが現実なんですね。

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 なので、この相談してくれた彼に言えるのは「自分のジャンルを作れ」ということですか。

 これから先、僕は、あらゆる物がYouTubeになると思っています。

 例えば、「玄関の靴の揃え方」。もう、これだけで作ってください。次に「玄関の掃除の仕方」。これだけで作ってください。そして「玄関に置く開運グッズ」。それだけで作ってください。

 こんなふうに、玄関だけで100くらいのネタを作れたら、それは自分のジャンルになるんです。

 なんでもいいんですよ、もう本当に。その他に、外に出るんだったら「チリトリとホウキだけ持って、家の周りを掃く」とか「水を撒く」とか「他人の家の前を歩く時は一声かける」とか「ちょっと公園へ行って掃除してみよう」とか「神社へ行って掃除してみよう」というふうに、楽しく掃除している動画を毎日毎日上げたら、たぶん、ふーみんよりマシなんですよね。

 なぜかと言うと、日本の意外な日常というのを紹介することになるので、世界に発信することになるから。なので、このふーみんさんがやっている、日本語でしかわからないものよりは、まだちょっと可能性がある。

 さっき言った「玄関の掃除をする」とか「玄関の靴を片付ける」というやつにしても、玄関というものがある国というのは、実はすごく少ないわけですよ。だいたい靴のまま家に入る国が多いですから。

 じゃあ、「玄関というものがあって、靴というのがあって、その靴をしまう靴箱というのがあるんだ」というのをちゃんと説明するだけの動画で、ある程度のアクセスが期待出来る。

 他にも、玄関がグチャグチャな人が、それをどうにかしたいと思った時、「玄関」というキーワードで検索した場合も、それしか出てこない。そんなもんでいいんですよ。

 そんなもんでいいから自分のジャンルを作る。

 まあ、掃除している動画だったら、すれ違う人に「お出かけですか?」って毎日、声を掛ける動画でもいいんですよ。

 自宅で模型を作っている人とか、絵を描いている人、イラスト描いている人は、もう「それを配信しないと損だ」と思います。

 これからはクリエイターというのは食えなくなる時代だから、自分がクリエイターをやっている部分を見せて、それを動画して配信するというのをメインで考えないと、シンドいんですよね。

 ふーみんさんがやっているみたいに、面白い動画を撮ろうというのは難しいし、それはもう、YouTubeに今から入って行く場合、キツいアプローチだと思うんです。

 そうじゃなくて「普段、自分がやっていることを、いかに動画に落とし込むか?」ということなんですよ。

 だって、このゼミ自体も、僕が20代くらいから友達に対してやっている「俺、こう思うんだけど」とか「あの映画見た?」とか、これをやっているだけなんですよね。

 昔、『リプレイ(Replay)』という海外小説があって、それはただ単に「心臓麻痺で死んだオッサンが、20年くらい前に若返って生まれ変わって、もう一度、人生にチャレンジするんだけど、色々あってまた死んじゃって、そしたら、また同じところに若返って」というのが繰り返すだけの小説なんですよ。

 これを読んだ時に、あまりに面白かったから、その時は、まだガイナックスにいたので、山賀監督とまだ一緒にいた嫁さんに対して、神社の境内のベンチみたいなところに3人で座って「あれ、本当にすごい面白い小説だったよ!」って40分くらい喋ったんですよ。

 40分くらい喋ったので、その2人は「すごい面白そう」と言ったんだけど、でも、やっぱり読んでくれないんですね。「絶対、岡田さんの話の方が面白い」と言われて、読んでくれなかったんですけど(笑)。

 これをやっているだけなんですよ。

 だから、普段、自分がやってて、他人から、そこそこ「へえー! それ、どうやるの?」とか「面白いね」と言われていることを、ひたすらねやるだけでいいんです。

 僕、自分にとってのYouTubeというのは、そこが突破口だと思うんですけどね。

 これは掲示板の投稿だったので、住所とかがわからないので、ステッカーが欲しければ、メールしてください。

・・・・・・

 次の相談です。

 ファザコンでアイドルファンの方ですね。ハンドルネームべべさんです。

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【画像】ファザコンでアイドルファン

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> 私は25歳独身の女です。
> そろそろ結婚を視野に入れたい年頃なのですが、私は恋愛することが苦手で、今までに好きな人と付き合ったことがありません。
> 告白されて試しに付き合ったりすることはありましたが、長続きしません。

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 ああ、よくある話ですね。もう本当に、このゼミを見ている女の人の2人に1人はこれですよ。

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> その理由を自分で考えてみた結果、2つの理由が上げられると思います。
> 1つ目の理由は、ファザコンです。
> 私の父は格好良く、スタイルも良くファッションセンスも良く、私が付き合っていた人よりも何倍もオシャレです。
> また、一緒に出かけても、お金はいつも出してくれるし、話をしていても楽しいです。
> 恥ずかしいのですが、男性を意識する時に父がボーダーラインとして見てしまう傾向にあります。
> 2つ目の理由は、私がアイドルファンだからです。
> 10年以上アイドルのファンをしていて、好きな人が出来ても、その人をアイドル化してしまいます。
> その人のことを好きな自分が好きで、自分からアプローチはせず、遠くで見て満足してしまっています。
> こんな私はどうやったら恋愛が出来るようになるでしょうか? 岡田先生のアドバイスお願いします。
> ちなみに、4タイプ診断の結果、私は法則型だったようです。

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 って書いてあるので、法則型だった場合の考え方を説明しますけど。

 べべさんが思っている原因と結果が逆なんですよ。

 「お父さんが良くてファザコンだから → 恋愛が出来ない」と考えていると思うんですけど、これ、逆なんですよ。「恋愛したくないから → お父さんを持ってきて、恋愛をしないで済む理由にしている」と。法則型だったら、僕はそっちだと思うんですけど。

 彼氏と深入りするのが怖いというか、あんまり他人と付き合うのが怖いので、お父さんを持ち出すことによって自分の気持ちをセーブして、別れる理由にしている。そしたら、「やっぱりダメだ」と、すぐに切り捨てることが出来ますよね?

 アイドル視も同じ現象なんですよ。「とにかく他人と距離を取りたいための自己防衛策だ」と考えると、法則型の行動っぽくて、僕はすごく納得しちゃうんですけど。

 要するに「25歳になったので、そろそろ結婚したい」というのだけが問題点なんだから、恋愛をする必要はないんですね。

 なので、お父さんに結婚相手を見繕ってもらって、問答無用でお父さんお薦めの人と結婚すればいいだけなんです。恋愛なしで結婚しちゃえばいいんですよ。

 べべさんはハナから恋愛に向いてないんだから、「向いてない恋愛をやった上で、更にその先に結婚」って言ったら、自分からハードルを増やしているだけじゃないですか。

 だから、もう、気にしない気にしない。お父さんが選んだ人と適当に結婚してください。

 今、コメントで「誰でもいいのか?」って書かれたんですけど。

 「誰でもいい」ではないんです。「お父さんが選んだ人」っていう条件をちゃんと付けているじゃないですか(笑)。

お便り紹介 友達とまた仲良くなるための二択/フィクションと現実のあいだ

 次です。

 今日ね、たぶん「悩みのるつぼ」の講演動画を公開したからだと思うんですけど、いつもと違う感じの人生相談、特に女の人からの人生相談がすごく多いんです。

 「友達ともう1度仲良くなりたい」という相談。ペンネーム友さんからです。

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【画像】友達とまた仲良くなりたい

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> こんにちは。大学四回生の友です。いつも放送楽しんで見せていただいております。特にジブリ回は楽しみにしています!!
> 私には高校1年生の頃から仲の良い同性の友達がいます。私も友人も相思相愛で、一段と気が合い、どちらかに性的な感情が湧くならば結婚しようとお互い考えるくらいでした。
> 20の誕生日にはお互いアルバムやビデオを作りあいディズニーで2日間かけて祝いあったり、お互いのためならどこまででもしているような友人関係でした。

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 これ、後でわかってくるんですけども、友さんは女性です。

 女性同士なんですね。どこかに性的な感情が動くんだったら「もう女同士でも構わない、結婚しようか!」と考えていたくらいの友達だそうです。

 まあ、男同士で仲が良かったとしても、2人で結婚を考えてたとしても、ディズニーランドでアルバムやビデオを作り合ったりは、あんまりしないと思うので。

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> しかし、今年の7月くらいから私は好奇心が今まで以上に強くなり様々なことをするようになりました。また、今までに比べて"考える"ことができるようになりました。
> 大学の授業をたくさん取り積極的に授業に参加し教授と仲良くなったり、コンサートを開いたり友達と遊んだり充実しています。
> しかし、私と同じ授業を取ってくれた友人は、いつも授業中も寝て、何を話しても「そうやんな!」「わかる!」「すごいよな!」などと具体的な言葉がない、曖昧な言葉ばかりの返信で中身のある話になりません。
> いつからこんなに会話ができなくなったのだろうと感じるようになりました。もっと前までは少し話しただけで笑いが止まらなくなり、楽しくて楽しくて仕方がなかったのに……。
> 私はその友人が大好きでもっともっと一緒に授業をとったりピアノ連弾をしたり話したりしたいです。少し前まではみんなと笑い合っていてキラキラしていたのに最近はすごく地味な子たちとずっと一緒にいたり、整形したい。とずっと言っていたりどんどん暗い人間になってます。

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 ピアノ連弾……。ああ。

 なんかね、ちょっとこの辺から、僕は「ん?」って思ってきたんですけどもね。

 「キラキラしてたのに」って、アハハ(笑)。まあ、いいや。

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> どうしたら元の友人に戻るのでしょうか?
> 私が今こう感じていると言うべきなのでしょうか?友人はすごくプライドが高く自己肯定感が低くメンタルが弱いのであまりズバズバ言うと本当に関係が崩れそうな気がします。
> もとの関係に近づくには私がどうしたら良いか教えてください。

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 あのね、うーん、これ……。

 申し訳ないですけど、さっきからね、なぜ僕が時々止まったり、笑ったりしていたのかと言うと、この逆の話はやたら聞くんですよ。

 というか、僕の周りにいる人や、このゼミを見ている人は、この逆で「何やら高校から大学に入ってから、友達がやたらキラキラしてきやがった」とか「それに比べて俺は、なんて地味な趣味に……」っていう、そっちじゃないかと思うんですけども。

 幼馴染みで、高校までは仲が良かったんだけど、友達がどんどんキラキラ友達の世界に行ってしまった、と。何かすごく意味ありげに楽しそうで、「ああだこうだ」って話を聞かせてくれるんだけど、どうも自分は、そういう話を、なんかセミナーっぽく感じてしまうというか(笑)。

 いや、僕も「友達もそうだ」と断言するつもりはないんですけど。どうも、そんな感じがするんですよね。

 「幼馴染みで仲が良かった」とのことなんですけど、その友達は、ようやっと本心を出して来たんだと思うんですね。

 つまり、もともと地味で、外見に自信がない、暗い人間だったんですよ。

 でも、友さんという友達が出来たおかげで、高校時代はわりと頑張って、友さんの方に合わせてキラキラの方に行ってたんですよ。

 それはそれで楽しかったというのも、たぶん本当なんです。楽しいのは本当なんですけど、20代で、なんか大学卒業が近づいて来ると、やっぱり本来の自分が出て来ちゃうわけですね。

 もともと、そんなに明るくて楽しい人じゃなくて、どちらかと言うと、友さんから見ると「自己否定が強くて、暗い性格」なのかもわからないんですけど、他人に対しても警戒心のある人だと思うんですけども。それでも、一生懸命、友さんに合わせてきたわけですよ。

 なので、ここから先、取れる行動は2つ。1つ目は「友達を元に戻しちゃう」。2つ目は「前のように仲良くなる」。この2択だと思うんですね。

 「友達を以前のように戻した上で、仲良くなりたい」というのは、あなたの勝手な妄想であって、決めつけなんです。

 このどちらかなら、出来るんですよ。「友達を、元のキラキラして積極的で明るい状態にする」のか? または「仲良くなる」のか? このどちらかです。

 もし、元に戻したいんだったら、その友達に「あんた、そっちに行っても幸せはないわよ。あんたが本当は暗いのは薄々感じていた。でも、ここで若気の至りで暗い方へ行ったら、生涯そっちの方へ行くから、ここは無理してでもキラキラになりなさい!」とガンガン説得して「生涯、偽装を貫け!」と言う。

 これはこれで、本当に1つの方法なんですよ。そうやって生きている人もいるし、30、40を超えたら、どっちでもよくなるんですよ。

 だから、その友達に「いや、現実問題、生きる上であんたもモテた方がいいし。そんなに可愛くないって自分では思うかもわからないんだけど、そんなもん、整形とかしなくても、まずメイクでなんとかなるレベルだし。そんなことばっかり言うのをやめりゃあ何とかなるわよ」と言って、いわゆるキラキラした世界の方へ引き上げるタイプね。

 で、2つ目は「あなたも暗くなる」というタイプですね。

 これは、友さんの中で、友達の言っていることがわかる部分だけに付き合って「わかるわかる」と言ってあげるという意味じゃないんですよ。

 「あなたも暗くなって、整形ばかりしたくなって、一緒に落ちて行く」ということです。そんな方法もあります。

 どっちが正解というのはないんですけど。これは友情というのとは関係なくて「どっちが好きか?」です。

 「関係性を保ちたいのか? それとも、前の状態の友達の方が好きなのか?」という選択の問題になってきますで、お任せします。

 ステッカーを差し上げますので、お待ちください。

・・・

 最後の相談です。

 「フィクションしか楽しめない」。ハンドルネームともさんからのお便り。またともさんだ。

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【画像】フィクションしか楽しめない

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> ニコ生ゼミをいつも楽しみにしています。
> 前回の「千と千尋の神隠し」もとても興味深く視聴させて頂きました。特に「冒険で人が変わるのではなく、事実によって人は変わる」という所が、フィクションに触れることで冒険を疑似体験していると思っていた身には、特に刺さりました。
> 私は現在療養中で、また連絡を取り合う友人などもいないために、家事などの時間以外はほとんどを読書や映画、アニメ、ゲームなどで気を紛らわせています。
> どこか私の中で、数々の物語が、現実の私の在りように良い影響を与えてくれれば、という期待を持っていたようです。
> しかしそうした影響はとくに見られない上に、近頃ではフィクションをなぜ受けるのかなど分析的に捉えてしまったり、純粋に感動することができないようになってしまいました。
> そこには、いくら物語を自分の中に取り込んでも、体調が良くなるわけではないという当たり前の事実もあるかとも思います。
> また、大量の物語を一度に消費してしまったというのも原因かもしれません。
> かといって、上に挙げた映画やアニメくらいしか楽しみがないというのもあり、この先フィクションとどのように付き合っていけば良いのかと気になっております。
> 御回答よろしくお願い致します。

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 うーんとね、あまり一般性のない質問なんですけど……あっ、結構「あるある」ってコメントがあるな。あるあるなんだ。

 ええとね、僕が先週話した「冒険で人が変わることはなくて、事実によって人が変わる」というの、もうちょっと説明しますね。冒険というよりフィクションの冒険という意味なんですけど。

 フィクションで得られる気付きというのは、使えるものと使えないものがあるんですよ。全部が使えないわけじゃなくて、使えるものと使えないものがある。

 「使えるもの」というのは何かと言うと、自分の経験を再解釈する時に「あっ!」と思えるものがある。

 例えば、「昔、友達にあんなことを言った」という本当の経験があったとして。今日、あるマンガを読んで、その中のセリフにドキッとした。「ああ、これはかつて自分が友達に言ったのと同じセリフだ!」と。こうやってドキッとすることによって「以前の自分はこうだったんだ」と反省するということがあるわけですね。

 これは使える例なんですよ。つまり使えるフィクションですね。こういう場合は、フィクションであっても、ちゃんと人間は変わるんです。

 それは、かつて自分の中に、それに対応する現実の経験があるから。だから、「あっ!」と気付いて人間は変わることが出来る。

 逆に、使えないものというのは何かというと、肉体修練とか、自分の意に沿わない人間関係そのものをフィクションを読んでなんとかしようとする場合ですね。

 これ、よくあるんですよ。例えば、自分だけでマルクス全集を読んだり、共産主義宣言を読んだりして、家族関係とか会社をいっぺんに変えようとしてもダメなんですね。自分の中に気付きがあったからといって、それで他人の行動が変わったりしないんですよ。そうじゃなくて、自分が浮くだけなんですよね。

 例えば、カンフー映画を見るじゃないですか。カンフー映画を見ると、自分が強くなった気がするんですけど、映画を見ても強くはならないんですよね。

 フィクションの刺激で強くなる場合、「映画を見て感動する → 強くなる」じゃなくて、「映画を見て感動する → 武道を練習する → 実際に強くなる」というふうに、間にワンクッション入るんですよ。間に1つ事実が入るわけですね。

 だから『千と千尋』の千尋が、どんな経験をして、どんないい子に成長しようが、両親がその気にならないと、あの家庭というのは変わらないんですね。ちょっと今のカンフーの話とズレちゃうんですけども。

 映画を見た時に「主人公が成長した。私も成長した」と思っても、まず自分自身がそういう経験をしていないから、変われない。

 ただ、「あんな経験をしなきゃいけないな!」という気付きだけはあるわけです。その上で、そういう経験を自分の中で何日か何週間か続けていると、ジワジワと変わってくるんです。

 ところが、宮崎駿というのは、もっと冷たい人間なので「千尋があの中で冒険して、人間的に成長したとしても、残念ながらその成長は家族の崩壊という事実を食い止める力はないんだよ」言ってるんですね。

 しかし、「妹が生まれるというのは、家族全員の経験なので、それは関係が変わるきっかけになる」というふうにも描いているわけです。

 なので、ともさんが映画やアニメを見ても、療養している立場とか体調には、やっぱり何の役にも立たないんですよ。

 それを見て、アニメやマンガやゲームをして、そこで何かを決意して、毎日の食生活とか毎日の運動とか、実際の経験を続ければ、その分だけ現実も変わる、生活は変わるわけなんです。

 だから、フィクションは役に立たないわけではないんですけど、役に立つものにするためには、フィクションと現実との間に、行動、動作の連続、訓練が必要だ、と。まあ、そういうことになります。

 すみません、当たり前のことを言ってしまって。

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