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宮崎駿の最高傑作『On Your Mark』解説[前編]

 岡田斗司夫です。

 今日は、2019/12/08配信のニコ生・岡田斗司夫ゼミ「宮崎駿の最高傑作『On Your Mark』解説[前編]」からテキスト全文をお届けします。

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本日の内容

 こんばんは、岡田斗司夫です。今日は12月8日ですね。

 もう最初のうちに言っておくんですけども、今日は無料放送が長くなります。これ、もう、どうしようもないんですけど。

 今日は『On Your Mark』という、宮崎駿のちょっと問題作を取り上げるんですけど、この作品、見られない人が多いんですよね。まあまあ、TSUTAYAも最近では本当に流行っているものしか置かなくなったので、見ていないという人も多いと思うんですよ。

 なので、最初にストーリーとかをちゃんと説明するのに、かなり時間がかかると思うんです。映像的なトリックとか伏線が、もう本当に、異常なまでに多いアニメなので。

 たった6分40秒なんですよ、6分40秒しかないんですけど。これまでの宮崎駿の作品では考えられないほどの複雑さなんですよ。

 なので、これをちゃんと説明して、見るようにしておけば、「訓練になる」という言い方になるんですけど。この先ずっと、アニメを見る時の参考になると思うので、ジブリ初等教育として避けられない作品なので、今日は無料放送を長めにやらせてください。

 『On Your Mark』という作品は、ここにある、『ジブリがいっぱいSPECIALショートショート』というのに入っています。

(DVDを見せる)

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【画像】『ジブリがいっぱいSPECIALショートショート』

 Amazonでは今の段階ではまだ売っているので、よろしければ買っておいてください。たぶん、終わった頃にはもう買えなくなってると思います。

 それでも、正直、今日の無料と限定で、全ての話が出来るとは思えないので、まあ、もし入らなかった場合は、次回12月11日の水曜日の夜7時に予定しているガンダムゼミを1回潰して続きをやりますので、すみませんけど、覚悟しておいてください。

ガイナックスの実情と社長逮捕の裏側

 それでは、今日の最初の話なんですけど。

 「ガイナックスの社長が逮捕された」という、やっておかなきゃいけない話から、真面目にやります。

 「ガイナックスの社長がわいせつ罪で逮捕された」というんですけど、これね、正確じゃないんですよ。「犯罪者に会社を乗っ取られた」というのが僕の見方なので、これの説明させてください。

 これを曲げて報道しているマスコミも、誤解してリツイートしている個人も加害者側だと僕は思っているんですね。「乗っ取られたんだ」というのが、今回のポイントだと思います。

 ネットに流れている噂よりは、ちょっとくらい詳しい説明をします。

・・・

 とにかく、「『エヴァ』のガイナックス社長が逮捕」という報道には、ちょっと文句を言いたいんですよ。

 皆さんもご存知のように、すでにとっくの昔から『エヴァンゲリオン』の制作は、庵野君の会社カラーに移ってるわけですよね。にも関わらず、ニュース報道で「エヴァの制作会社」と言うのは、やり方が悪どい。

 いや、ニュース関係者も、そんなことは知ってるんですよ。知っているくせに「視聴率とかアクセスが欲しいから」という情けない理由で、間違った情報を流し続けている。そういうのは、まあ、やめて欲しいわけなんですけど。

 他にも、ガイナックスには京都ガイナックスとか、米子ガイナックスとか、いろんなガイナックスの名前を使った会社があるんですけど、今回の事件の中心になったのは、実はガイナックス・インターナショナルという会社であって、そこ以外は関係ないんですよね。

 それぞれ、みんな真面目に、アニメや作品を作っている会社なので、こういう報道の仕方はやめてほしかった。

 これに対して、庵野君のカラーが厳重抗議したわけです。まあ、そのおかげでテレビとかマスコミでは「『エヴァ』の会社の社長が~」と言われることは減ったんですけど。

 ネット報道に関しては、責任者が見えないし、アクセス率が彼らの小金稼ぎになるので、まあ、やめないんですよね。

 そういう報道に対して僕らが出来ることは「見ない」とか、「そういうタイトルを見たらリツイートしない」くらいしか、加害者側にならない方法はないんですけども。

・・・

 というわけで、今回の件をちょっと詳しく解説してみましょう。

 まあ、「詳しく」と言っても、僕の知っている範囲なんですけど。

 そもそも、今のガイナックスには実体がないわけですよね。ずっと倒産寸前なんですよ。「実体がない」と、よくニュースで書いているんですけど、これ、何のことかと言うと「倒産寸前で、いつ潰れてもおかしくなかった」ということなんです。

 倒産しなかった理由は、「倒産させなかったから」であって、倒産させなかったのは、ひとえに「先代の社長であり、『オネアミスの翼』の監督でもある山賀君の意地と見栄のせい」だと僕は思います。

 実際の山賀君というのは、『アオイホノオ』に描いてあるのとはちょっと違っていて……まあ、島本和彦は忖度の人ですから、すごい気を使うわけですよ。『アオイホノオ』の中に出て来る人らに、すごく気を使って描かれてまして。

 山賀君というのは、野心家以前にプライドとか見栄の塊みたいな人で、そのプライドとか見栄があるから、それ故に上昇志向がすごい強いわけです。それが、彼の能力とか、いろんなものを押し上げているわけなんですけど。

 しかし、山賀君にも欠点はあって、まず「人を見る目がゼロ」なんです。これはもう、本当にゼロなんですよ。あとは「責任感が独特」というのもあるんですけど、これは欠点とは限らないんですけど。

 その結果、今回逮捕された巻社長をガイナックスに引き入れてしまった。もともとは取締役だったのを社長にしちゃったのも、山賀君の大判断ミスですね。

 以前から、ガイナックスにはこういった脇の甘さがあって、逮捕された巻社長も、取締役のXさんという人のお友達人事なわけですね。

 この辺りの真相は、僕にはよくわからないんですよ。以前から、社内でも「あの巻さんという取締役は何をしているのかわからないんだけど、Xさんの友達らしいよ」と噂されてたそうなんですけど。

 今回の問題が浮上してきたのは今年の10月。

 実はこの時期に、ガイナックスの長年の懸案だった「倒産させよう」という機運がついに盛り上がったんですよ。

 ガイナックスというのは「何もしてない」と言うよりは、本当は「倒産寸前で、いつ倒産させようかというタイミングを見計らっていた」んです。なので、「もう今しかない! 倒産させよう!」という話が、今年の秋、10月くらいにあったんです。

 もう、ずっと赤字で、庵野君のカラーへの支払いも出来なかった状態なので、とっくの昔に倒産して当然だったんですけど。山賀君としては、会社を潰さなかったというか、タイミングを見てたわけですね。

 ところが、2019年になって山賀君に居場所が出来た、と。福島ガイナで『トップをねらえ3』というのを作ることになったじゃないですか。そこで監督と脚本が出来るということで、一応、花道が用意されたわけです。

 山賀君としても「『トップをねらえ3』を作るという名目だったら良いだろう」ということで、会社を倒産させようとしたんです。大部分の社員も「ああ、これはもう倒産だろうな」と、何年も前から倒産してもおかしくなかったので、この取締役会議は順調に進んだんです。

 しかし、そこで唯一、異議を唱えたのが、今回逮捕された巻取締役だったんです。今は巻社長ですけど、当時は取締役です。

 巻取締役は、その会議で「我々にはガイナックスというブランドを残す責務がある!」と言ってきかなかったんですね。

・・・

 ところが、この巻という人は、アニメも知らないし、ガイナックスのことすら何も知らないんですよ。

 これは、僕も噂で聞いただけなんですけど、例えばガイナックスに入った時に、僕の名前、岡田斗司夫の名前を知らなかったそうなんですね。「ガイナックスブランドを~」なんて言うわりに、俺の名前も知らねえのか。すげえな、と。……いや、知らなくても構わないけども(笑)。

 おまけに、アニメのことも別に知らないし、好きじゃなくて。例えば「ガイナックストマト」っていうのがあるじゃないですか。皆さんも調べたらわかる通り、何年か前に「ガイナックスがマジのトマトを作って販売を始めた」という事があったんですけど。これも、おそらく巻社長の引きでやった仕事だと思うんですよ。

 ただ、ちょっとここは自信ないです。ガイナックスの公式ホームページを見ても、もう「ガイナックストマトは誰が始めたのか?」とか、そういう情報が一切公表されていないので、わからないんですけど。

 アニメ会社がいきなりトマトを作って、トマトジュース作っても、売れるわけがないんですよ。でも、巻という人は、それがわからない人なんですね。アニメも知らないし、アニメファンにとっての「ガイナックスのブランド価値」というのは、作ったアニメの内容にあるということすらよくわかってなくて、ただ単に「ブランドだ」と思ってたわけですね。

 だから、こういう企画も無理やり通しちゃったんだと思うんですけど。

 そういうわけで、巻取締役は「我々にはガイナックスというブランドを残す義務がある!」と主張をしたらしいんですけど。

 まあ、みんな呆れて。だって、売上はもう本当にとっくにゼロなんですよ。だから、実質的に既に倒産しているんです。そもそも、「ブランド価値」と言っても、お前はアニメについて何も知らんだろう、と。みんなそう思ってたんですけど。

 しかし、Xさんの引きで入って来た人だし、取締役だから、会議は平行線。結局、「じゃあ、もう、そんなにお前が残すべきだと言うんだったら、巻取締役が社長になればいい」という落とし所で、倒産させる事が出来なかったわけです。

 この時、何がなんでも倒産させていれば、こんなことにはならなかったんですけど。その時は、誰も気が付かなかったんですね。

・・・

 ところが、11月に入った頃に、巻社長の周辺が何やら騒がしくなってきて、会社に来なくなり、「警察がわいせつ罪で捜査しているらしい」という噂が立った。

 そこで発覚したのが、このガイナックス・インターナショナルという会社の存在だったんです。

 この会社、この時まで、誰も知らなかったらしいんですよ。

 「ガイナックス・インターナショナルという会社は何?」と思ってネットで調べてみたら、そんな名前の会社がとうの昔に設立されていて「えっ、いつの間に?」って思ったらしいんですけど。

 まあ、巻さんが取締役だった時代に、いつの間にか設立した会社で、ガイナックス社内には知っている人がいなかったらしいです。

 今回の事件自体の始まり方は、「警察がある社長を捕まえた」と。

 そのある社長というのは、どうも未成年の女の子の親からの訴えで捕まったらしいんですけど。その女の子は、その捕まった社長……これはもう、僕も全然知らない人です。その社長の、いわゆる愛人というポジションだったらしいんですけど、それを斡旋したのがガイナックス・インターナショナルという名前の会社だった、と。そういう噂が流れたんですね。

 これは、僕が警察の内部事情を知っているわけではなくて、ここまでしか知らない噂として話しています。これ、本当に噂ですよ?

 会社の存在がガイナックス社内に知れた際、「このガイナックス・インターナショナルという会社は、声優のオーディションや手配をやっている会社だ」というふうに巻取締役からは説明があったそうなんですけど。

 どうもそれだけではなさそうだ、と。だったら、そんな捜査が来るはずがない、と。怪しい、と。

 というわけで、現在、その巻新社長は、「未成年の女の子を斡旋した」というルートで警察の捜査を受けているんだと思います。いろいろ書かれています。

 そこで、関係者一同は「ああ!」って思ったわけですね。「ああ、それで巻取締役は、あんなにガイナックスを潰すことに反対してたんだ!」と。ガイナックスを倒産させたら、ガイナックスの名前が利用できなくなるから。

 つまり、最初からガイナックスブランドを利用しようとしてたんですよ。ガイナックスブランドを利用して、声優志望の女の子を集めて、それを商品として、トマトみたいに売り捌くことを考えていたわけですよね。

 本体がなくなったら、この先、女の子の応募がなくなる。それで、あんなに必死に反対してたんだと思ったんですけど。

 今、コメントに流れている通り、これはなかなか危ない話で、僕もこれを言うのは、正直、怖いことは怖いわけですよ。

 というのも、こんなことを平気でやる人って、いわゆる反社との繋がりがある可能性もあるわけなので。だって「全然知らない会社にガーッと入って行って、その会社にブランドがあると知ったら、アニメの仕事をするつもりもないのに声優事務所を立ち上げて~」って、なかなかヤバい人じゃないですか。

 だから、まあ、この1週間以内に僕の名前が消えたら、これが原因だ、と。水曜日のニコ生がなくなったら「これが原因だ」と思って、お線香の1本もあげておいてください。よろしくお願いします。

 警察の捜査という段階になってから巻社長は出社しなくなって、そのまま社員の間で噂だけが流れて不安になっていた時に、いきなり今回の「逮捕された」という報道でバッと出て、「ああ!」と、みんな思ったわけなんですけども。

・・・

 事件で被害を受けたのは、もちろん、何も知らずに巻社長の作ったガイナックス・インターナショナルの声優会社に志望した女の子達ですよね。

 そんなところに登録しちゃった女の子とか、それでいけると思っちゃった親達。あと、斡旋されて被害を受けた人達なんですけど。

 しかし、報道による被害を一番受けたのは、やっぱり、『エヴァンゲリオン』という作品名と、今『エヴァンゲリオン』を作っている株式会社カラーだと思います。

 もう、関係ないのはわかってるくせに、知ってるくせに、ニュースバリューのために「あの『エヴァ』のガイナックス社長が~」と、ずっと言われ続けるわけですね。風評被害だけでなく、実際の被害も出ているというふうにも聞いています。

 その次の被害者が、福島や京都や米子ガイナックス。これも、まともな会社ですので、もう経営者も違うし資本関係もないのに、同じ名前だからという理由で、風評被害を受けている、と。

 「無責任なニュースとか発言は、とりあえずリツイートしないように」と僕が一番最初に言ったのは、風評被害を受けている人たちにとっての加害者は誰かと言うと、1次加害者は「事件を起こした人たち」、2次加害者は「事件を元に釣り目的でいい加減なニュースを作ってるニュースサイト」なんですけど。

 3次加害者というのは「それを、こんなニュースがあるよと友達に知らせている、善良な普通のネットの人」だと思うので。これを見ている人だけでも、そういうことを止めていただけると、これ以上の風評被害を防げると思います。

 来年、せっかく『エヴァ』の新作が、やっとやっと公開されるので、そこら辺は、ちょっと気をつけてあげてください。

 意外かもしれないけど、僕、もう1つ、今回の事件で被害を受けたのが、株式会社ガイナックスの本体だと思っています。

 なぜかと言うと、ガイナックスというのは巻社長に乗っ取られたわけですよ。そりゃ、引き入れたのが悪いんですけどね。

 だけど、全然、アニメを作る気もなくて、最初からこんな悪いことをしようと考えている、言っちゃあナンですけど犯罪者に乗っ取られただけで。

 乗っ取られた理由は、ハッキリ言って、それはもう、名前を出せば、前の社長の山賀君がマヌケだからなんですよ。マヌケで脇が甘いからなんですけど。

 それでも、会社とか、これまでの作った作品とかには罪がないと思うんですよね。別に、今回の犯罪で利益を得ていたわけではないんですから。

 アニメに興味がなくて、最初からガイナックスのブランド、名前を悪用しようというだけの目的で近づいて来た、悪いヤツがいて、そいつが勝手にガイナックス・インターナショナルという会社をでっち上げて、そんな犯罪組織を効率的に運営するために、スキを見てガイナックスを合法的に乗っ取った。

 合法的だったんですよ、その10月の会議は合法的だったんですけど。単に、やっぱり自分の犯罪に利用しただけだと僕は思います。

 この話は、最初に言ったように、かなり僕の推理なんですけど。大筋はこのラインで合っていると思うんですね。

 今日、なぜこの話を僕がニコ生の頭でしたのかと言うと、ガイナックスという会社も、今、いろいろ言われてますけども、乗っ取りにあった被害者であって、過去の作品とか別の会社とか、『エヴァンゲリオン』を関係づけたような記事や発言をリツイートするのは、これ以上は止めてあげてください。

 でないと、3次加害者の方になっちゃうので、そこら辺は控えてくださいね、というお願いでした。

 で、ここまで話した上で、今のガイナックスさんに言いたいことなんですけど。

 「早く公式声明を出せ!」と。

 あのね、発信元は「元社長、今は平社員の山賀博之」で、全然OKです。

 「元社長の僕の不注意で、会社が犯罪者に乗っ取られてしまいました。ファンには心配をかけてすみません」という声明を早いこと出せ、バカ!

 というのが、俺の今回の感想&解説です。ここまでにしておきましょう。

 誰かがちゃんと「どこが悪いことをしたのか? 何をしたのか?」というのをパッと言って、パッと謝罪する部分だけでいいんですよ。

 関係ないところまで謝らなくていいから、「脇が甘かったです。会社が乗っ取られました。そんなこととは全然知りませんでした」ということだけでも、早いこと言わないと収まるもんも収まらないので、チャッチャとやってほしいと思います。

宮崎駿の最高傑作『On Your Mark』を6つのレベルで分析する

 じゃあ、今日は……まあ、今日1日では済まないんでしょうけど。『On Your Mark』の話をします。

 『On Your Mark』というのは、この『ジブリがいっぱい』というショートショートに入っている6分40秒の作品です。

 この作品の絵コンテは、『耳をすませば 絵コンテ集』の中に入っているんですよ。

(本を見せる 宮崎駿『スタジオジブリ絵コンテ全集10 耳をすませば On Your Mark』スタジオジブリ、2001年)

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【画像】『耳をすませば 絵コンテ集』

 これ、表紙には載ってないんですね。背表紙を見ると、やっとここに小さく『On Your Mark』って載っているので、わかりにくいんですけど。まあ、「資料としては、ほぼこれしかない」と思ってください。

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【画像】『アニメージュ』

 いや、他にもあるはあるんですよ。ここら辺の本に少しずつ書いてあるんですけど。それでも、一番デカい資料が、この『アニメージュ』(徳間書店)の1995年の8月号という。もう、これを見るくらいしかないんですね。

 本当に資料がない作品なんです。大変でしょ?

 もともとは、チャゲ&アスカからの持ち込み企画だったそうで、コンサート用の映像兼、ミュージックビデオやプロモーションビデオとして作られたそうです。

 本来だったら、宮崎駿はそんな音楽、それもJ-POPのPVを作るような男じゃないんですよ。では、なぜ、こんなのを受けたのかと言うと。この『天才の思考』という文藝春秋の本の中で、鈴木敏夫さんがこう書いています。(鈴木敏夫『天才の思考 高畑勲と宮崎駿』文藝春秋、2019年)

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【画像】『天才の思考 高畑勲と宮崎駿』表紙

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> (もののけ姫の)企画が決まり、宮さんは以前に書いたプロットを基にストーリーを作り始めました。ところが、なかなか筆が進まない。最初に話を考えたのがもうずいぶん前だったから、そのときの気分が自分の中に残ってなかったんですね。結果、「この話は今の時代には通用しないと思う」と言って、スランプに陥っちゃうんです。その期間が半年ぐらい続いたでしょうか。
> そんな矢先、歌手のCHAGE&ASKAの関係者から、「新曲『OnYourMark』のプロモーションフィルムを作ってくれませんか?」という話が入ってきました。僕はCHAGE&ASKAのことを知らなかったんですけど、ともかくそれに飛びついた。これはスランプの宮さんにとって、いい気分転換になる──そう直感が働いたからです。

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 鈴木さんはこんなふうに書いてますけども。

 なぜ引き受けたのか? それはね「この『On Your Mark』の公開が1995年の7月だった」というのがヒントだと思います。

 1995年というのは、その3年前の1992年に『紅の豚』が公開されて、前年の1994年には『アニメージュ』誌上で、ついに『ナウシカ』の連載が終わったと同時に『平成狸合戦ぽんぽこ』が公開された。

 これ、どういうことかと言うと、ジブリの経営危機なわけですよ。

 『紅の豚』は、そんなに興行収益があったわけじゃないし、『ナウシカ』という最大のコンテンツも連載が終了してしまった。『ぽんぽこ』は、まあまあ一応ヒットしたとはいえ、制作費が回収できるような金額ではない。

 当時は、ジブリがまだまだマニア向けだった時代なんですね。今の国民的アニメとしてのジブリではなく、まだまだアニメ好きの人が見ているだけの作品だったんです。

 なので、鈴木さんとしても「このままでは危ない! ジブリは倒産する!」と思ったんでしょう。だから、今となってはすごく意外なんですけど、当時の鈴木さんにとって、チャゲアスの知名度は喉から手が出る程欲しかった。

 「それくらいメジャーなものを手がけなければ、自分達のスタジオは潰れてしまう」と思っていた時代なんです。

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 鈴木さんはこの本の中で、さらに「その7分ほどの映像を作る中で、行き詰まった『もののけ姫』の構想を別の角度から見直すことができたんでしょう」と書いています。

 どういうことかと言うと、もともと宮崎さんが考えていた『もののけ姫』というのは、1980年にですね描いていた、この絵本が元なんですね。

(本を見せる 宮崎駿『もののけ姫』スタジオジブリ、1993年)

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【画像】『もののけ姫』表紙

 つまり、この絵本を元にした「かわいい女の子がお化けに連れ去られる」という話だったんですよ。それをベースにコンテを描いていたんですけども。

 『On Your Mark』を作ることによって、宮崎さんは「ああ、もうこれ、全部、話を変えなきゃダメだ!」と言い出した、と。

 そこから、アシタカという少年を主人公にしたストーリーが出来上がっていった。

 つまり、「もののけを主人公にして、もののけに好かれたお姫様だからもののけ姫」というのではなくて、「アシタカという男の子が神様に呪われて、そんな中で自立する話」という物語を描こうと思ったわけですね。

 当初は気分転換のためにこれを作り始めた宮崎駿は、結局、宮崎駿のアニメの中で最も過激な、ものすごい6分40秒の作品を作ってしまいました。

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【画像】『出発点』表紙

 『出発点』(宮崎駿『出発点〔1979〜1996〕』スタジオジブリ、1996年)という、宮崎さんのすごく長いインタビュー集があるんですけど。このインタビュー集の中でも宮崎駿は、この『On Your Mark』に関してこう言っています。

 「チャゲ&アスカの歌詞をわざと曲解して作った」と。つまり、わざと誤解して、それも悪意を持って誤解することを曲解というんですけど。悪意に満ちた映画として作ったんだ、と言ってるんです。

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 なので、今日は、この不思議な6分40秒のフィルムを、6つのレベルで解説しようと思います。6つのレベル。レベル1からレベル6まであるんですけど。

 今、コメントで「裏読み」って書かれたんですけど、裏読みじゃないんですよ。これね、裏読みするどころじゃないんですよ。もう本当に、レイヤー構造になっていて、そのレイヤー構造が1段階から6段階まで、うっすらと段々と向こうに見えるようになっているんですね。

 今回の無料放送でやるのは、レベル1とレベル2です。

 レベル1は「見ていない人にもわかりやすいストーリー説明」なんですけど。普通の人は見逃すレベルまで、一応解説しようと思います。

 レベル2は、「スポンサーやチャゲ&アスカ、レコード会社にバレないように、宮崎駿が忍ばせた悪意」。その悪意というのが3つあるんですけども、この3つを解説します。

 レベル3は、「かなりのアニメファンとか大人でも、なかなかわかりにくいように隠したテーマ」ですね。

 レベル4は、「押井守とか、高畑勲への挑戦状」って僕は呼んでいるんですけども。具体的に言うと『おもひでぽろぽろ』とか『ビューティフル・ドリーマー』、あとは『天使のたまご』への批判というのが入っている。

 レベル5は、「宮崎駿が自分だけにしかわからないように仕込んだ、自分自身へのメッセージ」ですね。「こういうのを、これからお前は作れ!」という。

 レベル6は、以後の宮崎駿作品に実はかなり影響を与えているので、その影響について語ろうと思います。

 ということで、これ、今日中には絶対に最後までいかないと思いますので、来週12月11日の水曜夜7時から、追加の講義をやろうと思います。

『On Your Mark』解説:「誰にでもわかる」レベル1

 では、レベル1に行きましょう。

 ええと、しょっぱなからこれなんですよ。

(パネルを見せる)

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【画像】タイトル © 1995 Studio Ghibli

 始まった瞬間に「ジブリ実験劇場」というタイトルが出てきます。こんなのが出てくるのは唯一なんですね。他の作品では、こんなタイトルは出てきません。

 無音で5秒間、「ジブリ実験劇場」というのがドーンと出て、それからイントロ開始です。

 「タタラーン、タンタン~OHOHOH~♪」というコーラスが掛かる中、草原が映ります。

 腐った鉄条網があります。美しい自然なんだけど、なんか立ち入り禁止な感じで鉄条網がある。それがもう腐ってて、後ろには不気味な建物が見えます。

 その次が……超デカいフリップになるんですけど。

 右端からカメラのフレームが左に行くと思ってください。画面がこういうふうに流れて行くんですけど。

 破棄された町、人気がない町が見えて、その後ろには、すごく巨大な真っ黒な建物があります。

 ここまで行って、やっとタイトル。

(パネルを見せる)

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【画像】『On Your Mark』タイトル © 1995 Studio Ghibli

 「On Your Mark CHAGE&ASKA」というのがドーンと出てきます。

 「巨大なトラックの運転席に、チャゲとアスカが乗っている」という、まあ、こういうシーンのタイトルです。

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 ここでイントロが終わって、「ドンドンドンドン~♪」とドラムスが入った瞬間に、ここまでの、のどかな風景とは真逆のシーンが始まります。

 いきなり「POLICE」と書かれた飛行機が何機もフレームインしてきて、こいつらが急降下して行くんですね。

 そのままトンネルに突っ込みます。

 猛スピードでトンネルに突っ込んでいく。ドラムスが入った瞬間に、すごくスピーディーな映像になるんですよ。

 このトンネルを抜けると、いきなりメッチャクチャ怪しいビルが建ってます。

 「GOD IS WATCHING YOU(神はお前を見ている)」とか書いてあって、この目が開いたり閉じたりしてるんですね。

 このビルに向かって、一直線に飛行機が突っ込んで行きます。

 そして、ドーンとこのビルの窓をぶち破って、さっきの飛行機が突入していくんですけど。

 ここまでがイントロなんですね。歌が始まる前の「ターンタンターン~♪」という音楽だけの部分ではのどかな田園風景を見せて、「ドンドンドンドン♪」というドラムスで飛行機が急に何機も怪しいビルに飛んで行き、バシャーンと突っ込んだ瞬間に、「そして僕らはいつもの笑顔と~♪」という歌が始まる。

 この歌が始まるタイミングが、超カッコいいんですよ。

 「そして僕らはいつもの笑顔と姿で~♪」という歌詞で、バーンと突っ込んで行って、銃撃戦が始まるんですけど。この銃撃戦が、もう本当に完全に訓練された動きなんですね。

・・・

 警察じゃなくて彼らは軍隊なんですよ、もう本当に。

 で、「いつもの笑顔と姿で~♪」という歌詞のところで、いきなり銃撃戦を始めます。

 それに対して、ビルに立てこもっていた新興宗教側は防戦一方です。破壊力が違う。火力が違う。警察の方は爆弾を使っているわけですね。

 なぜ警察の方がガスマスクつけているのかと言うと、突入する時に毒ガスを使うからですね。警察の側は「毒ガスを使う」という前提で突入していて、新興宗教の側はそういう防備を持っていないから、どんどん押されていくわけです。

 この「埃にまみれた服を払った~♪」って歌詞、すごいでしょ?

 「そして僕らはいつもの笑顔と姿で」というのは、「彼らにとってはこれが日常だ」ということなんですね。彼らにとっては、この人殺しが日常の世界。

 そして、「埃にまみれた服を払った」って、これ、埃じゃないんですよね。「血を払った」って意味なんです。「返り血の付いた服を着替えるのが日常だ」と。

 これは、オウム真理教のサティアン事件とかが起こる前に作られているんですね。だから、宮崎駿は、そういう事件を参考にして作ったのではなくて、完全に自分の想像だけで、「未来の社会」ということはないんですけど、「自分が描きたい世界はこれだ!」というふうに描いているんですよね。

 で、「埃にまみれた服を払った、OH~♪」という、「OH~♪」という部分で、爆発がバーンと起こる。

 この、音と絵の合わせ方も見事です。「そして僕らは~♪」という歌が始まった瞬間に突入が始まって、歌の間の「OH~♪」という小さいシャウトのところで爆弾が爆発して、爆炎がブワーッと右から左へ広がっていく。メッチャクチャカッコいいんです。

「この手を離せば音さえたてない~♪」というところで、このビルの周りに、空中を飛ぶパトカーが10機以上飛んでいる。

 これで、このビルが完全に制圧されたというのがわかります。

 ここまでを一気に見せるわけです。なかなかすごいんですよ、このアニメ、本当に。

・・・

 で、「落ちていくコインは~♪」ってところで映るのがこれです。

(パネルを見せる)

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【画像】死んだ女の子 © 1995 Studio Ghibli

 これね、「死んでる女の子」なんですよ。武装集団のカルト教団って、僕らはついついオッサンばっかりって考えるんですけど、そんなことないんですよ。こんな幼い女の子が、大人向けのダブダブの信者の服を着ているんですね。大人の服しかないから。

 でも、そんな年端も行かない女の子に対してまで、生きているか死んでいるか確かめるために、持ち上げて、顔から落とすんですよ。落としたら、動かないんですけど。

 そんなシーンのバックに掛かっているのが「落ちていくコインは二度と帰らない~♪」という歌詞。もう、チャゲ&アスカは、そんな意味で全く書いてないのに(笑)。

 この「二度と帰らない~♪」という部分では、逆光の中、今の女の子と同じように、死体を1つずつ確かめている警官隊が映るんですね。

 もちろん「生き残りがいたら撃ち殺すため」です。そのために、こうやって死体を1つ1つ確かめていくんですけど。

 ここで、あえて逆光にしているのはなぜかと言うと「警察側の非人間性を見せるため」ですね。こういうふうに、逆光の中、入ってくる人間というのは、人間味がないように見えるんですよ。これを、あえてここではやってます。

 ここまで、実は一番最初の無音の状態から「OH~♪」という、スキャットから数えて、わずか90秒。歌が始まってからは40秒しかないAメロと言われるパートです。

 Aメロ、Bメロ、サビというふうに、J-POPの曲は進行するんですけど。そのAメロの40秒までで、「信者のビルに突入して、ほとんど全滅させて、死体を確認する」というところまで行くわけですね。

 流石の宮崎駿。

 「そして僕らはいつもの笑顔と姿で~♪」ということで、「これが彼らの日常だ」と。

 「埃にまみれた服を払った~♪」で、「血にまみれた服を着替えるのが、これが俺達の毎日だ」と。

 「この手を離せば音さえたてない~♪」については、ちょっとレベル2の方で説明します。

 で、「落ちていくコインは~♪」というところで、持ち上げた女の子の顔をゴトンと落とす。

 もともと、この『On Your Mark』というのは恋愛の歌であって、「この手を離せば音さえたてない、落ちていくコインは二度と帰らない~♪」というのは、失恋のことを指しているんですよね。

 どう考えても、チャゲ&アスカは恋愛の歌として歌っているのに、宮崎駿はそれをこんなに残酷な話に仕立て上げているわけです。

 これはたぶん、世界のアニメでも最も衝撃的な冒頭90秒だと思います。

 後の『エヴァンゲリオン』の25話とか、『Air/まごころを、君に』とかで描かれた、国連軍によるネルフの虐殺シーンというのは、明らかにこの1995年の宮崎駿の、わずか6分40秒のアニメから、すごく強い影響を受けているんです。

 だって、それまで、アニメでこんなシーン、誰も描いたことがなかったんですよ? 宮崎駿というのは、それを、よりによってチャゲ&アスカのPVで、それも冒頭の90秒でやっちゃうような、ちょっと頭のおかしいオジサンなんです。

・・・

 Bメロに入ります。

 「君と僕並んで~♪」というところで、やっと事件が起きます。

(パネルを見せる)

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【画像】主役の二人 © 1995 Studio Ghibli

 これは1分36秒のところなんですけど。奥の方に翼の生えた女の子が見えて、ここでやっとチャゲ&アスカ、主役が登場します。

 で、「夜明けを追い抜いてみたい自転車~♪」というBメロの後半に入ります。

(パネルを見せる)

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【画像】翼のある女の子 © 1995 Studio Ghibli

 「ここで女の子を確かめると、実はその女の子の背中に翼が生えてたんだ」と。ここ、大事なシーンですから覚えておいてくださいね。

 さっきのAメロは40秒あったんですけど、Bメロの方は10秒くらいしかないんですよ。

 Bメロは、Aメロで描いた残酷な世界に対して、そこに起きた小さい奇跡を描いてるんですね。

 「教団ビルの奥に翼が生えた少女がいた」と。「その翼の生えた少女が酷い目にあってる」と。では、宮崎駿が言う酷い目とは何か? 「それは人間性の否定だ」と。

 「まず、鎖だ」と。鎖に繋がれている=酷い。「そして、コカ・コーラを飲まされている=酷い」という(笑)。

 宮崎駿のコカ・コーラ嫌いというのは、僕も知ってたんですけど。宮崎駿の言う酷い扱いというのは「鎖で繋がれて、コンクリートに寝かされて、そしてコカ・コーラを飲まされている」なんですよね。

 もう本当に、『空飛ぶゆうれい船』という昔のアニメ見てください。そこではボアジュースという名前で隠してるんですけど、「世界中の子供達がコカ・コーラを飲んでいるおかげで、我々は怪物に支配されていて、脳が溶かされていく」というメッセージが、メチャクチャ強く入ってて。宮崎駿というのは、あの頃から無茶する人だったけど。ここでは「コカ・コーラ」っていうブランド名まで書いちゃってるという。

 まあ、「何て酷い拷問に遭っているんだ!」というふうに、宮崎駿は言っています。

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 ここから、サビに入ります。

 「夜明けを追い抜いてみたい、自転車、OH YEAH~♪」となったら、急にオープンカーで走るシーンになるんですね。

 黄色いオープンカー。アルファロメオ・ジュリエッタらしいんですけど、僕は詳しくないのでわかりません。

 ここはね、わりと明るいシーンなんですよ。つまり、これからの予想。「これから、こういうお話になりますよ」というふうに、みんなに期待や希望を見せるシーンですね。

 そして、「On Your Mark~♪」というサビに入ります。サビの1回目は明るい希望です。

 「On Your Mark、いつも走り出せば~♪」というところでは、チャゲが立ち上がって、女の子が翼を広げて空を飛ぼうとするシーンですね。

 この時、女の子はちょっと不安そうにしているんですよ。「私、飛べるかしら?」と。それに対して、チャゲが「できるよ!」と励ますシーンです。

 こんな感じですね。「私飛べるかしら?」と不安になっている時に、チャゲが「できるよ!」と言って、腕でぐっと押し上げて、女の子がちゃんと飛ぶ。なかなかいいシーンなんですけど。

 このシーンが終わったら、パッと現実に戻るんですね。

 この現実への戻るところで、歌詞が「On Your Mark、いつも走り出せば~♪」の次の、「流行りの風邪にやられた~♪」になるんですよ。

 つまり、歌のサビが「やろうとしたんだけど、ダメだった」という歌詞になっているんです。この「ダメだった」という歌詞の部分で、急にポッと現実に戻されるんですね。

 つまり、この青空の部分は、現実には存在しない場面なんですね。

 この女の子を見つけた瞬間に、「ああ、きっとチャゲ&アスカが、この女の子をこんなふうに開放してあげるんだ」と、見ている観客側に期待させるようなシーンだと思ってください。

 まあ、「自分達が憧れている黄色いイタリア車に、こんな可愛い女の子を乗せて、外の世界に離してあげる。そんな良いことが、俺達にも出来たらな」という、2人の願望だと思います。

 冒頭からすごく暗くてエゲツないシーンが続いているので、「でも、最後はハッピーエンドに向かう映画なんだ」と期待させるわけですね。

 しかし、そこで「走り出せば、流行りの風邪にやられた~♪」ということで、ちょっと現実に戻されてしまうわけです。

・・・

 サビのリフレインです。

 「On Your Mark~♪」という中で、女の子を抱っこして、2人は走って行きます。

 周りに、逮捕されてる人みたいなのが一切いないことに注目しておいてください。これはレベル2で説明します。

 「On Your Mark 僕らが、それでもやめないのは~♪」というところで、チャゲが女の子に水を飲ませると、女の子は、なんとか口を開いてゴクゴク飲んで、2人はちょっと安心したような微笑みを見せるわけですね。

 もう本当に、みんなが見たことないアニメ、それもPVを説明するのは大変なんですよ。俺、歌いながら説明してますから、かつてないほど喉がガラガラになってるんですけど。

 「それでもやめないのは~♪」というところで、女の子が救急隊員に助けられるんですけど、「夢の斜面見上げて~♪」という時に、かなり厳重にパッケージされるんですね。

 女の子が防護服を着たやつらに囲まれて、袋に詰められて、いきなりジッパーを上まで上げられて、さらにその上から黄色いフードみたいなものを被される、と。なんか、エゲツないほど厳重に警戒されているわけですね。

 で、「病気なのかな?」と思ったら。

 「夢の斜面見上げて~、行けそうな気がするから~♪」というところなんですけど。女の子が飛行機に乗せられて、ドアが閉まると、この不気味なマークが描いてあるんです。

 「良いことをしたつもりなのに、なんかあの女の子、まるで実験動物みたいな扱いを受けている。なぜだ?」というふうに、チャゲ&アスカは、やるせない気持ちになります。

 それでも2人には、仕事があるから、もう一度、仕事に戻らなければいけない。

 チャゲに預けていた銃を受け取って、仕事の現場に戻って行きます。

 ここまでが1番。Aメロ40秒、Bメロ10秒、サビがあって、このサビが終わるところまでで、2分40秒くらいですか。これで、ようやっと一番が終わります。

・・・

 ここから間奏に入ります。「チャーンチャンチャン~♪」という間奏に入るんですけど。間奏のところは、2人とも、やさぐれてるんですね。

 「そして僕らは~♪」の、「そして」のところで、コップを持っている手を「ガタン!」というふうに、テーブルに置く。このコップの音と同時に「そして僕らは~♪」というふうに歌が入るんです。

 もう本当にね、世界中のPVを作る人が全員、宮崎駿みたいに上手ければいいのにと思うんですけども。

 「助け出した少女は病院に運ばれたんだけど、温かみを感じない。これでいいんだろうか?」と。

 この「これでいいんだろうか?」という悩みが、実は、少女を乗せたヘリを見送る秒数に表れているんですよ。さっきの屋上でヘリを見送っているシーンって、8秒くらいあるんです。かなり長いです。6分40秒しかないのに、8秒近くも見送っているシーンがあるんですよ。

 それは「この2人の心に、何かが引っかかっているから」であって、そんな心に引っかかっていることをそのままにしちゃったので、ここから2人は延々と悩むことになるわけですね。

 安酒をカウンターにドンと置いて、「そして僕らは、心の小さな空き地で~♪」というところで、2人でやさぐれて酒を飲んでいます。

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【画像】酒を飲む二人 © 1995 Studio Ghibli

 絵コンテによると、ここでチャゲが食べているのは「山芋の千切りを酢漬けにしたもの」なんだそうですけど。

 「女の子を助けたんだけど、なんか割り切れないよな、俺達」と言っている。

・・・

 この後、ちょっと不思議なシーンになるんです。

 丸窓の外から見たアスカが、「互いに振り落とした~♪」というところで、何かを操作をしている。つまり、計画が始まっているんですね。

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【画像】機械を作るチャゲ © 1995 Studio Ghibli

 「言葉の夕立~♪」といういうところで、チャゲはチャゲで、何か怪しげな機械を作り始めている。ハンダ付けをしているわけですね。

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【画像】パソコンとアスカ © 1995 Studio Ghibli

 「答えを出さない、それが答えのような~♪」というところで、アスカの方はパソコンを操作してハッキングみたいなことをしています。

 で、ハッキングしているアスカが、「おっ成功!」って、さっき変な装置作ってたチャゲもそこに仲間として入ってくるんですね。

 たぶん、「2人はあの女の子を助ける道筋というか、システムを騙す方法を見つけた」というのが、ここまでの話になってくるわけです。

 つまり、間奏があって2番に入って、Aメロの間は「あの女の子を助けたい!」ということで、手短かに2人が計画して、その準備が出来たというところを描いているわけです。

・・・

 ここから、やたら早いんですよ。

 いつの間にか、2人とも歩きながら、防護服をちゃっかり手に入れて。「それが答えのような、針の消えた時計の文字を読むような~♪」ということで、いつの間にか防護服を着ている。

 後ろには、「さあ、皆さん、読んでくださいよ?」という感じで、あのマークが出てるんですね。

 そして、施設の作業員の防護服の口の部分から中にガスを注入する。

 チャゲがさっき作ってた装置はこれなんでしょうけど。「ガスで殺す」わけじゃないんですね。この防護服をパンパンに膨らませて、動けなくする。

 まあね、かなりコミカルになってくるんですよ。さっきまでの残酷な描写がまるで嘘だったかのように、急にコミカルになって、女の子の検査をしている作業員たちを次々と倒すわけですね。

 「君と僕全てを~♪」というBメロに入った頃には、この部屋の全員をさっきのガスで丸々と太らせて、奥の真っ赤な部屋に入って行きます。

 ここら辺はメッチャ段取り良く進むんですけど。これってコメディなんですね。ちょっと笑わせて安心させようというようなシーンです。

 奥に入ると、制御室らしき場所にはレーザー光線が走ってて、もう、バリアというか、センサーがいっぱい張ってるわけですね。

 「君と僕 全てを認めてしまうにはまだ若すぎる~♪」という部分で、チャゲが、さっきハンダ付けして作っていた装置で、このレーザーセンサーをオフにして。

 もう本当に野蛮に上に登って登って、登って登ってって猿みたいに登って、それでこの女の子を助け出すシーンになります。

 ここ、歌詞は書いてないんですけど、2人の「OH YEAH~♪」のところです。

 Bメロが鳴って、「認めてしまうにはまだ若すぎる、OH YEAH~♪」というところで、2人が女の子を抱えて走ってくる。まあ、この辺りは、ルパンぽいコメディだと思ってください。

 「On Your Mark~♪」とサビに入ると、2人は防護服をどんどん脱ぎながら逃げていきます。

 チャゲはついつい笑っちゃってます。女の子は、まだ包まれたままですね。

 「いつも走りだせば~♪」というところで、2人はトラックに女の子を無理矢理詰め込みます。

 トラックのタイヤがギュルギュルっと回転して、トラックのタイヤが遠心力で膨れ上がるシーンを入れて、このトラックが動き出すんですね。

 まあ、まだまだルパンなんですけど、この辺りから全体的にアクションカットに入ります。

・・・

 で、トラック走り出します。

 「流行りの風邪にやられた~♪」というところで、トラックが外に出ますね。

 次は、またデカいパネルなんですけど。

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【画像】ドーム都市 © 1995 Studio Ghibli

 これは、トラックが逃げていくシーンなんですけど。「On Your Mark~♪」というサビの2回目のリフレインでは、下から上に向かってカメラがパンアップして行きます。

 この都市自体が、実はドーム都市で、地下にあったということがわかりますね。

 2人は地下都市から逃げて、道伝いにどんどん上へ登っていって、その果てに地上がチラッと見える。ここで「彼らは地上へ向かっているんだ」ということがわかるんですけども。

 この一番上に飛んでいる、なんか小さいゴミみたいなやつ。これ、警察のヘリなんですね。だから、上まで行けば逃げれると思ったら、上から、一番最初に教団を襲っていた、警察のヘリコプターみたいなロケット機みたいなやつが、何十機も襲ってくる。降り注いでくるという。

 まあまあ、ワンカットで、かなりのアクションを説明しているんですね。

 これは、「僕らがこれを無くせないのは~♪」という歌詞のところです。

 上から警察の飛行機がどんどん降りて来るところなんですけど、実はこれ、かなり怖いんですよ。この迫って来る飛行機が、わりと強くて、コックピットの中の人も見えるくらいクローズアップになるくらいまで降りて来て、上から押し潰すように2人が乗っているトラックを襲うわけです。

 これは2人の側からの視点です。2人が運転席にいて、その間に女の子がいるんですけど。お腹に回転式のパトランプがついているヘリコプターみたいなパトカーが上から襲って来ています。自分達の体重でこのトラックを止めて、グーッと押し込んで壊そうとしてくるわけですね。

 「夢の心臓めがけて~♪」というところで、アスカが「もうこうなったら!」ということで、ヤケクソでアクセル踏んで加速します。そうやって、なんとか飛行機をやり過ごそうとするんですけども。

 「僕らと呼び合うため~♪」というところでは、チャゲはずっと女の子を抱きしめています。

 で、上から飛行機に押しつぶされて、どんどん高速道路が壊れていく。

 いわゆる『ラピュタ』みたいな感じですね。

 その結果、飛行機が壊れてドーンと爆発しちゃって、このトラックは、高速道路から落ちてしまうわけですね。飛行機に衝突して道路が崩壊します。

 で、トラックが落ちていくんですけども。

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【画像】落下するトラック © 1995 Studio Ghibli

 4分18秒。トラックが落ちるところまでで、サビが終わるんですね。

 ここから「チャーンチャンチャン、チャーンチャンチャン~♪」という、かなり長い間奏が始まります。1回目のサビで流れたのは「閉じ込められていた女の子を大空に救出する」という、いい感じの映像だったんですけど、2回目のサビでは、まあ後半の逆襲部を強調するための失敗シーンなんですけど、「見ろ! この見どころ満載の映像を!」というふうな感じで、見どころをいっぱい入れてます。

・・・

 かなり長い25秒続く間奏の間、この自動車がゆっくりと落下していく。

 しかし、落下していく運転席から、チャゲとアスカが、女の子だけを外へ逃がそうとしているのが見えるんですね。この辺が見どころなわけなんですけども。

 女の子を逃がそうとして、一生懸命、アスカが「飛べ! 飛べよ!」って言うんですけど、女の子はなかなか飛ばないんですね。チャゲの方も、「頑張れ、頑張れ、飛べ!」と言っている。

 これね、無音シーンでやっているから、なかなか良いんですよ。サイレント映画みたいに、曲が流れているだけで、セリフは一切なしでやっているから、この2人の優しさみたいなものが伝わってくるんですけど。「俺達のことはいいから、飛べ!」って言うんですね。

 だけど、この女の子は手を離せないんです。

 手を離せなくて、「ダメ、ダメ」と言ってるんですけど。なんで、こんな構図になるのか? 女の子が落ちて行く時に顔の方向が変わるのかと言うと、僕がよくニコ生で話す上手・下手進行なんですね。

 つまり、女の子が画面左(下手)を向いている場合、彼女は「状況を進める側」なんですよ。でも、女の子が画面右(上手)を向いている場合は「状況を止める人」になっているという意味なんですね。

 だから、落ちて行く時、最初は下手を向いているんですけど、落ちる最中に方向がゆっくり変わっていくというのは、この女の子が一生懸命、落ちないように止めようとしているということを表現しているんです。

 それをセリフなしで表現するために、あえてここでは女の子の方向を変えることをやっているんですね。でも、女の子は羽ばたいて2人を引き上げるわけではない。この謎はもう少し後で説明します。

 こういうふうに、映像というのは、カメラ位置とか俳優さんの向きで文法を作っていくようなものなんだというのを、ちょっと覚えておいてください。

 チャゲとアスカの2人で、「俺達のことはいい! さあ、手を離して、お前だけでも飛ぶんだ!」と言うんですけど、女の子は手を離せないわけですね。

 そのまま残酷に、女の子と2人は、どこまでもどこまでも奈落の底へ落ちていくわけです。

 最後、もう本当に、このまま画面の底の底までビューンと小さくなるまで落ちて行くんですね。見えなくなるまで落下します。もう、これは絶望という感じです。

 この間奏部分が、メチャクチャ上手いんですよね。

 歌詞がないからというのもあるんですけど、2人は、とにかく女の子を助けようとするんですけど、助けることが出来ない。なぜか、羽ばたいたりもしない。果てしなくトラックは落ちて行くんです。

・・・

 ここで終わりかと思ったら、シャウトが入るんですね。「そして僕らは~♪」というのが入って、サビの3回目に入るんですよ。

 Aメロ、Bメロ、サビ1回目と来て、また2番のAメロ、Bメロ、サビ2回目と来た後で、長めの間奏が入り、「そして僕らは~♪」というシャウトが入ったかと思ったら、もう一度、サビの3回目が入る。

 サビの3回目が入るとどうなるのかと言うと、いきなり最初の方に時間が巻き戻るんですね。

 もう一度、虐殺のシーンが出てきて、「On Your Mark、いつも走り出せば~♪」と、女の子を助け出すシーンが、なぜかもう一度入るんですよ。

 で、次に、「走り出せば~♪」で、女の子が空へギューンと飛んでいくイメージ。

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【画像】空に昇っていく女の子 © 1995 Studio Ghibli

 羽の色が銀色に光るくらいの高い空まで飛んでいく、と。

 あの、これを「マルチエンディング」みたいな言葉で説明する人も多いんですけど、ちょっと違うんですよ。

 宮崎駿は、マルチエンディングという発想をする世代の人ではないんですよね。マルチエンディングでもないし、エンドレスエイトでもありません。そういう時代の作家ではないんです。もっと意図があるんですね、明らかに。

 で、また抱えて逃げるシーンが繰り返されて、「流行りの風邪にやられた~♪」ということで、トラックが墜落するシーンが入ります。

 で、「また同じか?」と思ったら、ここで、なぜかいきなりトラックのあちこちからロケット噴射が始まって、「僕らがそれをやめないのは~♪」ってなった瞬間に、トラックが空を飛んじゃうんですよね。

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【画像】ロケット噴射するトラック © 1995 Studio Ghibli

 飛んじゃうどころか、上昇を始めるんですよ。

 絵コンテ見たら「根性で飛ぶ」と書いてあって(笑)。もう本当に根性で飛んでる感じですね。

 「夢の斜面見上げて~♪」で、どんどんトラックが地下都市を上昇して、上の方の、人が住んでいる近くにドカーンと突っ込んでしまうわけですね。

 最上階近くまでロケット噴射で上がっていって、突っ込んでいくわけです。

 「行けそうな気がするから~♪」で、貧民街みたいなところのドアを2人で開けて、ようやっと、女の子をお姫様抱っこして逃げるわけですね。

 この辺も、ルパンとかのコメディのノリです。

 このサビの3回目は「時間が巻き戻ってやり直し」な感じです。

 絵コンテを見たら「永劫回帰が始まる」と書いてあるんですけど。この永劫回帰の意味は、後で語ります。

 こんなふうに、またダメかと思ったら、トラックからロケット噴射が始まって、一気に脱出に成功します。

・・・

 ここから先は、ハッピーエンドじゃないかと思われるシーンです。

 この後、またもう1回サビなんですよ。「そして僕らは~♪」で、急に2人は高級スポーツカーに乗って、トンネルを走っているんですよね。

 で、「On Your Mark、いつも走り出せば~♪」のところで、「注意阳光(日の光に注意!)」、「不保障生命!(命の保障はしない!)」という看板を無視して走り続け、やっとトンネルを抜け出して逃げ切ります。

 すると、外の世界には不気味な建物がいっぱいあって。

 ここでは3人とも、脱出できてニコニコですね。まるで、気持ちのいいハッピーエンドみたいに見えます。

 トンネルを抜けて外へ出ると、また、遥か向こうの方に、例の黒い不気味な建物が見えているんですね。

 「流行りの風邪にやられた~♪」のところで、「EXTREME DANGER(命の危険があるぞ!)」という注意灯が流れます。

 で、また「On Your Mark~♪」とリフレインになった瞬間に、また一番最初と同じ、無人の町が広がって不気味な黒い建物があるという風景が映ります。

 ここでようやっと、「僕らがこれを無くせないのは~♪」というところで、女の子を励まして、「さあ、空へ飛びなさい」というシーンですね。

 一番最初から予言されていたシーンに、やっと繋がるわけですね。

 「夢の心臓めがけて~♪」ということで、最初のイメージではチャゲから押されるように飛んでいたのが、ここでは女の子が自分から飛びます。

 チャゲの手を握っています。後ろにはですね、この不気味な建物が見えたままですね。

 で、この「僕らと呼び合うため~♪」という時、女の子のちょっと違う表情。

 絵コンテには「少女、何か覚醒する」と書いてあります。何かにハッと気がついて、下のチャゲ達を優しく見下ろします。

 そうすると、アスカはイケメンでウィンクして、チャゲは女の子の手の平にキスをする。

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【画像】キスをするチャゲ © 1995 Studio Ghibli

 キスが手の平の側だということだけ、これは伏線になっていますから、覚えておいてください。

 この女の子は、このまま空を飛びます。

 絵コンテを見ると「雁行」と書いてあるんですよ。雁行というのは何かと言うと、「いくつもの空を飛ぶ生き物が、追いつ追われつつして飛ぶ様」なわけですね。この自動車を追い抜いたり、また自動車が追い抜かれたりしながら、この少女が飛んで行く様。これが雁行ですね。

 少女が上昇していくと、その彼方に町が見えて。で、少女はそのまま青空へ飛んで行けばいいんですけども、ちょっと意地悪なことに、真っ暗な雲が一瞬入るんですね。

 雲が、白じゃないんですよね。真っ黒な雲が一瞬だけフレームインして、「この女の子が行く場所は、希望がある青空じゃないぞ」というのを見せるんですけど、その後は、見ている人間にそれをさっさと忘れさせるように、メチャクチャ綺麗な白い雲と青空を見せる。

 そんなコバルトブルーの青空の中に、女の子がサーッと消えていく。

 チャゲ&アスカは、それを、手を振っていつまでも見送っていきます。

 良いお話に見えるんですよ。メチャクチャ上手いですよね。メチャクチャ上手い、良いお話に見えちゃうんです。

・・・

 女の子が、小さく小さくなるまでカメラが追いかけます。

 そして、サビも全部終わって伴奏だけの中、最後に「そして僕らは~♪」と小さく語るところで、チャゲ&アスカの車が止まる。

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【画像】上空からのスポーツカー © 1995 Studio Ghibli

 ここで、このお話が終わります。

 カメラはそのままずーっと引いて行って、2人の車が小さく小さくなるところで、フィルムが終わります。

 6分36秒です。ここから4秒くらいの黒みがあって、6分40秒でお話が終わります。

 今、話したのがレベル1です。すみません、1時間近くかかりましたけど。

 「女の子を助けて空に返す」というストーリーですね。

 天使の女の子は新しい世界の希望であって、彼女は飛び立つ時、まるで地球をこんなふうにしちゃった人類の愚かさを許すかのように微笑んでいる。

 失敗しても諦めちゃダメだ。時間を巻き戻して、何度でもチャレンジしてチャレンジして……というようなお話に見えるんですね。

 たぶん、チャゲアスのコンサートでこの映像が流れた時は、こういうメッセージだと思ったはずです。だって、チャゲアスが歌ってる後ろで流れている映像ですから。やっぱり、みんな、そういう肯定的なものだと捉えるはずなんですけど。

 これが「誰にでもわかるレベル1」です。こういう理解で普通は構わないんですけど、次はレベル2に行きます。

『On Your Mark』解説:レベル2に込められた宮崎駿の悪意

 すみません、このレベル2は、またちょっと長くなるので、今日は本当に無料放送が長くなるんですけど。

 今回、レベル6まであるんですけど、レベルが1つ上がる度に、その前の解釈を全否定します。

 つまり、レベル2に上がったら、レベル1で語った「これはいい話である」ということを「実は違うんですよ」とレベル1を全否定。レベル3に上がったら、今度はレベル2を全否定。レベル4に上がったら、レベル3までを全否定することになりますので、すみませんけど頑張ってついて来てください。

 こういうことになっている話なんですよ。だから、これ、すごく面白いんですけども。

 では、無料の最後、レベル2「3つの悪意」について語ります。

 レベル2では、「宮崎駿はこのフィルムの中に思い切り悪意を込めて作った」ということを解説します。

 絵を見るだけでも、まず、これまでの宮崎アニメではあり得ない、3つの悪意が入っているのがわかります。宮崎駿は、「アニメというのは子供向けのものだから、封印している」と自分で言っていた3つの悪意を開放しているんですね。

 もちろん、それは、子供とかチャゲアスのファンとかレコード会社の偉い人には、出来るだけわからないように作っているんですけど。やっぱり、アニメが好きな人がよく観察したらバレちゃうものなんですよ。

 「残酷描写」と、「原子力」と、「翼の生えた少女」。これが3つの悪意です。

・・・

 では、悪意その1、残酷描写から行きましょう。

 まず、一番最初にトンネルに突っ込んで行く飛行機なんですけど。トンネルに突っ込んだ瞬間に桜の代紋がギラギラ光るんですよね。

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【画像】桜の代紋 © 1995 Studio Ghibli

 もう「POLICE」って書くだけでいいはずなのに、なぜ、宮崎駿が学生運動の時に戦っていた機動隊のマークをわざわざ出すのかと言うと、桜の紋章を輝かせることで、「これは日本の警官だ」と。「POLICEって書いているけど、日本の話だぞ?」ということをやっているわけですね。

 これは、オープニングの歌が始まる前に流れる映像です。この後、さっき説明したように、目が開いたり閉じたりしているビルに突入するんですけど。

 よく見ると、このビルの窓の中で人影が動いているんですね。つまり、わざわざこれから破壊する窓のすぐ近くに人間がいるところを、ちゃんと見せているわけですね。残酷描写をしている。

 「そして僕らは~♪」という歌が始まって、警官隊が突入するんですけども。

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【画像】機動隊 © 1995 Studio Ghibli

 これは、飛行機の中にいる機動隊の隊員達です。銃を持ってこれから突入するんですけども、よく見ると、ここに「KILL」って書いてあるんですね。

 これね、おそらく「KILL」の他にもいろんなサインがあると思うんですけど、この日は「全員、実弾を発射して、容疑者を殺しても構わない」という意味なんです。だから、「KILL(殺せ)」と書いてあるんですね。

 このボードのサインは、たぶん、他にも色々あるんでしょう。「逮捕しろ」とかいうのがあると思うんですけども。ここでは「KILL(全員撃ち殺せ)」という指示があることがわかります。

 で、「そして僕らは、いつもの埃にまみれた服を払った~♪」という部分。

 これは、もちろん「血に塗れた服を払った」ということなんですけど。

 僕ね「やっぱり、宮崎駿が本気で人殺しを描いてるな」と思ったのはここなんですよ。

 「この手を離せば音さえたてない~♪」の時の、これだけのシーンなんですけど。このカットで描かれている彼らの戦闘方法は、かなり異常なんですね。

 普通ね、こうなんですよ。

 一番下の3つ目のコマ見てください。物陰に隠れて撃っているでしょ? 「相手が銃を持って反撃するかもしれないから、いつも物陰に隠れながら撃っている」んですよ。これが普通の戦闘方法なんですね。

 ところが、このカットでは、奥から走って来て、部屋の中を、物陰に隠れもせず、いきなり銃を腰溜めで、突っ立ったまま撃っています。

 これ、何かと言うと、「部屋の向こうにいる人間は既に降伏しているか、銃を持ってないことがわかりきっているから」なんですね。もし、反撃される可能性があったら、絶対に隠れて撃つんですよ。でも、ここにいるのは無抵抗で「助けてくれ」と言って手を上げているか、もしくは怪我をして反撃できない人間だから、安心して身体を晒して撃ってるんですね。

 さらに、次のカットでは、銃を撃ち終わった去り際に次のやつが来て、この部屋に爆弾を投げ入れています。

 つまり、これは逮捕とかそういうものじゃないんです。虐殺なんですね。「全員殺せ!」という指示が出ているから、無抵抗な人間であろうと、降伏していようと、子供であろうと女の子であろうと、全員殺すんです。

 この『On Your Mark』の後、95年に『エヴァ』のテレビ版も劇場版もあったんですけど。あの残酷な戦闘描写に一番影響を与えたのって、やっぱり、この6分40秒のフィルムなんですよ。

 でも、それを、ほとんどのアニメファンは知らないんですね。宮崎駿がこんなことをやっているとは知らない。庵野秀明が、それを見て「うわーすげえ!」と思って「じゃあ俺は、これをもっと丁寧にやろう」と思ってやったら『エヴァ』になりましたということなんですけど。

 宮崎駿は、これを「残酷ですよ」というふうに描かないんですね。やっぱりそこは宮崎駿の方が1枚上手で。「ドアの前に棒立ちに立って銃を撃つ」というのが、どんなにエゲツないことかってわかるのは、やっぱり、そういうのに詳しい人だけなんですよ。

 だから、こんなもん、別にレコード会社のオッサンに見せてもわからない。まあ、実際にわからなかったんですけど。たぶん、鈴木敏夫さんすらも、これに気が付いてないんですよ。これが、いかにすごいことなのかっていうのに。

 こんなふうに、無抵抗な人間を撃って、その中に爆弾を投げ入れているのに。

 まあ、突入時に「KILL」と出ているのは、殺人の指示が出てるからだと思うんですけど。

 で、「落ちて行くコインは二度と帰らない~♪」という時の、女の子の死体を持ち上げて落としているシーンですね。

 なぜこんなことをしているのかと言うと、生きているかどうか確認しているから。生きていたら、その場で撃ち殺そうと思っているから、銃を持ったまま持ち上げているわけですね。

 右手で持ち上げて、左手に銃を持っているのは、「もしピクリとでも動いたら、即座に弾をぶち込もうと思っているから」です。だから、みんな銃を下に向けながら死体を検分しているわけですね。

 さっき、女の子を救助するシーンで「捕虜がいないことを覚えておいてくださいね」と僕は言いました。

 女の子が連れて行かれるシーンで、周りを見ても捕虜らしき人物が一切いない。普通、こういうシーンって、教団に突入したんだから、大量の逮捕者が出て、そいつらが運ばれるはずなんですけど。そういう描写が一切ないんですよ。

 たまに、高級幹部みたいな、あとで参考人になるような人を担架で運ぶところが、端っこにちょっとだけ見えるんですけど、その他には、一切ないんですね。

 つまり、もう「殺しているだけ」なんですよ。

 なんでそんなことが可能なのかと言うと、ちゃんと宮崎駿は描いているんですよ。

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【画像】ワッペン © 1995 Studio Ghibli

 これ、チャゲとアスカの腕についてるワッペンなんですけど。わかりますか? これは天秤のマークなんです。そして、天秤というのは、裁判官とか弁護士とか司法制度の方を示しているんですよ。

 つまり、彼らは警官であると同時に裁判官なんですね。警官というのは行政なんですけど、いわゆる「司法・立法・行政」の三権分立が、この時代にはすでに崩れている、と。彼らは「その場で裁判して、その場で有罪判決を下して、その場で死刑にする」という、とんでもない組織なわけですね。

 それを、天秤のマークのワッペンを1つつけることで表現している。「これも、まあ、レコード会社にはわかんねえだろう」っていう悪意ですよね。

 本当に、飛行機を降りる時に一瞬だけ「KILL(殺せ)」っていうのを出して、無抵抗な人を撃つ描写を入れて。そして、2人が飲んだくれて「俺達の今日の仕事って何なんだろう」って言ってる時に、腕のワッペンには天秤のマークがついているのを見せる。

 宮崎駿が言おうとしているエゲツなさというのは、こんなふうにちゃんと画面上に出てるんですけど、ほとんどわからないようにされているわけですね。

 僕も、この辺、見つけた時に、ちょっとビックリしたんですけど。

 で、さっき見せたこのシーン。

 これも「運ばれた女の子を見送る長いシーン」と言ったんですけど、見送った後に彼らがやっていることは何か? 後ろに立っている1人が、銃を2つ持っているんですね。そして、見送っていた1人が、もう1人から銃を受け取って、2人はそれぞれ銃を持ったまま現場に戻る。

 今「現場に戻る」って言ったんですけど、これはどういう意味かと言うと、「翼の生えた女の子をあんなに心配していた2人は、これから、生き残りを探して殺すために現場に帰る」ということなんですね。

 つまり、1人の人間の中に、悪魔と天使が両方いるんですよ。彼らは正義の味方でも何でもないんですね。

 毎日毎日、「いつもの笑顔と姿で」人々を虐殺して、命令されたら無抵抗な人間であろうと何であろうと殺してて。その中でたまたま女の子を見つけたから、仏心を出して、心配して、ずっと飛んでいくのを見送ってた。そしたら「さあ、続けようか」と言って、また銃を受けとって、残っている人間を皆殺しにして帰る。

 こういうことを描いているわけですね。

 それをちゃんと描いているところが、宮崎駿の悪意の1つ目です。

 「俺は今回、残酷描写を恐れない! 人間の暗黒面に踏み込むことを、俺は全然恐れない!」という描写をしているわけですね。

 チャゲアスの毎日というのは、こういうふうに虐殺の連続であって、いつしかこんなことをしても平気になってたんですね。しかし、翼のある少女を見つけて、その子に対して仏心を持ってしまったので、変化が起きる。曲の1番でそれを語った後に、2番のAメロと共に、彼らのストーリーが始まるというような形になっています。

 これが、悪意その1の「残酷描写」ですね。

・・・

 悪意その2は「原子力」です。

 それについては、この『出発点』という本の中に書いてあります。まあまあ、この『アニメージュ』にも載っているインタビューの再録なんですけど。

 アニメージュのインタビュアーが、「冒頭の、のどかな田園風景に建つ、奇怪な建物はなんですか?」と聞くと、宮崎駿は「どう解釈してもらっても構いませんが、その直後に出てくる放射能注意のついたトラックを見て、なんとなくわかってもらえばいい」と言ってるんです。

 つまり、宮崎駿としては「あれは原子力発電所、それも事故を起こした原発だってわかっているんですけども、それを言うつもりはない。『アニメージュ』なんかに取材されても俺は絶対に口を割らんぞ」と思っているわけですね。

 「原子力マークがわかるやつだけわかればいい。チャゲ&アスカにもレコード会社にも、たぶんバレねえだろう」というふうに思っているわけですね。

 というのも、実はこの『On Your Mark』が作られた当時、チェルノブイリで事故はあったんですけども、3.11以前だし、日本の東海村の原子力発電所で大事故が起きたのも、このだいぶ後だったんですね。

 だから、日本ではバイオハザードマークはもちろん、ラジエーションハザードと言われる、いわゆる放射能注意のマークを知っている人なんて、ほとんどいなかったんですよ。

 宮崎駿としては、チェルノブイリのことが日本でほとんど報道されていないことにも、やっぱり腹が立っていたんでしょう。それもあって、放射能マークというのを散々出しても「バレないだろう」と思っているわけですね。

 でも、「まあ、俺のアニメをちゃんと見ているファンは、これくらい勉強してくれているだろうな」というふうにも思っているので、ちゃんとサインとして入れといてくれているわけなんですけど。

 ということで、悪意その2は原子力なんですけど。

 冒頭の放射能マークの後ろにある黒い建物、これは何かと言うと、もう本当に簡単な話で、これなんですね。

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【画像】チェルノブイリ原発

 これはチェルノブイリ原子力発電所の4号炉というやつです。

 この4号炉というのは事故を起こした原子炉で、後に、周囲をコンクリートで覆われて、放射能が漏れないようにガチガチの出っ張りがついているんですね。

 これは「石棺」と呼ばれています。この石棺というのは、当時、ニュースとかで原子力関係を見てた人は全員知っている表現でした。

 宮崎駿は自分のアニメの中に、この石棺をさらに禍々しくした物を、こっそり入れ込んだんですけど。どれくらいバレないと思っていたのかと言うと。

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【画像】建物の絵コンテ © 1995 Studio Ghibli

 これが、このシーンの絵コンテなんですよ。

 ここには、「奇怪な建物が建っている」と書いてますね。つまり、原子炉だとわかってるのに、スットボケてるわけです。

 でも、ラストシーンの絵コンテを描いた頃には、宮崎駿もついに本音が出て、「封印された原発」って書いちゃってるんですね。

(パネルを見せる)

画像33

【画像】原発の絵コンテ © 1995 Studio Ghibli

 絵コンテを書く時、最初は慎重に「奇怪な建物」って書いてたんですけど、ラストシーンを描く時には、興奮して「封印された原発」って自分で書いちゃってる所が可愛いなと思うんですけど。書いちゃうんですよね、ハヤオ君は(笑)。

 で、ここ、僕の好きなカットなんですけど。

 鉄条網の向こうに封印された原発があって、この鉄条網が腐ってるんですよね。

 「鉄条網が腐っている」というのはどういう意味かと言うと。鉄条網で覆われているということは「ここから先は危険だ」ということなんですよ。つまり、この原発が事故を起こした当初は「この鉄条網の内側の範囲が危険だ」と思われてたんですね。ところが、「もっと危険だ」ということが後々わかってきたので、鉄条網の外側にいた人も全員避難して、もう今、この周辺には人がいないんですよ。だから、鉄条網が腐っているんですね。

 鉄条網が腐ってる理由は「もうここから先が危険なんて言ってる場合じゃない。この地域の全てがダメになっていて、みんな引き上げているから、鉄条網自体が腐っちゃってる」というわけなんですよ。

 もともと原子力発電所だったんですけど、周囲が事故で封鎖されて。ところが、封印したつもりなんだけど、汚染は止まらない。その結果、この周囲数キロから住民は逃げて、鉄条網自体が不要になっちゃったということですね。

 どれくらいの事態になったのかと言うと、チャゲアスの2人が黄昏れて酒を飲むシーンがあるんですけど。

 居酒屋の壁に貼ってあるメニューに、「塩サバ(合成)」、「バイオ蛸酢」、「(本物)めざし:時価」、「(本物)やきとり:時価」って書いてあるんですよ。

 つまり、この世界には、もう人間しかいないんですね。合成の塩サバとか、バイオ酢蛸みたいな、そういう合成食料しかないんですよ。

 まあ、中には放射能に強い生物というのがいるんですね。「チェルノブイリの選択繁殖」って言われているんですけど、チェルノブイリ原発の近くって、今、緑がいっぱいなんですよ。「じゃあ、放射能があっても植物は大丈夫なのか?」と言うと、違うんですよ。「植物の中でも元気に繁殖するのと枯れていくのと2種類ある」だけなんですね。選択繁殖というのはそういう意味です。

 鳥の中でも、特定の種類の鳥は、チェルノブイリ原発に巣を作っているくらい元気なんですけど。でも、それ以外のほとんどの鳥には、やっぱり異常が起こってしまう。こういう選択繁殖が起こるんです。

 なので、人間以外の生物は、もうほぼ絶滅している世界だというのが、この「塩サバ(合成)」「バイオ蛸酢」というメニューを通じて、宮崎駿は描いています。

 じゃあ、どれくらいダメなのかと言うと。

 まあ、地上へ通じるトンネルに「生命の保障はしないぞ!」と書いてますけども。ここに書いてあるこれ、読みにくいんですけども「阳光(ようこう)」、つまり「太陽の光が危険だ」って書いてあるんですよ。

 変でしょ? 「太陽の光が危険」なはずがないんですよ。

 これ、どういう意味かと言うと「オゾン層が完全に破壊されている」ということですね。「オゾン層が完全に破壊されてちゃってるから、太陽の光ですら、人間に皮膚がんを起こす」ということなんです。紫外線が直に当たっちゃうからですね。そういう状態なんですよ。

 つまり、もう外の世界は鉄条網で覆う必要がない。全ての土地に放射能が蔓延している上に、オゾン層が完全に破壊され、外に出て太陽の光に当たるだけで紫外線で人間は皮膚がんを起こしてしまうから。そんな状況の中なんだという、絶望的な状況を描いているわけですね。

 これを見てください。

 これも、僕、見ている最中にビックリしたんですけど。トラックが外へ出た瞬間……これ、まだ地下都市の中ですよ? 道路の上に放射能注意のマークが描いてあるんですよ。

 どういう意味かと言うと「地下都市の中ですら安全じゃない」ということなんですね。あの地下都市の中でも「ビルの中の奥まったところだけが安全」なのであって、地下都市の中を走っているだけでも、ラジエーションマーク、もう外には放射能が蔓延しているんですね。

 だから「人類はドームの中へ逃げて、その中で平和に暮らしている」のではなく、あのドームの中でもすでに放射能が蔓延していて、人間が住めるところはどんどん狭くなっているんですね。

 その証拠の画像もあります。これを見てください。

 「夢の斜面見上げて~♪」という、トラックがロケット噴射して空を飛ぶシーンなんですけど。この時に画面の端に見えるドーム内の道路は、さっきまでトラックが走ってた道路と違って、全て破棄されているんですね。自動車が全て乗り捨てられていて、周りに苔みたいなものがいっぱい生えているんです。つまり、この道路は全て捨てられてるんですよ。

 空を飛んでいる自動車の下に高速道路があるんですけど、その高速道路には、よく見ると、捨てられた自動車の残骸がどこまでもどこまでも続いていて、その周りには苔みたいなものが生えている。つまり、「やっぱりこの都市は安全でない」ということなんですね。ドーム都市全体にも死が迫っている。

 このトラックは今、空を飛んでいて上昇しているから、この後に飛び込む建物というのは、ドームの中でもかなり上層の建物なんですよ。で、そんな上層の建物に飛び込むと、周りの窓が全部割れてるんですね。木があるなと思ったら、やっぱり苔みたいなものが生えて伸びているんですよ。

 つまり、この地下都市は、上の方の階に行くと、もう窓が割れっぱなしになっていて、放射能が入り放題になっている。でも、まだ人が住んでいる。

 上の方へ行けば行くほど、地面に近くて危険なんですね。なので、おそらく金持ちは地下の深い場所に住んでいるんですよ。で、貧乏人とか仕事がないやつらは、ドーム都市の地上に近いところに住まわされているんです。

 そこは、もう窓も割れて放射能が入り放題になっている。それでも、みんな生きなきゃいけないから、子供のために金を稼いで、ちょっとでも長生きできるように健康的なものを買っている。

 「ここで暮らす人達は、そんな生活をしている」ということを、宮崎駿は、割れっぱなしの窓や、下に放棄された車の山があるような、放射能でいっぱいのところに、放射能マークのついた車が飛び込むことで描いてるんです。

 とんでもないアニメ作っているんですよね、宮崎駿。

 つまり、『ナウシカ』の世界観を1つにまとめていると、僕は思うんです。

 『ナウシカ』の中では腐海というのを描いてて、そこから胞子が出てきて、周囲の土地ではすでに人間が住めなくなって、トルメキアとかペジテの人たちというのは、そんな腐海の菌に当たらないようにドームの中で生活している。風の谷の人たちは、腐海とともに生きることを選んだ、というふうに、すごい例え話として描いているんですけど。

 『ナウシカ』の連載が終わった瞬間に、宮崎駿は全力で「俺が例え話の中で描いたのはこういうことだっ!」というふうに、ドカーンと見せてくるわけですよ。

 この辺、やっぱりすごいなと思うんですけど。

 さっき「3人が地下都市から脱出したら、後ろに変な建物が見える」って言ったんですけど。

 この変な建物というのは、もうおわかりの通り、アメリカで、かつて史上最悪の原子力事故と言われたスリーマイルアイランド原子力発電所の排熱塔なんですよ。

(パネルを見せる)

画像36

【画像】スリーマイルアイランド 東京新聞 2019年4月7日 朝刊

 これが何本か建っているんですけど。これって、アメリカ型原子炉なんですね。つまり、このアニメには、アメリカ型の原子炉とソ連型の原子炉の両方が出てくるんです。

 この2人がドーム都市から逃げ出すと、後ろに原子炉の塔がいっぱいある。これって何かと言うと「ソ連型の原子炉というのが事故を起こして、地上に人が住めなくなっている。じゃあ、彼らの暮らすドーム都市はどんなものかと言うと、彼らの都市もやっぱり原子力で電気を作っていた」と。

 「彼ら自身も、残ったアメリカ型の原子炉で生きていたんだ」というのが、この排熱塔のカットでわかるわけですね。

 本当にね、けっこうブラックな話をやっているんですよね。

 で、最後に少女が、真っ暗な空に飛んで行く寸前に、後ろにビルが見えるんですけど、よく見ると、他に石棺が2つも見えるんですよね。

 石棺が2つ見えて、その向こうには、廃墟となった新宿のビルが崩れているんです。

 実は、チャゲ&アスカが飲んでいるシーンも、絵コンテを見ると「高円寺の居酒屋」って描いてあるんですけど(笑)。

 つまり、あれって日本の、それも東京の話なんですよ。東京の周りにあった原子炉が、全部爆発して、事故を起こして、人が住めなくなったので、地下都市に住むことになった。そんな地下都市を逃げ出すと、その向こうには廃墟となった新宿のビル群があって、その後ろには、やっぱり事故を起こした原発がいっぱい並んでいるという、とんでもない話で。

 まあ、本当はね、宮崎駿がやる気になったら、この映像が流されるコンサート会場をそのまま舞台にしてたと思うんですけど。そこまではやらなかったんですけどね。

・・・

 もう少しだけやらせてください。あと5分くらいで終わります。

 じゃあ、なんで、このお話の主人公のチャゲ&アスカは、こんな放射能にまみれた危険な世界に女の子を放すのかと言うと。やっぱり、ここに秘密があるんですよね。

 新興宗教のビルから助け出された女の子は、密封されてるじゃないですか。放射能防護服を着た人がこの女の子を密封しているということは「この女の子自体が放射能を持っている」ということなんですよ。まあ、ゴジラのような生物なわけですね。

 さらに、この後、女の子を乗せて飛んで行く飛行機にも、こういう放射能マークが描かれている。

 つまり「この女の子自体が放射能にまみれて生きていて、生きているだけで放射能を撒き散らすような生き物だ」と描いてあるんですね。「生きているだけで周囲に放射能を吐き散らすような、ゴジラのような生き物だ」というふうに描かれている。

 なので、このアニメの最後「そして僕らは~♪」と終わるシーンでは、そして僕らはどうなったのかと言うと。

 もう、死んじゃうわけですよね。

 だって、外へ出るだけで即死するような、放射能にまみれた世界に行っちゃったわけだから。

 この女の子は放射能のあるところでも生きていけるんですよ。逆に言えば放射能がないと生きていけないような生物でしょう。でも、チャゲとアスカは普通の人間ですから、そんなところにオープンカーで行っちゃったら、その先に待つ運命は死しかないんですよね。

 だから、カメラがどんどんロングになっていく時に、この自動車は道から外れて停まってしまうんです。これは「この2人の旅はここで終わる」という暗示なんですね。

 もし、そうでなかったら「女の子はどこまでも飛んでいって、チャゲ&アスカの乗った車も消えていく」というエンディングにするはず。映像作家だったら、絶対にそうするはずなんですよね。

 見ている人間に誤解を与えないために。「2人は車で逃げて、ひょっとしたらどこか別の街へ行くかもしれない。でも女の子は空へ空へ消えて行ったんだよ」という見せ方が、ハッピーエンドの見せ方なんですよ。

 でも、2人の車は停まってしまう。それも、道を外れたところで、なんか不思議な感じで停まっちゃっている。これは「この2人は、たぶん肺から血を吐いて、その場で即死している」という意味だと思います。

 こういう「天使は雲の上へ行けて、この2人や、残りの人類は雲の下で死んで行くんだ」というお話をやっているんですけど。

 では、そもそも、じゃあなんでチャゲ&アスカは警察に追われているのか? 女の子を助けて逃げ出した時、何十機ものヘリコプターみたいなパトカーに追われてましたよね?

 なぜ、こんなにも追われているのかと言うと、彼らは女の子を取り戻したいからですね。別に、チャゲ&アスカを捕まえたいわけではなくて、女の子を取り戻したい。

 取り戻したい理由は、「あの女の子の生命の秘密を知りたいから」ですよね。「放射能の中でなぜ生きられるのか?」というのを、解剖してまで秘密を知りたいんだと思います。

 この女の子って、翼を持った生き物だから、「天使だ」という解釈もあるんですけども。この後、詳しく説明しますけども、そんなわけないんですよね。

 あの女の子は、『風の谷のナウシカ』の原作版に出てくる人工生命との繋がりで登場させているんです。というか、この話全体が、実は『ナウシカ』の前日譚なんですね。

 『風の谷のナウシカ』というのは、火の七日間戦争という終末戦争によって、歴史的な文章とか公式記録みたいなものが全て消失して、その後に、人々が言い伝えの中で生きている世界なんですけど。

 本当は、どんなことがあったのかと言うと、この世界があったんですよ。『ナウシカ』の前にはこの世界があって、女の子が1人、逃げて行った。その女の子には翼が生えていた。

 そういう話が、歪んで歪んで伝わった結果、風の谷の不思議な伝説になった。こういうふうに考えると、わりと辻褄が合うんです。

 宮崎駿は、腐海とか巨神兵というのを全て例え話として出していて、「では、本当はどんなことがあったのか?」というのを、『ナウシカ』の連載が終わった後で、このアニメの中でちょっと描いているというような感じだと思います。

 つまり、あの女の子自体が、わりとこういう存在なわけですね。

(パネルを見せる 『風の谷のナウシカ』より)

画像37

【画像】『ナウシカ』のタペストリー © 1984 Studio Ghibli・H

 「人々がドーム都市の中でバタバタと死んで行ったんだけど、その外には救いがある」というような。このタペストリーは、トルメキアやペジテみたいな地下都市を描いたように思われているんですけど。

 一応、ここで悪意その2の「放射能」というのを終わります。

『On Your Mark』解説:「女の子に翼が生えてくる」という悪意

 これで、悪意その1「残酷描写」、悪意その2「放射能」という話が終わったので、ここから本題の悪意その3「翼の少女」に入ります。

 ここも無料なので、もうちょっとだけ我慢して聞いてください。すみません、これをきちんとやらないと、その次のレベル3に行けないんですよ。

 レベル3は、この話をもう一度、全部ひっくり返しますから、もうちょっと待っててください。

 では、悪意その3、翼を持つ少女です。

 さっき、3人が車に乗ったままガーッと落ちている時に、僕は「この少女はなぜか羽ばたかない」と言いました。なぜ、この女の子は羽ばたかないのか?

(パネルを見せる)

画像38

【画像】落ちていく3人 © 1995 Studio Ghibli

 この女の子を、一生懸命アスカが外に出して飛ばそうとする。「飛べ、飛べ!」と、2人は説得するんですけども、どんなに説得しても彼女は飛ばずに、一緒に落ちていって死んでしまうんですよね。

 これなぜかと言うと、そもそも、この女の子は飛べないんですよ。飛べない。実は、一度も「飛ぶ」とは描いていないんですよ。彼女が飛ぶのは、チャゲとアスカが夢想していたシーンの中だけなんですね。

 チャゲとアスカが夢想していたシーンには、空を飛ぶ女の子のインサートカットがあったから、あそこで僕らも「飛ぶんだ」って思っちゃうんですけど、そうじゃないんですよ。

 そもそも、彼女にはそんな筋肉がついてないんですよ。

 あのね、思い出してほしいんですけど、『ハウルの動く城』で魔法使いのハウルはちゃんと鳥に変身して飛ぶんですけど、その時には鳥の筋肉がついてるんですね。巨大な胸筋とか、肩甲骨の辺りにでっかい筋肉がついているから、あれは飛べるんですよ。

 宮崎駿って、メカとか飛ぶものに関しては異常にこだわる人間だから、もしあの女の子が翼で飛べる生物だったら、肩の辺りに、ものすごいデカい筋肉を描いているはずなんですね。でも、その辺は一切描かないままなんですよ。

 なので、僕はこの女の子は、実は飛べない生物だと思っています。

 なぜなら、冒頭で、この女の子を見せる時に、肩に一切、筋肉をつけてないんですね。

 翼だけがついてる生物なんですよ。飛行機マニアの宮崎駿ですから、飛ばせる時には必ずリアリティをもって筋肉をつけるはずだと僕は思うんです。

 とは言え、これだけでは、ちょっと理由としては弱いと思います。これだけでは、まあ「岡田斗司夫の思い込みだ」と。「宮崎駿だって、別にこういう女の子を描くかもしれない」ということがあるかもわからない。

 なので、もうちょっと別の方向から説明します。

 チャゲアスは「この女の子は飛べる」という夢を見て、その夢に賭けて助け出したんですよ。

 しかし、彼女は所詮は遺伝子操作、または放射能による身体の異常で、見せかけの翼があるだけの生物なんですね。

 だから、彼女は落ちて行く時に、一度も羽ばたこうとしないんです。本当に助かりたいんだったら、「羽ばたく」とか、「翼を広げる」とかをしてもいいんですけど、そんなことをやっても翼がべキッと折れるだけ。飛ぶなんていう能力を彼女は持ってないんですね。

 自由と解放を求めるチャゲアスは、そのシンボルとして、天使を助け出すんですけど、彼女は天使ではなくて、ただの遺伝子改造された人工生物に過ぎないんです。

 うーんと、もうちょっと説明しようかな。

 これね、翼がないんですよ、この女の子。

 これは、最初に2人が空想するシーンなんですけど。このシーンで、宮崎駿はわざと翼を描いてないんです。

 その後、このシーンになるんですけど。無料ではここまで言うつもりなかったんですけどね。

(パネルを見せる)

画像39

【画像】翼が生えてくる女の子 © 1995 Studio Ghibli

 翼のない女の子から、徐々に翼が生えてくるシーンが、ちゃんとあるんですね。立ち上がる時には翼がないんです。でも、いつの間にか背中に翼が生えてくる。

 この「翼がない女の子にいつの間にか翼が生えてくる」というシーンをわざわざ描くところが、今回のハヤオさんの意地悪なところなんですね。

 夢を見ちゃったんですよ、この2人は。自由と解放を求めるあまり、そのシンボルとしての天使を助け出すんですけど、しかし、彼女は本当は天使なんかではなく、ただの遺伝子改造されたか弱い女の子なんですよ。

 そんな女の子と共に奈落に落ちて行く時に、チャゲアスは自分の願望を投影して、「ほら、飛んで!」と励ますんですけど、少女は飛べずに、一緒に死んでいくことしか出来ないんですね。

 革命とか社会運動で、誰かがシンボルに祭り上げられることがあるじゃないですか。マーチン・ルーサー・キングもそうですし、ジャンヌ・ダルクもそうなんですよ。

 でも、そういう人たちは神ではなくて、ただの人間。そして、そうやってシンボルに祭り上げられた人というのは、だいたい不幸な死に方をするんですね。

 これが、レベル2で描いている、このアニメの現実なんです。

 じゃあなぜ、この女の子が、曲の後半、3回目のリフレイン以降に空を飛べるようになったのか?

 そもそも、なんで3人の乗ったトラックは、ロケット噴射して飛んだのか?

 というか、さっき放射能の時に話した「『ナウシカ』の言い伝え」と、今話した「最後のハッピーエンドは全て妄想なんだよ」というのは、矛盾するような気がしますよね?

 ところがね、これが矛盾しない構造になっているんですよ。

 レベル3では、「なぜ、こんな矛盾しているような話を宮崎駿は描いたのかと言うと、こういう構造になっているからだ」というのを説明します。

 さっきも言った通り、この『On Your Mark』の話はレベル6まである上に、1つ説明する毎に、前のレベルをひっくり返すような話になるんだけども、頑張ってついてきてください。

参考文献

- 宮崎駿『スタジオジブリ絵コンテ全集10 耳をすませば On Your Mark』スタジオジブリ、2001年

- 宮崎駿『出発点〔1979〜1996〕』スタジオジブリ、1996年

- 鈴木敏夫『天才の思考 高畑勲と宮崎駿』文藝春秋、2019年

- 宮崎駿『もののけ姫』スタジオジブリ、1993年

- 『アニメージュ』vol.206 1995年8月号 徳間書店

- 『スタジオジブリ作品関連資料集Ⅴ』ジブリ・ジ・アート・シリーズ、スタジオジブリ、1997年

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