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テクノロジーで新たな時代を創るスピークバディ。リーン・スタートアップに欠かせない「複業人材」との協業

AI英会話アプリ「スピークバディ」の企画・開発や、オンライン英語コーチング「スピークバディ パーソナルコーチング」の企画・運営を行う株式会社スピークバディは、シード・アーリー期から複業人材と協業し、AIをはじめとするテクノロジーを活用した英会話学習の領域で業界や事業を推進してきました。今回は株式会社スピークバディで取締役COOを務める山野 翔太さんに、スピークバディが複業人材との協業を始めた背景や、彼らにどのようなスキルや人柄を求めているのか、また、どのように優秀な人材を獲得しているのかを伺いました。


「正社員を採用するほどではないが、重要な役割を担える人材がほしい」を実現する複業人材

― スピークバディの事業概要を教えてください。

スピークバディはいつでもどこでもリアルな英会話を気軽に学習できる「AI英会話アプリ」を開発しています。従来の英会話サービスでは事前に予約する必要があるため当日に時間が合わなくなってしまう方や、忙しくて時間が取れない方、「英語を話せるようになりたいけれど、外国の先生と話すのは恥ずかしい」という方が多くいます。スピークバディでは音声認識や生成AI、デジタル音声、機械学習などの技術を活用しており、ユーザーは感情豊かなAIキャラクター(バディ)と対話しながら英会話に欠かせない発音やフレーズ、単語などを学ぶことができます。App Storeの教育ランキングで常に上位に位置しているほか、2023年11月には累計ご利用者数で300万人を突破し、法人への導入実績も100社以上にのぼります。

― 山野さんの自己紹介をお願いします。

大学では物理学者を目指して物理を専攻していましたが、途中から法律学(国際法)に興味を抱き、学部卒業後、修士+博士・研究員で5〜6年法律を研究していました。ちょうどその頃に友人のベンチャーを何社か並行して手伝い、開発系やコンサル系の業務を経験しました。スピークバディには2018年から業務委託として関わっていくうちに、ユーザーの課題を解決するための新たなサービスを開発する面白さを実感し、2019年にフルタイムとしてCOOに就任し、現在(2024年1月)は取締役を務めています。プライベートでは最近、飼っている猫がお腹の上に乗ってくるので夜は一緒に寝ています。

― 現在、スピークバディの事業には何名の方が携わっていらっしゃいますか?

正社員は40名、業務委託が10〜20名、コーチが70名です。正社員には開発メンバーが多く、業務委託の方にはビジネス職を中心に推進していただいています。

― 山野さんが参画した当時のスピークバディについてお聞かせください。

当時はシード、アーリーステージで、AI英会話アプリの開発を進めながら新規プロジェクトとしてパーソナルコーチング事業を立ち上げていました。私はそのコーチング事業やHR、事業開発、マーケティング、法人営業などのビジネス全般を担当しました。マネージャークラスの方々に入社していただいて、各チームやセグメントで業務を引き継いだ後は会社全体の管掌を行っています。

― スピークバディが複業人材との協業を始めた背景を教えてください。

スピークバディでは初期から経理や財務、マーケティングなどで1人月は要らないものの、ビジネス職の重要な役割でプロフェッショナルの方にお手伝いいただいています。会社が必要とする領域で優秀な人材にご協力いただこうと考えた時、まずは正社員の採用よりも業務委託との契約を行うことが多いですね。そもそもスピークバディには、事業や業務内容に共感していただけるのであれば、国籍や雇用形態に囚われることなく、それを遂行するスキル・能力のある方に依頼したいという考えがあります。

― 複業人材との協業に向け、採用活動をどのように行っていらっしゃいますか?

複業人材も正社員も、HRや経営陣と「こういう方と働きたいですね」とニーズや条件を話し合い、複業人材を必要としているチームがご本人とじかに連携しています。複業人材が正社員ほどの即答や緊急案件への対応ができないことを踏まえ、いかに複業人材をアサインするのかを設計しています。

もとよりスタートアップ自体がジョブ型雇用を活用し、各ポジションで実力を発揮する人材の集合体なので、複業人材とは馴染みがいいと考えています。大企業など新卒を一括採用し、会社・組織に相応しい人材を育成すると組織の中の人、外の人といった概念が生まれますが、事業を加速・拡大させるためにさまざまな人材を集める組織では、その人材が新卒、中途、複業かは関係ありませんね。

スタートアップで活躍する複業人材の共通点は「自律性」と「専門性」が高いこと

― スピークバディにはどのような複業人材がいらっしゃいますか?

他の企業で特定の分野で専門性を磨いてきた方や、ビジネス職で事業の中枢を担っている方が多いです。短い稼働時間でプロジェクトの要を担っていただいていますが、皆さんは自発的に動いていて、途中でボールをこぼすことなくチームメンバーと連携しています。

株式会社スピークバディの皆さん

― 複業人材の皆さんはスピークバディでどのような成果をあげていますか?

直近では、ATOMica(読み、アトミカ)を介してご参画いただいている方が経営企画や事業の数値管理で活躍しています。これまでは私がそれらを抱えて事業拡大に伴う経営管理へリソースを割けずに悩んでいたところ、全て引き受けてくださったので助かっています。過去には、スピークバディのブランディングを強化するプロジェクトを牽引してくださった方もいました。

また、複業人材の業務範囲が新規事業や資金調達、人事・採用に広がり、正社員として必要になったタイミングに改めて打診することもあります。今後も、事業の成長に伴い「正社員1人を採用するほどではないが、重要なポジションで人材を募集したい」という時は複業として担っていただける方に声を掛けるだろうと予想しています。

― スピークバディは複業人材にミッション・ビジョン・バリュー(以下、MVV)の理解をどこまで求めていますか?

「手伝ってほしい」「手伝いたい」とお互いの意思が合致する前提にはMVVへの共感・理解があると考えています。もちろん、正社員ほどは求めませんが、業務を進めていく上で齟齬が生じないように、少なくともバリュー(行動指針)の認識は握り合っておきたいですね。

― 山野さんの考える、複業人材に欠かせない条件は何でしょうか。

自律性のある方です。正社員と比べると複業人材はマネジメントしづらいので、物事を進める際に自分で計画を立て、自分で考えながら目的達成のために行動できる方と働きたいですね。また、スピークバディに限らず「この領域はできます」という専門性を持っている方だと、お互いに参画する理由が明確なのでマッチしやすいです。「この方には将来正社員で入社していただきたいけれど、現時点では厳しいからまずは複業から始めていただこう」といった「ヒトベース」でお誘いすることもありますが、その場合はメンバーシップ型とジョブ型のどちらとマッチさせるのかは事前にすり合わせる必要があります。

― 複業人材の人間性を見極めるために、面接ではどのようにフィルタリングをしていらっしゃいますか?

これは一番難しいですね。面接は複業で1〜2回、正社員で3回設けていますが、どちらも一緒に仕事をしてみないと分からないことが沢山あります。その点、複業人材は協業するハードルがそこまで高くないので「良さそうだ」と感じたら積極的にオファーしています。その際、あらかじめ採用要件を定義しておくことも大事です。会社がやりたいことと、それができる方にお願いすることが一致していないとお互いに何も達成できなくなってしまいます。また、見ず知らずの方からご応募いただくよりも、人伝にご紹介いただくとある程度フィルタリングされているので、スピークバディとの相性がいい方にお越しいただけることが多いですね。

「なぜ、採用領域ではリーンじゃないのか?」スタートアップが複業人材を巻き込むメリット

― 2024年1月にリリースしたATOMicaの新サービス「おためし複業」は、複業人材を検討している企業にどのようなメリットがあるとお考えですか?

採用候補者に対する選考コストが下がると思います。以前、私が住んでいたシェアハウスに、パートタイムとしてスピークバディの取締役を務めていた知人がいました。彼の紹介によって私はスピークバディでさまざまな業務を経験し、それをきっかけに別のベンチャーからもマーケティングやPRなどに協力してほしいとご依頼いただきました。その知人が所属していた大学のサークルからも学生インターンが手伝いに来ていましたね。

つまり、おためし複業やシェアハウス、サークルに言えることは、こういった「コミュニティ」で成功事例が生まれると、縦横の人脈による繋がりが続いていきます。レバレッジをかけて事業を成長させたい時、コミュニティをフックに複業人材に参加していただくとリスクやコストが下がりますし、彼らのパフォーマンスにも期待できると考えています。

― 自分や会社との相性がいい方が集まっているコミュニティで協業する人材を発掘すると、業務上でのミスマッチが起こりづらいですよね。

シェアハウスやサークルには大学やベンチャーなど、自分と似た界隈の方が所属しているので、それはあると思います。また、人材募集では採用要件を提示していますが、結局は「ヒト」だという気もしています。スピークバディでは正社員を探している時は転職エージェントを利用していますが、「この方だったら大丈夫」と信頼を寄せるエージェントがいます。コミュニティも同様で、知人に誘われて入ってみたのは「この人がいるから大丈夫」と感じたからです。キーパーソンの人間性や見極め力、同じ界隈に属する仲間に抱く「ふわっとした安心感」が意思決定を左右するのかもしれません。

― 複業人材と協業したいと考えている企業に向けて、メッセージをお願いします。

「リーン・スタートアップ」という書籍があるように、スタートアップでは小さく始めて大きく横展開することが王道です。正社員にこだわって採用する方に聞きたいのは「なぜ、採用ではリーンではないんですか?」。ヒトの領域でも複業人材を巻き込んでリーンで回していくと、事業の可能性をより広げられるのではないかと考えています。大企業でキャリアを積んでいる方に小さなスタートアップへ複業人材としてご参画いただいたら、彼らのスキル・能力だけでなく、異なった視点や知見も頂けるのではないでしょうか。そこまでではなかったとしても、お互いに「やってみよう」と意思を握り合えたら一緒に進めていけばいい。協業していくうちにお互いの解像度が上がり、結果的に正社員採用に繋がるパターンもあり得ると思います。その点からも、採用でもリーンを適用することはお勧めしたいです。

― 山野さん、お話をお聞かせいただき、ありがとうございました。

(取材・文:佐野 桃木)

※ 複業人材の採用についてご質問やご希望のある企業の方はこちらよりお問い合わせください。
「おためし複業」事務局: otameshi_fukugyou@atomica.jp