見出し画像

傑作「ワンダーエッグ・プライオリティ」の敗因


(画像は特別編決定PVより)

こんばんわ。深夜区トウカと申します。
今回は、「傑作『ワンダーエッグ・プライオリティ』の敗因」というタイトルで記事を書いてみます。
特性上ネタバレがありますのでご注意ください。
(以下、ワンダーエッグ・プライオリティはワンエグと表記)

まず、私はこの作品を傑作と断定します。
断定するのは単純に自分がこの作品に心動かさたからです。
難しいシナリオ的意義や画面のクオリティなどを語らなくても心が動いたか否かは分かります。

そして、この記事ではこの作品が傑作に当たるかの議論はせず、傑作であるとの断定を前提条件とし敗因を探っていきます。

敗因と一口に言っても、失敗には
「興行的失敗」「評価的失敗」
の二種があるように思えますが、この作品はどちをとっても成功を収めたとは言い難いように思えます。

…というのは私の所見に過ぎません。
まずは、ワンエグという作品は本当に失敗したのかを検証してみます。


興行的失敗の検証


検証を行うため、客観的に興行を図ることのできる指標として「dアニメストア2021年冬アニメの再生数順ランキング」を参照してみます。

上位には良く知るタイトルがランクイン


上位に「転スラ二期」「無職転生」「蜘蛛ですが、なにか」などが軒を連ねる中、「ワンエグ」の順位は23位でした。

順位が書いていないので分かりづらいですが、上から数えています


これは再生回数が表示されないランキングなので絶対評価ではなく相対評価になってしまいますが、この結果は興行的に成功しているとは言い難いかと思います。

評価的失敗の検証


次に評価的失敗、即ち評判ですが、これも芳しいとは言えないように感じます。

…が、それを客観的に検証する方法がパッと思いつきません。ツイートを幾つか引っ張ってくるという手もありますが、ここに載せられる範囲でサンプルを抽出するというのは客観性に欠けます。

そこで、現代らしいアプローチを取ってみることにしました。
即ち、「pixivにおける投稿数」を調べてみます。
これが客観的な評価になるかは疑問ですが、美少女が登場するアニメ、ということと人気に応じてファンアートが増えるという特性からある程度は参考になると考えます。

ワンダーエッグ・プライオリティのタグ付けがされた作品は合計1,132作品でした。

上二つはアイ…ではなくAIイラスト


これは少なくないと言えます。例えば先ほど再生順で3位に入っていた「蜘蛛ですが、何か?」は1,334作品です。
ただ、そちらの作品とは訳が違い、こちらは美少女キャラクターが主体となっている作品。これ一つを持って良好な評価と断言できるかは微妙なところです。

そこで、第二のソースを用意します。二つの視点によって客観性を高めるという訳です。
第二のソースとして映像作品レビューサイト「Filmarks」を参照し、「2021年冬放送・配信アニメ」から観た数2,000件以上のアニメをサンプリング(ワンエグ:2,080件/星3.7)。
16作品から平均星数と順位をまとめました(当初は偏差値を求めようと思いましたが面倒なので辞めたことをここに記します、ごめんなさい)。

その結果がこちら。

縦に長い!
アニメ番号はソート順(観た2,000件未満未カウント)

平均はだいたい「4」
「3.7」のスコアを獲得したワンエグは16位中15位でした。これはあまり良くない結果だということになりそうです。

二つの観点から分析するに、ワンエグという作品は
「大失敗ではないものの成功とは呼べない評価」
というところに落ち着くのではないでしゃうか。

考察:敗因①「特別編放送遅れ」

敗因その①として挙げたいのは「特別編放送が本編に比べて遅かったこと」です。便宜上「遅れ」としましたが別に予定から逸脱したわけではないのでディレイがあったという表現の方が適切かもしれません。

そういった事情を省みずに遅れた表現したのはやはりリアルタイムで追いかけている人間からしたら遅れたように感じられるからです。
第12話の放送が2021年3月31日特別編の放送は同年6月29日。ここまで期間が空いていると最終話である特別編を見る前に心が離れた、と言われても不思議ではありません。

さらに言えば、12話のオチがまずかったように思えます。あれは特別編があると思えば作劇の一部だなと思えますが、それだけで見ると尺の配分を大幅にミスって着地してしまったようにも見える。

事実、一番上に「打ち切り」が来ます。1シーズンのテレビアニメで打ち切りはあんまり聞いたことないですが…

これに関しては個人的にかなり悔しく思っています。恐らくですが、特別編を見ずそのまま終わりだと認識して離れてしまった人も少なくないのではないでしょうか。
結局のところ評価が変わるかは分かりませんが、それはそれとして作品全体をきちんと見てもらえていないというのは悔しいところです。

ただ、これだけでワンエグが失敗したというのはちょっと言い過ぎかと思います。きちんと特別編は放送されたわけですから。
考察は次に進みます。

考察:敗因②「アネモネリア解散」

敗因その②は特別編にて「アネモネリアが解散してしまう展開」についてです。
私は失敗検証のあたりでこの作品を表現するのに何回か「美少女(アニメ)」というワードを使いましたが、美少女アニメとして見た場合、この展開は衝撃的です。
というか、心が抉られる展開です。

しかもその説明の仕方がアイがモノローグで「自然消滅しちゃった」と言うだけというのもなかなか骨身にこたえます。
容赦がないと言うか、メタ的なことを言うならキャラ人気・商売を気にしない展開というか。
とにかく、これは美少女アニメファンにとって免疫のないものです。この説はある程度の信憑性があるように思えます。

がしかし、この説には一つ問題があります。それは、この作品は「ジャンル:サイコホラー」とされていること。
つまり、テレビシリーズリアタイ組はともかくとしてこの作品を後追いする人間は「サイコホラー的作品なんだなあ」と視聴するわけです。

となると、この作品の視聴者は美少女アニメファンに限定されません。
ということで、これだけでは失敗の説明が付かないのです。

考察:敗因③「我々の理解不足」

ラスト、敗因その③は「我々の作品に対する理解が不足していた」という説です。私はこれこそがワンエグの失敗、ひいては現在の過小評価に繋がっているのではないかと思います。

よく考えれば特別編の放送遅れは当時テレビシリーズを視聴していた人にとっては大きな問題かもしれませんが、サブスクで一気に見る人にとってはそこまで問題にならないこと。
それでもなお配信後から現在までの全てのレビューを反映しているのに評価が高くないというのは一気見する場合も引っかかる部分がある、ということです。
それは一体なんでしょうか?

まず、ワンエグというのは他でもない主人公・アイの物語です。

孤独な少女が友人を手に入れ、それを失ってアカ裏アカの世界に迷い込む。
そこでねいる、リカ、桃恵という友人ができる。
エッグ世界での活躍を通して出会いと別れを繰り返し、アイは成長していく。

その最たる例が12話です。
12話のエッグ世界に登場するのは自殺した平行世界のアイ。
酷く怯えた様子の平行世界アイを鼓舞し、自身が前に出て守る姿はアイの成長をそのまま表現しています。

つまり、ワンエグというのはアイ成長物語に違いないのです。

ですが、我々は11話で描かれたアカ裏アカの過去、フリルの存在、エッグ世界成立を観てワンエグという作品のことを

「アイがこの世界全ての問題をスカッと解決する物語」

だと誤認してしまいました。

これこそ、この作品とファンとの最大のミスマッチでしょう。というか、この認識はまだ通用していないように思います。
この記事を書くにあたっていくつかのレビューを覗いてみたのですが、やはり「良い作品だけど後半がネック」みたいなレビューが多かった。
ということはつまり、オチが上手く伝わっていないのではないのではないでしょうか。

特別編といえばねいるがクローンということが判明して闇堕ちしたりアネモネリアが自然消滅したりと色々ありましたが、それは全部アイの物語なお膳立てに過ぎないのだと思います。
この物語はワンエグの根本的な問題を解決する英雄譚でもなんでもなくて、友達と仲良くしたり自殺した子を救ったりする心根の優しい子がエッグという装置を通して偶然我々の視界に映った…ぐらいの解釈です。
おそらくはいつかその世界をも救う人物が現れるのでしょう。でも、その人物が主人公なわけではない。アイはフリルを倒したりしない。
やはり、ワンエグのストーリーは王道の勧善懲悪とは異なっていて、アイとその周辺を掘り下げるだけに留めたミニマムな物語なのです。

なんなら、その日常的仕草こそがこのアニメの真髄なのではないでしょうか。
エロスの戦士としてエッグ世界に行っているだけの少女たちがそれによってどう変化した日常を過ごすのか?
そんなif世界日常がこの作品の随所に盛り込まれています。一見すると大きな世界観の作品に見えますが、本当のところはそこが主題なのでは、と思うのです。

ここまで長々と敗因その③を書いてきましたが、これは要するに私が

「ここをこう解釈すればもっと物語が伝わるのに!」と思うポイント

に過ぎません。
なので納得してもらえるかは分かりませんが、私としては納得してくれる人が一人でもいたら良いな、というスタンスです。

あとがき

さて、ついにワンエグの記事を書いてしまいました。私にとって、「noteを始めたのにワンエグに触れていない」という事実は喉につっかえた小鼻のように厄介でどう対処して良いか分からないものでした。ただ、一度は書いておきたかった。それはもちろん、冒頭で言った通り、私がこのアニメを傑作だと思っているからです。
それに、個人的な思い入れもあります。私は2015年頃からアニメを見始め2017年まではそれを続けていました。ですが、2018年以降はそれがぱったりと途絶えていたのです。他の娯楽に関心が移ったということなのですが、さすがに今考えると全くアニメを見ていなかったあの期間は異常です。それはさておき、特に引っ張らず話すとそんな私のリアタイ復帰になったのがこの作品でした。忘れもしません、12話放送直前特番11話一挙放送のニコニコクルーズに乗ったあの日のこと。鮮烈な印象でした。当時から配信でも見れたと思いますが、確か自分を律して一気見のためクルーズを選択したのです。アニメ・ブランクの長さを考えたら好判断だったように思います。
ちなみにこの作品を勧めてくれたのはまだ駆け出しアニメオタクだった頃の「まがじん!」共同運営者・藤吉なかの氏。ワンエグ記事を何かの形で残そうと決意したのも彼がワンエグについて最高の記事を書いたから。私のアニメ人生には彼の影がついてまわります。

実に嬉しいことです。
声に出したいタイトル、「伏線回収至上主義、もうトサカに来たぜー!」。

さて、今回の記事はこの辺りで終わりにします。最近アニメの記事が書けていなかったので楽しかったです。

ここまでお読みいただきありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?