「未成年者が単身世帯として生活保護を受けられるか」について

「未成年者が単身世帯として生活保護を受けられるか」について書いてみました。

1 はじめに
 まず、「未成年者は単身で生活保護を受けられない」というような生活保護法の条文や厚労省の通知等はありません。
 むしろ、生活保護法2条は「すべて国民は、この法律の定める要件を満たす限り、この法律による保護(以下「保護」という。)を、無差別平等に受けることができる」という無差別平等原則を定めていて、生活保護基準を下回る資力しかなければ単身の未成年者に対しても生活保護を適用することになります。
 ただ、この場合に問題になりそうなこととしては(1)親からの扶養、(2)他法他施策の活用という法的な問題と、(3)物件を借りられるかどうかという事実上の問題があります。

2 親からの扶養について
 生活保護法4条2項は民法に定める扶養義務者による扶養は生活保護に「優先して」行われるとしています。この「優先して」というのは、扶養を受けようとすることが保護の要件だということではなく、実際に扶養としてお金などが渡された場合には支給される保護費から減額されるという意味です。
 その一方で、未成年者と親は生活保持義務関係にあり、親は強い扶養義務を負っていると考えられています。そのため、未成年者が単身で生活保護の申請に来た場合、福祉事務所としては親に対して扶養義務の履行可能性を重点的に調査することになります。
 ただ、未成年者が単身で生活保護を受けようとする場合は、親からの虐待を受けて家を出たようなケースが多いと思われます。この点、生活保護実施要領課長通知問第5の2は「③夫の暴力から逃れてきた母子、虐待等の経緯がある者等の当該扶養義務者に対し扶養を求めることにより明らかに要保護者の自立を阻害することになると認められる者」で明らかに扶養義務の履行が期待できない場合は、親に対する扶養照会を行わなくてもよいとしています。
http://665257b062be733.lolipop.jp/0303302.pdf

 なお扶養照会については厚生労働省の通知が改善されています。また、親族との関係から扶養照会をしてほしくない場合に、福祉事務所に対して扶養照会を行わないように求める申出書の書式が公開されているので活用してください。
https://tsukuroi.tokyo/2021/04/20/1551/

3 他法他施策の活用
 生活保護法4条1項は「利用し得る資産、能力その他あらゆるもの」を活用することを保護の要件としています。
 この点、生活保護実施要領局長通知第6では児童福祉法が活用すべきものの1つとして挙げられています。そのため、児童福祉法による保護を受けられる場合にはそれを受けるよう求められることになります。

4 住居の確保について
 実際上の問題としては、未成年者が自分の名義で部屋を借りることは難しいという点があります。未成年者は親権者(法定代理人)の同意が無ければ賃貸借契約を結ぶことができません。また、単身で住もうとする未成年者に部屋を貸そうとする賃貸人もほとんどいないでしょう。
 そのため、未成年者が生活保護を単身世帯として受けるのは、何らかの形で支援者から支援を受けて居住場所を確保しているケースだと思われます。その1つの例としては、各地に存在する子どもシェルターがあります。
http://www.wakaben.or.jp/column/10_nakagawa.html

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