生活保護(2)生活保護法63条に基づく費用返還請求権が免責されないこと(2019年3月5日ツイート)

生活保護法の改正により、生活保護法63条に基づく費用返還請求権が非免責債権になりました。 これによって、生活保護利用者の方の債務整理にも影響が生じると思います。 現時点では、非免責化前の債権かの見極めと、63条返還額を争うことが対策として考えられます。

生活保護法78条に基づく費用徴収債権は、平成25年改正で非免責化されていました。 平成30年6月1日の改正は、これに加えて63条についても非免責としています。 新設の生活保護法77条の2第2項が、63条債権を「国税徴収の例により」徴収できるとしており、租税債権と同じく非免責になります。

63条に当たる例としては、
①保有していた不動産の売却代金
②年金の遡求受給
③交通事故の賠償金や相続財産
④福祉事務所の過誤による過払い
など様々なものがあります。 ①から③のようにお金が残っている場合もあれば、④のように、分かった時には使ってしまっている場合もあります。

今後、債務整理事案で63条返還請求権がある場合は、いつの保護費の返還を求められているかが重要です(決定処分日ではありません)。 非免責化されるのは77条の2が施行された平成30年10月1日以降に支給された保護費の返還を求める部分です。 それ以前の保護費の返還債権は依然として免責になります。

また、福祉事務所の過誤による過支給の場合は、生活保護法施行規則22条の3の規定で非免責の対象とはなりません。 この辺りは下記の木村先生のブログに詳しく説明されていました。

http://kmrysyk.cocolog-nifty.com/lawyer/2018/10/post-64da.html

そして、63条返還自体を争うことも考えられます。 63条返還の場合、世帯の自立に役立つ費用分を「自立更生費」として返還額から控除できる場合があります。 そのことを教示せずになされた処分を取り消す判決や裁決がいくつもあります。 決定が出て3か月以内であれば審査請求で不服申立てができます。
なお、63条返還請求権の本質は不当利得返還請求権であり、これを非免責債権とすることは問題だと考えます。 日弁連も2018年5月2日に、天引きと非免責化に反対する意見書を出しています。

https://nichibenren.or.jp/library/ja/opinion/report/data/2018/opinion_180502.pdf

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