「シェアハウスなどで1つの部屋に複数人が生活している場合の生活保護費の算定」について(2023年1月8日追記あり)

「シェアハウスなどで1つの部屋に複数人が生活している場合の生活保護費の算定」について、以下のように検討をしました(特定の事案について何らかの結論を書いたのではなく、一般論として書いています)。
 
1 世帯の同一性について
生活保護費は数人が1つの世帯になると、スケールメリットを考えて額が調整されています。そのため単身世帯3軒の生活保護費と、3人世帯の生活保護費を比べると(その3人が同一の条件だとした場合)前者の方が高くなります。
では、数人が同じ部屋で暮らしている場合、世帯が同一か否かはどう判断されるのでしょうか。数人がいる場合に、それが同一の世帯とされるかどうかは、同一の住居に居住しているか(同一居住)だけではなく、生計を一にしているか(生計の同一性)という点が重要です。この点、生活保護手帳別冊問答集「第1 世帯の認定」では「次官通知は、同一居住、同一生計の者は原則として同一世帯と認定するとしているが、これは生計を一にしているか否かの認定が主として事実認定の問題であることから、比較的事実認定が容易な同一居住という目安をあわせて用いることとしたものである」とし、生計の同一性がより重要な要素であることを明らかにしています。
そして、これに続く文章では「このような目安としては、他に重要なものとして居住者相互の関係(親族関係の有無、濃密性等)があるが、判定が困難なケースについては、更に消費財及びサービスの共同購入・消費の共同、家事労働の分担、戸籍・住民基本台帳の記載事実等の事実関係の正確な把握に基づき、個々の事案に即して適正な世帯認定を行うことになる」としています。
そのため、シェアハウスなどで1つの部屋に数人が住んでいるとしてもそれだけで世帯が同一とされるのではなく、生計を同一にしているかどうかを考えることになります。
この点、居住者が一時的に避難して身を寄せているような場所だとすると、「居住者相互の関係」は希薄でしょう。また、運営者が利用者から利用料を徴収するような場合には、「消費財及びサービスの共同購入・消費の共同、家事労働の分担」なども無く、生計の同一は認めにくく、複数の単身世帯と認定される方向に働くように思われます。
 
2 住宅扶助支給額の算定
では1つの部屋に数人が住んでいる場合、支払われる住宅扶助(家賃相当額)の支給額についてはどう考えればよいでしょうか。
以前は1人1人が別の世帯と認定されれば、単身世帯の上限額までのそれぞれに住宅扶助を支給することができました。
ただ、仕切りの無い部屋に何人かを住ませるなどで居住環境が悪いのに、住宅扶助の満額に相当する家賃を支払わせて、施設を運営する事業者が多くの利益を得ているような事案があり問題になりました。
そこで、住宅扶助については2015年7月に制度が改正され、1人あたりの床面積が16㎡に満たない場合には住宅扶助の上限額が減額される仕組みが導入されました(下記のURLの「社会福祉住居施設及び生活保護受給者の日常生活支援のあり方に関する検討会(第1回資料)」の19~20ページに簡単な説明があります)。

https://www.mhlw.go.jp/content/12201000/000377963.pdf

 
なお、現在の床面積別の住宅扶助の上限額については下記URLの資料の7ページ以下に記載があり、例えば東京都の1級地であれば11~15㎡で48,000円、7~10㎡で43,000円 、6㎡未満で38,000円とされています(ただ、例外的に単身世帯の上限が適用される場合もあり、そのことは20ページにも見ることができます)。

http://kobekoubora.life.coocan.jp/2021juutakufujo.pdf

 【2023年1月3日追記】また、2015年4月14日付け「生活保護法による住宅扶助の認定について」では、数人が居室を共用している場合で生計が同一でないときには、それぞれを別世帯とした上で、世帯ごとの住宅扶助の合計額は1世帯分の基準額の範囲内とすること(例えば、共用する人数で除した額(例えば3人なら3等分にした額)で認定すること)としています。

【2023年1月8日追記】
その後、2020年8月24日付け「無料低額宿泊所等における住宅扶助の認定について」が作られ、2015年4月14日付け「生活保護法による住宅扶助の認定について」は廃止されました。「数人が居室を共用している場合で生計が同一でないとき」の住宅扶助の認定について、2つの通知について大きな違いはありません。
また生活保護手帳別冊問答集には問7-100-2「法的位置付けのない施設入所者の住宅扶助の認定について」があり、シェアハウスなどについても「居住の実態、賃貸借契約の内容等を踏まえ、基準額について居室を共有する人数で除した額などにより認定」することを明らかにしています。

3 世帯が同一でない場合の生活保護費の計算と施設利用料の関係
これまで述べてきたように、同一の部屋に住んでいても世帯が別とみなされる場合には、生活保護を受けているそれぞれの人物について、単身世帯として生活保護費(上記の住宅扶助だけではなく生活費分の生活扶助なども含むもの)が支払われます。
それらの人物の住む部屋が何らかの事業者によって運営されている場合は、利用料を支払うことになると思います。その場合、住宅扶助を支払うことのほか、それに加えて光熱水費分、さらに食事の提供などがあれば食費分の支払いも含めて利用料が徴収されるのが一般的と思います。

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