基礎自治体の分度は作れるか?「報徳記」の感想とあわせて。

こんにちは。
今回は二宮尊徳の「報徳記」を読み終わり、その感想を含めて投稿したいと思います。

二宮尊徳については、おそらくみなさん銅像や石造になっているので名前はご存じだと思います。私も名前と「薪を運びながらも本を読み、学ぶことがいかに大事か」みたいな認識くらいしかありませんでした。最近では「ながらスマホ」と同列に扱われ、危険だとか言われる状況に二宮尊徳はどうおもわれるのでしょうね(笑。
報徳記を読んでいきますと、銅像・石像の状況については数行で終わってしまうくらいの扱いで、実際の中身は農村の再生事業に尽力した偉人といえるような人物です。するっと読める内容ですが、私は導入本としてコチラを先に読んでいたので、より読みやすく、自分のウチに入ること大でした。

〇二宮尊徳の農村再生仕法

・至誠:まごころを尽くして仕えること
・勤労:怠惰を改め力を尽くすこと
・分度:収入に応じて支出を定めその範囲内で生活し、余剰を産み出すこと
・推譲:他人や公のために譲ること、社会への還元

尊徳は仕法の中で「分度」をとりわけ重要視していました。組織の再生、地域の再生において基礎となるものが分度であり、収入と支出の状況がわからなければ、再生への道は描けないということですね。
勝手なイメージとしてやはり近代以前は収支はどんぶり勘定でいたんだろうなと思っていました。しかし、過去の記録から収入状況を明らかにし、無駄な支出を削減し余剰金を産み出して、それを再投資して将来の礎を築くということを理論だけでなく実践されていたということに驚きました。個人の分度、家の分度、村の分度、そして藩の分度を定めることなく、再生はできないと説いています。

〇基礎自治体で分度は成立するのか?

現代の日本では、基本的にどこに住んでいたとしても、水や排水、医療(距離は別として)の環境は整っています。それは地域差に応じたシステムではなく、どんな過疎地域でも上水道や、場合によっては下水道まで整えている地域があります。はたしてそれは適切なのでしょうか?
また、介護に関しても人の親切心は尊いものですが、過剰な支援はむしろ健康を害しているのではないかと思う節もあります。また、かならず財源が必要となります。無限にお金が湧いてくるわけではないのです。

令和4年度の状況で、不交付団体(地方交付税が交付されない=基本的な自治体運営を地方税収入で賄っている団体)は、都道府県(47)では東京都のみ。市町村(全体1718)でも72とかなり限られています。つまり、地元からの税収入で運営できているところはほとんどありません。https://www.soumu.go.jp/main_content/000826808.pdf

地方交付税の中身は半分近くは東京都からの財源です。東京都に本社を置く会社が多く、その法人税が源泉であり、地方においてもそのフランチャイズが数多くあるので、ある意味東京都がお金を出し、東京都にお金が帰って行っている状況といえます。それであれば、地域内で循環するお金の総量が減り、地方税収が減っている状況も当然といえば当然ですね。

では、東京都以外はすべてダメなのかといえば必ずしもそうとは言えません。付加価値の高い産業が多いのが東京都であることは間違いないことではありますが、東京都に住む人たちの食料を同じ東京都で生産できるわけではないからです。また、東京都から生み出されるものやサービスを都民が全て受け止められるわけでもありません。

ようは、都市部には都市部の、地方には地方の、田舎には田舎のスタイルがあり、それに見合った生活を営む必要があるということですね。
一時、「身の丈に合った」という言葉が言葉狩りにあったこともありますが、これは本来正しくて、身の丈に合わない(収入に見合わない)支出は破滅しか待っていないからですね。

また、都会での生活を好む人もいれば、比較的人口密度にゆとりのある地域で生活したい人もいます。それも自分のライフステージにおいて変化はしていくものであるので、ステージ移行の準備のためにも分度により余剰を産み出していく必要があるんですね。

〇まとめ

いかがでしたでしょうか?
「報徳記」の内容については非常に読みやすくわかりやすいものです。むつかしいことはほとんど書いていません。ただ、実行できる人が少ない、もしくは知らないことが問題なのですね。ここは尊徳は心田開拓として荒れた心を開拓し、仁義礼智を養い育てることも重要視していました。分度を定めたとしても、人が動かねば地域の再生はかないません。逆に素晴らしい人がいても、分度がいい加減だといつまでたっても再生はできません。車の両輪、竹馬の左右のようにどちらも欠かせないものなのだと認識しました。
まずは収支を明らかに、支出をあらため、収入を増やす。本当にシンプルですが、自分でできることを始めていきたいなと思います。


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