見出し画像

「伝える」と「伝わる」の間に

建築・不動産という職業柄、建物の仕様決め、照明器具の配置、家具の選定&レイアウト、プロジェクトのプレゼン資料作成、ロゴ制作、イベントのフライヤー制作、Web制作、写真撮影など、ビジュアル要素を持った仕事に携わることが多く、このようなことにじっくり取り組むことが実は好きだったりする。

だいぶ昔の話になるが、あるときイベントのフライヤーをデザインしていた際に、レイアウトをどうまとめるか行き詰まっていた。そんな時、たまたま次のような記事に出会った。

思いが「伝わる」ためには、自分が作る側ではなく、見る側、あるいはモノの立場になってみるということが大切だと思います。例えば、活字を組むときに、活字の気持ちになってみる。組まれた文字の気持ちになってみる。印刷物なら、紙の気持ちになってみる。すると、自分に嫌な言葉が載るのは嫌だろうなと。大声や大げさは嫌だから、文字は小さい方がいいなと。こうして作る側ではなく、見る側、使われる側から考えてみると、気持ちが迷ったときでも判断がつくようになりました。自分がデザイナー、作り手であることを忘れた方が、やるべきこと、やらなくてもいいことがはっきりしてき た。当たり前のようですが、これはいい方法だと思うんです。(「"伝える"と"伝わる"の間に」より抜粋)

私の尊敬する、アートディレクター葛西薫さんの言葉である。これを読んだ時「うわぁ、これは面白い視点!」と感動したものだ。だって活字の気持ちになってみるって、もうそれは活字愛そのものではないか!?それくらい中に入り込んで調和を取ろうとする発想は、実社会ではある意味当たり前のことだったりするのが面白い。

そんな発想を持ってテキストや絵のレイアウトをデザインすると、思わず楽しくなってニヤニヤしてしまう。うわ、隣にこんなゴツいヤツ(ゴシック体)いたらやだな、もっと優しいしなやかなフォントに来てほしい、なんて妄想しながらレイアウトするのだ。

「伝わる」ためには見る側の気持ち、モノの気持ちになってみるというのはとても大事なこと。それを独特の視点で教えてくれたこの言葉は目から鱗だった。

少し話はそれるが、深夜に書いたラブレターを翌朝読み返したらとても恥ずかしい内容だった、というのはよく聞く笑い話。ロゴやフライヤーやプレゼン資料やらも往々にして夜遅くにテンション高めで仕上がることが多いので、それをそのまま完成とするのではなく、必ず一晩寝かしてから見返す、というのは常に心がけている。朝、冷静に見返したときに、Go!できるものは、きっといいものに違いない(と思い込んでいる)。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?