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テロワールとまちづくり

以前にワインに関する本を読んでいた時、ふと"テロワール"という面白い言葉と出会った。

テロワール(Terroir)とは、「土地」を意味するフランス語terreから派生した言葉である。もともとはワイン、コーヒー、茶などの品種における、生育地の地理、地勢、気候による特徴を指すフランス語である。同じ地域の農地は土壌、気候、地形、農業技術が共通するため、作物にその土地特有の性格を与える。

ワインやコーヒーなどの作物は、テロワール(土地の特徴)の影響を受け、その土地特有の性格を持つようになるわけだが、作物だけでなく、建物や町並み、そこに住む人々の暮らしなども同様にテロワールにより特徴づけられると考えられる。

例えば、暑い地域と寒い地域、地震の多い地域とそうでない地域、海・川のそばと山の上などでは、明らかに建築様式や町の作られ方は違うはずで、テロワールによる地域性があるというのは必然である。

まだ物流やインターネットなどのインフラが整うずっと昔は、その地域特有の素材や道具、技術を用いて、その地域の地理や気候に合わせた構造で、暮らしている人々にとって必要な形態の建物、町並みが形成されてきた。それが故に各地域には多かれ少なかれ"個性"が生まれることになり、その個性に寄り添うように人が集まった。人は自分たちの属しているテロワールとは一味違ったものを見てみたい、感じたい、味わいたいという好奇心から旅をするのだと思う。

しかしながら田舎に行くと、主要幹線道路沿いに大型スーパーやチェーン店、パチンコ屋などが並んでいる光景を至るところで散見される。全くと言っていいほどテロワールは無視され、効率性・機能性を重視した安易で滑稽なスタイルが悲しくなるくらいにあちこちでコピー&ペーストされている。まるでデジャビュのように。

愛着の湧くまちづくりをしていくためには、土地や街の持つ必然性、あるいはその地域の風土・歴史というものをもっともっと意識していくべきだと切に思う。


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