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ババヤガ――映画『ジョン・ウィック』が持つホラーの構造。

こんにちは、渡柏きなこです。本日はちょっと前の映画になりますが、キアヌ・リーブス主演の『ジョン・ウィック』という作品について、ちょっとお話させていただければと思います。

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さて、この『ジョン・ウィック』という映画は、2014年に公開されたアクション映画です。2017年には『ジョン・ウィック チャプター2』が、そして2019年に『ジョン・ウィック3 パラベラム』が公開され、現在は三作品が世に出ています。

作品の筋書きはいたってシンプル。ババヤガの異名で恐れられた伝説の殺し屋・ジョンウィックは、しかし愛する人と平和に暮らす日々を選び、現役を引退した。しかしその奥さんが病死。悲しみに暮れる彼の元に奥さんが遺したワンちゃんが届けられる。奥さんの形見と思ってワンちゃんを大切に育てるジョンだったが、チンピラがジョンの家に侵入。不意を突かれた彼は愛車を奪われ、ワンちゃんは殺されてしまう。怒りに震えるジョンは復讐のため立ち上がり、かつての伝説的な手腕でチンピラを殺そうとする。しかしそのチンピラは実はマフィアのリーダーの息子で……?

愛する者のために立ち上がった元凄腕の暗殺者がなりふり構わず復讐する、というこの話は、リーアム・二-ソンの『96時間』を思わせるシンプルかつ感情移入しやすいストーリーと、長回しを大胆に使ったカメラワーク、実際的なアクションとノワール感のある画面作りで人気を博しました。

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さて、しかしこのお話――もっと広く言えばこの手の『元凄腕暗殺者の復讐話』には、ホラー映画の構造が隠されています。だからなんだ! と思われるかも知れませんが、まあなんとなく自分で面白いかなあと思ったので、お酒のお肴に聞いていってください笑。

ところで、『ホラー映画の構造が隠されている』というお話をするためには、まず【ホラー映画の構造】とはなんぞや、というお話をする必要があります。ここで言う【ホラー映画の構造】とは何か? それはつまり、『SAVE THE CATの法則』で知られるブレイク・スナイダー氏が言うところの【家の中のモンスター】的な構造のことを指しています。

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ブレイク・スナイダー氏の著作『10のストーリー・タイプから学ぶ脚本術』に登場する、映画作品の類型のひとつ【家の中のモンスター】とは何かと言えば、『ジョーズ』や『エイリアン』に共通する脚本の法則性のことです。そのポイントはどこにあるかというと①化物――本質が『悪』のモンスターの存在、②家――つまり特定の閉鎖的な空間が舞台。街、業界などの概念的なくくりも適用される、③罪――誰かがモンスターを呼び覚まし、家の中へ入れてしまったという罪悪感。この三点が【家の中のモンスター】という作品の類型に共通するパターンです。サム・ライミ監督の『スペル』や『ドント・ブリーズ』なんかを想像するとわかりやすいですが、ホラー映画の主人公はなんらかの(それはセックスをする、なども含まれる)罪の意識があり、逃げ出せない環境に閉じ込められて、モンスターに追われる羽目になるという流れを持っています。邦画の『学校の怪談』なんかでも、主人公の少年グループがふざけてハニワを壊してしまったのがきっかけ、だったりするのはこの【家の中のモンスター】の型に沿っているという見方もできるわけですね。

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さて、ではこの『ジョン・ウィック』という作品のどこにこの構造があるのかというと、それはつまり、モンスター=ジョン・ウィックという視点で考えればわかっていただけるかと思います。本質が『悪』のモンスターとはつまり元凄腕暗殺者のジョンそのもの。罪を犯したのはジョンの犬を殺したチンピラ。閉じ込められたのはマフィアなどが跋扈する裏世界。つまり、『ジョン・ウィック』とはホラー映画のモンスター側の視点に感情移入させる方式がとられた映画なのです!

そう考えると、『ジョン・ウィック』の功績はただ単にキアヌが主演のアクション映画を再度作り上げて見せたことだけではなく、【視点変更】によっていままでの映画の型を再利用し直せる可能性を提示してみせたことにあるとも言うことができます。『マレフィセント』『ジョーカー』『スーサイド・スクワッド』など、悪役視点の映画が増えてきているのは、もしかしたらこの流れを多くの映画監督が無意識に踏襲しているのかも知れません。今後もモンスター=主人公型の映画に期待大です!

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あなたには好きな悪役キャラはいませんか? こいつを主人公にしたらいいのに、と思うキャラクター。自分の思っていることを代弁してくれていると感じる悪い奴、画面の中で退治されてしまうヴィランはいませんか? もしかすると彼/彼女を主人公にした作品を、作ることができるかも知れません。もしお好きなヴィランがいらっしゃったら是非私とお話しましょう。かくいう私もダークヒーローや悪役が好きなたちなのです。恐れながら自分でも創作小説を書いていたりします。面白い作品が出来るかも知れません笑。ツイッターもやっておりますので是非リプライやDMなどで絡んで頂ければと思います。それでは、また別の記事でお会いしましょう! 最後までお付き合いいただきありがとうございました!!!!

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