僕らは道具に使われている 〈後編〉
山田監督の1970年作に「家族」という映画がある。50年前。インターネットはおろかパーソナル・コンピューターすら出まわる以前の話。高度成長期の果ての果て、長崎県伊王島に住む一家が、炭鉱閉山に伴う失業を目前にして、新たな生活拠点を求め日本列島を縦断する。一家の道のりは、「家族」というタイトルに漂うほの温かい結びつきや“アットホーム”な気軽さからは程遠い。
陸路をゆく長い移動の合間に、広島の工業団地、大阪万博、東京の雑多な下町に立ち寄るものの躓きの連続で、日毎に疲弊と苛立ちの色