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【シナリオ】「秘すれば赤き、花が咲く」


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・藤綱 誠(ふじつな まこと)
男子高校生。資産家の父を持つ。愛情が足りない環境で育ち、自分に自信がない。美形で謙虚な青年。若者のおしゃれが分からず、いつも和服を着ている。

・藤綱 聡(ふじつな さとし)
40代の資産家。引きこもりの息子に手を焼いてる。柔和な笑顔のイケオジ。温厚に見えて、狙った獲物は逃がさない。ダブルボタンのスーツがよく似合う。

・紅山 薔子(べにやま しょうこ)28歳の女教師。さっぱりした人柄で面倒見がいい。恋愛に関しては、ものすごく鈍い。自分が美人な事に自覚皆無。誠のクラスの担任になった。

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(本編)
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【藤綱 誠】
(薔薇の咲き乱れる庭…。その庭にひとり、和服姿の若い青年が美しい薔薇をどこか寂しげに眺めていた)

【藤綱 誠】
「痛っ!!……あ、薔薇のトゲか。指から血が…。
はあ、どうして、美しい薔薇にはトゲがあるんだろうか?
…本当…、僕の恋は、なんで今も、胸に刺さって痛いままなんだろうか?」

【藤綱 誠】
(話しは過去に遡る。

僕、藤綱誠は、藤綱家という資産家の家に生まれ、そして僕にはずっと母がいなかった。
長年いなくて、父に聞いてもお手伝いさんに聞いても何も話してもらえなかった。 母不在の家庭は時折ギスギスして、耐えられなかった。
学校でもうまくいかなくなって、僕は部屋に引きこもるようになっていった。)

【藤綱 誠】
「うあ、なんで今日父さんいるの?」

【藤綱 聡】
「自分の家だから、居てもおかしくないだろ?たまには息子と2人で、朝食取るのに、なんの不思議がある?」

【藤綱 誠】
「まぁ…ね。よく言うよ。ほとんど仕事で家にいなくて、家政婦さんに任せきりでさ。ウチには母さんだけじゃなく、父さんの存在もいない気がしてたよ」

【藤綱 聡】
「さびしいのか?」

【藤綱 誠】
「そんなこと…」

【藤綱 聡】
「さびしいなら、高校に行けばいい。せっかく合格して入学した高校だ。行かないのはもったいないし、世間体も悪い」

【藤綱 誠】
「…本気で言ってる?父さん」

【藤綱 聡】
「…学校で何があったかは知らないが、高校は卒業してほしい。入学してから数日しか登校出来てないじゃないか」

【藤綱 誠】
(僕は押し黙った。何かあったわけじゃない。ただ、周りのみんなには両親がいて、ちゃんと親の役割をしてるのを、お弁当や、休憩時間の会話でひしひしと感じた…。自分にはどうあってもそれがない。周りのみんなにはあるのに、自分にはそれがない。それが悔しくて虚しかった。
…これは、周りのみんなが悪いわけじゃないから、口にも出せなかった。

…ただ、それだけ)

【藤綱 聡】
「……ああ、そうだ。明日、お前の学校のクラス担任の紅山先生がウチへ来るぞ」

【藤綱 誠】
「え?」

【藤綱 聡】
「会って連絡事項を話したいそうだ」

【藤綱 誠】
「そんな!勝手に!?」

【藤綱 聡】
「いいか?これはもう決まった事だ。わざわざ先生が来てくれるんだ。わかったなら、準備をしておきなさい」



【藤綱 誠】
(翌日のこと、学校の先生がやって来た)

【紅山 薔子】
「こんにちは!大きなおうちだね!びっくりしたよ!…久しぶりね。誠くん。元気?はい、これプリント類、渡しとくね」

【藤綱 誠】
「…こんにちは」

【藤綱 誠】
(先生相変わらず元気だなぁ。すごい美人で、スタイル良くて、Vネックの夏用の黒ニット…よく似合ってる。

最初見た時、あまりに美人だから、自分の女の色香を利用してそうと勝手に思ったけど…中身はどちらかと言うとサバサバしてるし、どちらかというと男顔負け。
生徒から「美人!!モテそう!!」と言われると、先生は「んなわけあるかーい!!モテてたら、こんなガサツな女に成長してないってばさ!w」と返すような人だった。

【紅山 薔子】
「すごい大きな庭もあったね。和風のお庭で、花とかは植えないの?」

【藤綱 誠】
「花?庭師に言って植えてもらってもいいけど…先生は何の花を植えたいんですか?」

【紅山 薔子】
「うーんとね!薔薇かな?」

【藤綱 誠】
「え?薔薇?先生が薔薇って…ぷっw」

【紅山 薔子】
「なんで笑うのさ?私に似合ってないのはわかるけどね。先生は薔薇が小さい頃から好きなの!名前に薔薇の字が入ってるしね」

【藤綱 誠】
(見た目だけなら、薔薇は似合ってる。けど、言動がサバサバしてて、薔薇とは真反対で笑ってしまう。

そのあと聞いた話。
どうやら不登校を気にした父が、学校の先生に相談してたらしい。

じっくり話してみると、先生はすごい良い先生だった。
先生は何回も家を訪ねてくれて、いろんな話をしてくれた。

先生と話する時は、いろんな問題が忘れられて、ほんと天国にいるようだった。

僕はいつしか、先生に淡い恋心を抱き始めた。)

【藤綱 誠】
(ある日、父と話した )

【藤綱 聡】
「あの先生はいい先生だな」

【藤綱 誠】
「うん。そうだね!本当だよ」

【藤綱 聡】
「…そうか」

【藤綱 誠】
(そして、僕は学校にちょっとずつ通えるようになった。
高校2年生を過ぎて、高3になってもその先生は担任で本当よかった。)

【藤綱 誠】
これからの人生は順風満帆に行くと思っていた。
だが、衝撃的な出来事が起きて転落していく。
父が先生に恋をしたのだ。
父は結構強引にアプローチしていたみたいで、
それでなのか、恋愛に鈍い先生も、度重なるアプローチにプロポーズを受けてしまった。)

【藤綱 聡】
「誠!これから薔子さんをはウチに住んでもらうことにした。よろしく頼むな。」

【紅山 薔子】
「誠くんこれからよろしく」

【藤綱 誠】
(それで、先生は父の婚約者として藤綱家に住むようになってしまったのである。
食卓の時に顔を合わせたり、 お風呂に入っていく先生に、まだドキドキしているのに、夜は決まって父の部屋に行ってしまう)

【藤綱 聡】
「薔子さん…今夜2人きりでワインでも飲まないかい?」

【紅山 薔子】
「聡さんってば。も〜〜、仕方ないなあ。美味しいおつまみ持ってくね」

【藤綱 誠】
大人の夜のことはよくわからないけど、穢れたものだという認識が自分の中で強くなり、だんだん僕は体調を悪くしていった。

病院の診察医からは高3という難しい時期ですのでという解釈になっていたが、 一番の原因は僕の先生を独り占めする父だった。

そして結婚前夜…)

【藤綱 誠】
「先生、明日父と結婚するの? 」

【紅山 薔子】
「ええ、そうよ。 誠くん、これからはずっと一緒ね」

【藤綱 誠】
(そう言われて、僕は怒り心頭になって思いつく限りの言葉で先生を罵倒した)

【藤綱 誠】
「なんて不誠実なんだ!先生は世界一不埒でふしだらだ!先生は愚かだ!!バカだ!先生はバカだ!!
わああああああ!!!!」

【藤綱 誠】
(その夜僕は怒り狂ったまま眠れず、父と先生が使う車のところに行った。この車で死んじゃえばいいんだと思って、車にいたずらをしようとした!!

…ただそれからの記憶がない。

父と先生は翌日、車で出かけて事故に遭った。
そしてふたり共、帰らぬ人になってしまったんだ。

僕は自分のせいだと思い、気に病んで、とうとう精神病院に入院するまでになった。 どれもこれも、自分が悪いんだと。

ただ、しばらくして親戚の人が外聞が悪いと僕を精神病院から退院させてくれた。

それ以来親戚の人は はあの広大な屋敷にに僕を一人住まわせ、お手伝いさんに僕の身辺を任せるようになった。

僕は心のなぐさめに、先生が好きだった薔薇を庭に植えてもらった。
あの事件は事故として処理され、僕は疑われることはなかった。
そして 薔薇は咲き乱れる…。
彼女の好きだった薔薇。 僕はその薔薇に 今日も謝って泣くのであった。)

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