10年目に突入した片思い(これはラブレターかもしれない)
私には大好きな人がいる。
出会いは9年以上前、当時26歳だった。その間に私自身が結婚していたり、離婚したり、彼氏がいた事もある。他の記事に書いた様にデートアプリで出会いを求めた事もある。けれど私の心の中には彼が常にいて、その気持ちを掻き消す為に他の男性とデートを繰り返していたのかもしれない。
彼は5歳年上の「港区男子」。出会った時は31歳。独立したばかりで港区臭はしなかったけれど、今は40歳になって六本木レジデンスに住みポルシェに乗り高級鮨を食べキャバクラに通い、派手な生活をしている。そう言う所が好きな訳では決してないのだが、好きになっていた9年で彼が変わって行ったのだ。一緒にお酒を飲んでくだらない事で笑ったり、ドライブ中無口でも一緒にいる空間が苦じゃないって言う、これと言ってポイントはないけど居心地が良いと私は思う。
彼の周りにはハイスペックなステイタスを目的に若い女の子が途切れない。インスタには女の子とのツーショットがあげられたり、コメント欄に「今度連れて行って〜♡」等もしばしば見掛ける。
彼女がいるいないを聞いた事はないけれど、泊まりに行く度にメイク落としや歯ブラシがあったり、彼女がいたであろう一定の時期は必ずホテルに泊まったりと分かり易い所がある。
好きになって5年目位の頃、セックスをした後眠りについてフワフワしている時に彼は私に言った。
「おとちゃんは俺とどうなりたいの?」
「付き合ったりとかいつかは結婚したいなとか、それなりの真面目な感情はあるよ。」
「幸せになりたいんだったら俺じゃないよ。やめておきな。誰か探しなよ。」
「うん…努力するよ。」
それから前述の記事にも書いた様にアプリを駆使してデートに勤しむも中々良い人とは出会えていなかった。
それから2年後の夏、アプリでデートした人に恵比寿の雑居ビルの屋上で犯されそうになった。終電もなく泣きながら彼に居場所を尋ねると数メートル先のバーで飲んでいるとの事だった。事情を話し、その日は一緒に過ごしてくれると言ったけれど念を押された。
「でも俺は違うからね。前にも言ったけど。」
その日もシティホテルに泊まり、朝方にはいつの間にかいなくなっていた。きっと彼女に気付かれる前に帰ったのだろうなと察した。
それから数ヶ月後、何度かデートしている人がいて、付き合ってと伝えれば付き合えそうな人と付き合った。打算だった。アプリでレイプされそうになったり、大好きな人に会う度にフラれたり、もう悲しい思いはしたくなかったのだ。
その彼氏はとても良い人だったが重かった。その重さが嫌で2回に1回返事をする様にしたり、寝ているフリをして電話に出なかったりと、遠距離恋愛も相まって徐々に距離が出来ていた。
その間も例の彼を忘れた事は無かったが会ってはいけないと言い聞かせていた。
そんな中、色々考えたくて一人旅に出た。9年前あの人が勧めてくれてずっと行きたいと思っていた国へ行く事に決めた。地球の裏側まで一人で行けたら、彼への気持ちもこの旅で捨てる事が出来るかもしれないと根拠のない期待をしていた。
けれど、カリブ海に沈む美しい太陽を見ながら頭に浮かんだのは彼氏ではなくずっと好きだったあの人だった。
Wi-Fiもろくに繋がらない国で1時間100円のWi-Fiカードを繋いで、私は真っ先にあの人にLINEをしていた。
「早く会いたいよ」
「俺も早く会いたいよ。気を付けて帰っておいで。」
帰国してから付き合っていた彼氏とは真っ先にお別れをした。そもそも最後の数ヶ月は自然消滅しかけていた。
1ヵ月後、彼が私の誕生日をお祝いしてくれるとの事でデートをした。
何もかもが完璧だった。素敵なレストランでの食事、プレゼントにお揃いのブレスレットをくれて、友人のバーで楽しく飲んだ後に夜景の綺麗なシティホテルに泊まる。
彼が帰った後、ガランとしたベッドの中で考える。また振り出しに戻っている?「俺じゃないよ。」と言われた時と変わらないのか?
けれど、色々自分なりに努力をした。デートも沢山したし他の人と付き合ったりもした。頑張って他の人を好きになろうと努力したけれど、彼が大好きと認めたら今までのモヤモヤした気持ちが消えてすっと楽になったのだ。
その時私はぼんやり感じた。私があの人への気持ちを諦めるのは、私が死んだ時かあの人が死んだ時なのかもしれない。
この先彼氏が出来ないかもしれないし、結婚出来ないかもしれない。子供だって産む事が出来ないかもしれない。でも、私は好きでもない人とお見合いやそれに似た事をして、子供を産んで育児を手伝わない旦那に苛立ちながら離乳食の十倍粥を作る生活を望んでいる訳ではない。
好きな人に「好き」を伝え続けて、それでも駄目だったら仕方ないなと思える人生で良いのではないかと思う。
もし自分が明日死んでしまうなら何をしたいか。そう考えた時に真っ先に浮かぶのは彼だった。彼の大きな背中に胸をぴったりくっつけて、鼓動を感じながら自然と呼吸が重なり眠りに落ちる事程幸せな瞬間はないと思っている。それを最後に死ねたら他には何もいらないと思った。
35歳にして片思いなんて笑われてしまうかもしれないけれど、10年経っても彼の背中の温もりを思い出だす度にときめくこの感情をくれたあの人に感謝している。大恋愛も悪くない。
いつか彼との長い物語も書けたら良いなと思う。
続編はこちら。
最終回
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