こぼれ落ちた男

 どんな姿も果てしない影に比べたらどうでもいい食事のようなもの。適度に土をかき集めて札のついてしまった人々に配っていく。いま思い起こせば高くつくられたあの街々に、置き忘れてきた魔物達のたしかな思い出があって、そこで打ちあげられた波間の音や小石の勇気でどうにか恥を忘れずに過ごせていた。

ささいな気分で
ほんの少し指をこする

まぶたの裏から群青色の海が広がって空へ伸び、転覆する。そこから落下する円盤を狙いすまして撃ち抜くたびに、熱を持った悪態が若さを迸らせ、真空へと向かう。そのとき俺が握っているのは、誰も知らない男の言葉。

神や仏がああも太々しく、尊大なのは、自然という強力な意味を味方につけているからで、俺がみた億をも超える色彩で耐えていた大地は「無」から生まれ、もっとも俺に近かった。彼等の世界に共通する、その強力な意味を深く理解したところで、そこにある隔たりを見ることができる者などいないだろう。




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