「道」のうえで -遠音とエンジンと消しゴム-
遠くから聞こえるすべての音というのは、なぜか懐かしく感じる。学校のチャイム、野球の練習をする少年の掛け声、通りを走る車のクラクション、花火の音、爆竹の音、雷鳴が聞こえると、遠くで降りすさぶ豪雨の音も聞こえる気がする。仮に隣の国で戦争が起きて、銃声や爆撃音が聞こえてきても、それは血みどろの争いを想起させる前に懐かしさを与えるのだろう。遠音が発生して秒速300mで僕の元へと訪れる。その数秒の間に起こったことを音は通過して、もしくは経験して、音の発生源と共に空気を震わせてやってく