こぼれ落ちた過去

疲れた体で一人を追いかけるには、光を待ちわびる二人が必要だ
俺の嘘を広める三人は深夜のプールで溺れている
四人で始めた戦争は、五人の制服を炎で包んだ

空腹のままでは過去が物足りない

きわどい姿勢で電車に揺られていた少年も、中吊り広告と欲望の終わりとその日の昼食について真剣に考え抜いた男も、僅かな重力が支えている魂を空白と呼んでいた。俺が学んだ色褪せた電気は右肩の重さに比例して際立ち、自惚れた魚のようにでたらめな歌を唄いはじめる。または時代の先に立つ巨人の後頭部に空いた虚ろな穴に憧れる。

まだ速さがたりない

積み重なることで動き出す意味に惑わされたなら
「明日に向かって射て」ってことだ

つまり
人が死ぬより先に俺は理解したい

名付けられることで生まれる可能性より、名付けられることのないまま続いていく存在の可能性を理解したい。指紋を無くした男は失敗した。日常から吊し上げられた輝きが、彼女の部屋から出てこなかった。世界はいつも冗長で味気なく、ひと吹きすれば飛んでしまいそうな、意味ばかりが大きい張りぼての器だった。本当のことは簡単に人を殺してしまう。本当のことは人という存在をみすぼらしいものにする。本当にしろ嘘にしろ、我々が老いることで許されていることを時には思い出すべきだと、なぜ誰も言わない

はっきりとした輪郭を持つことで死に絶える人々
自己啓発の浅ましさに慣れてしまった都会の子犬
夕暮れの雨
生温いビール
全部持ってけよ

あいつの横顔に決まるまでは俺の血を流して、それから走れ
つうか忘れろ
霞ヶ関と桜田門の間でお前らが順番を決めるまで
俺は活きのいいイエスと戦ってっから

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