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こぼれ落ちた角

赤い鍵盤の上を鹿が走り抜けていく
冷めた視線に包まれた心臓がトクトクと鳴り
風は生臭さと共に老いていく
彼の角は折れている
そのためにどれだけ必死だったか
また、誠実であったか、愚かなクズであったか
絶望には飽き希望には手垢がつき
無には帰る場所ができ
山はなお
山としてうるさいだけだった

俺にとって書くことは
一人で立つということであって
見慣れた素振りでも
見たことのある景色でもない
都会の肥溜めを通過する
新宿ライナーであり
腹の捩れる時間によって捌かれた運動が
あらゆる錯誤が功をなし
新たな手形をつくっていく

日が暮れた後には
流行りの山師に貪られるであろう彼もまた
野生の終わりで俺と出会い
いずれ言葉を交わすのだろう
そのとき俺は中指を立てたい

俺は折れた角に向かって中指を立て
そこに表出した接線がチリチリと燃える音を聞く
焦げた匂いに包まれて
こ気味良いダンスを踊る
レモン色の爆弾を思い返し
喋り、食み、眠る

このように終わることのない戯言が
クラシック音楽の土台となった

このようにして
また飛んで
麻雀牌を捲っている

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