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ポップンミュージックにまつわる「そのほか」~~そのほか2『うたっち』/ぬのじ

カルチャーを受け止める機種としての宿命なのか、それともなんかもうそういう"習性"なのか、ポップンミュージックというゲームはしばしば外伝作品を出している。
時には、それら外伝作品の世界観によって、ポップンミュージック本家世界だけでは見ることができなかった部分が見えてくる事も少なくはない。少なくはないというか、見ようとして見ているのだから、見えて来ちゃうのは仕方ないね。今回も見えないものを見ようとして外伝作品を覗き込んでいく。

2回目のポップンミュージックのそのほかは、正式にBEMANIシリーズに属する作品の紹介になる。つまり……音ゲーだ!

タッチでうたっち、歌でうたっち
『うたっち』/ニンテンドーDS

・携帯ゲーム機と外伝作品と

携帯ゲーム機のニンテンドーDSが発売開始されたのは2004年の事。同年、先行してPSPことPlayStation Portableも発売されていた年。
DSとPSPの携帯ゲーム機市場での役割は分かれており、2008年時点の普及データを見ていくと、DSは新規参入ユーザー、また翻って20代以上のヘビーゲームユーザーを中心に。そしてPSPは10代付近のユーザーを獲得する構図になっていた。PSPの客層に関してはモンスターハンターの存在が大きいと言われている。

そして『うたっち』はニンテンドーDSのタイトルで、2010年の2月末に発売された。
同月の上旬には『pop'n music portable』、PSP初のポップンCS作品一作目が出ている。
ポップンミュージックというゲームはしばしば外伝作品を出している、という意味では、うたっちのメインターゲット層はそういった「新規参入ユーザー」だったり、低年齢層だったりしたのではないかな、と個人的には思っている。

この年の1月にポップンはACでせんごく列伝へのアップデートを行っているし、IIDXは9月に18 Resort Anthemになったし、11月にはREFLEC BEATが"新規稼働"し始めた。時期としては、そんな中で現れたゲームだ。

・ユニークに振れまくるゲームモード

うたっちは、その名の通り「歌」にフォーカスした音ゲーと言えそうです。様々な意味で、実にポップンミュージック的。

楽曲の中の歌そのものにフォーカスした音楽ゲーム自体、北はカラオケの採点システムから南はタイピングチューブまで各種古今東西諸々ありそうですが、その中でうたっちがやっている事は「我々が見慣れたシステム」、そして「DS的なあそび」との合わせ技。それにより生まれた特徴的なゲームモードのなんと多いことか。ちょっと……ちょっと多すぎるかも。

まず、一番の基本ルールから。うたっちはDSを横持ちで持って、画面を縦長にした状態で遊びます。倒す向きによって両利きに対応していますよ。
タッチパネル画面に表示されるレーンを上から下へノーツが流れて来るので、それに対して操作をする事で評価を貰い、一定以上の基準を越していれば楽曲クリア、となる流れ。ここまではBEMANIにトラディショナルな、いつものやつです。
タッチ画面横の液晶、つまり上画面には楽曲の担当キャラクター、もしくはプレイヤーが選択したキャラクターが踊ります。ゲームモードによって譜面のクリアゲージだったり、楽曲の「歌詞」が適宜表示されています。

難易度は1・3レーンでそれぞれ選べる「かんたん」「むずかしい」譜面と、5レーン譜面の「むずかしい」、全5段階の難易度。これらがゲームモードによって選べたり、選べなくなったり。

降ってくるノーツはカエルの姿形をした「たっちぃ」という生物。各色生態していますが、様々な演奏指示が含まれています。
通常の場合、この降ってくるたっちぃはあんぐり開けた口の中に歌詞を1音1音表示しています。歌詞と共に歌合せのノーツが降って来るので……キー音として鳴る音はもちろんボーカルの声なのです。

さて、ここのゲームの「操作」のメインは勿論「タッチ」操作。たっちぃの色によって、タイミングよくタッチしたり、レーンを擦ったり弾いたり。
時には、難易度が高い早いパッセージの譜面に対して、レーンを跨ぐようなスライドで対応したりなども出来ます。タッチでうたっちです。


そしてゲームモードの違いによってもう一つの操作方法が。「カラオケ」モードで遊べるのは、DSのマイク機能を使った「音声入力」操作。
うたっちには音声認識機能があったのか!? と驚かれる方もいるかもしれませんが、安心して下さい。カラオケモードでうたっちのマイクが判定するのは「声の大きさ」のみ。
つまり……タイミングよくマイクに向かって大声を出す人間が発生!!! タイミングよくマイクに息を吹く人間も発生。もしかするとファミコンの2Pコントローラかもしれない。
私はこのモードを3DSで試し、無事酸欠になりました。マイクの位置がゲーム側の想定された位置にないと、こうなります。うたっちで酸欠になりたくない。歌でうたっち、大声でうたっちです。ですでは全然ない。

うたっちの遊びは操作方法のバリエーションだけに留まりません。「ボイスプレイ」ではこれまたDSのマイクを使い、サンプルとなる声を録音します。
うたっちではボーカルの声がメインのキー音となっていると前述しましたが、このゲームモード内では録音した声がサンプリングされて、ボーカルのかわりにキー音となります。自分の声を録音すれば、自分のボイスサンプルキー音でうたっちを遊べるという事ですね。
説明してもされても、全然わからないぜ。一体どういう事なんでしょうね。サンプリングの自分、私より亡國覚醒カタルシスの跳躍の音程取るのうまい! 歌でうたっちかもしれない。

また、極め付けにはこんなモードも。
そもそも、うたっち内で遊べる曲を解禁したり、フリープレイで選べるキャラクターを解禁するためのモードである、言ってしまえば一番ベーシックなゲームモードの「キャンペーン」モードがあります。
そこでコナミオリジナル曲を次々と解禁していくと……突如現れるのです。説明書の中にすらどこにも記載の無い、「アレンジ」モードが。

アレンジモードでは、たっちぃの色に伴う演奏指示がフラットになり、キー音を出す手段はタッチとホールドの2種類のみに絞られます。
では、このモードでたっちぃを擦ったり弾いたりすると、どうなるか。答えは、それに対応して、ボーカルの音程が擦られたり弾かれたりする、です。このゲームは最終的に、タッチ操作で直接的に楽曲へ、歌へ干渉出来るのです。ほ、本当にどういう事〜!?
ちなみにこのモードで選べるのはコナミオリジナル楽曲のみ。それはそうかも。タッチペンで撫子ロックやらハイパンクやらメガネロックやらを直接つつけるゲームは、おそらくうたっちだけ!

タッチでうたっち。歌でうたっち。思いついたおもしろが全部収録されてしまっていそうな、色んな意味で変なゲームです。音楽ゲームに対して遊びが音楽の方へ大きく傾いているというのは、なるほど初心者向けなのだろうと思います。

・よいこのポップン、外伝のストーリー

最後に、うたっちのストーリーの話を少しだけ。うたっちの説明書には、作中の舞台になる国の話だったり、メインとなるキャラクターのプロフィールにも関わるイントロダクションが書かれている。はたしてその内容はゲーム本編やゲーム性には一切の関わりの無いもので、興味の無い人は読み飛ばしてもいい。でも、筆者はそういうのばかりが好き。

人気急上昇中のスイートなアイドル「K-SUKE」と「なっつん」は世界をまたにかけてツアーを行なっていた。

実は2人には秘密があった。
「K-SUKE」と「なっつん」はお菓子の国からやってきたお菓子の精だったのだ。

『世界をまたにかけたツアー』とは、恐らくポップンミュージック本編の事だろう、と筆者は読んでいる。理由については後述。
うたっち作中の舞台は、それと対応して紹介される『お菓子の国』。メインとなるキャラクター2人の、わかりやすく言えば地元である。

ポップンミュージックには、その真偽に関わらず、妖精のアイドルが多い。
お菓子の精、と紹介される彼等のプロフィールをそれぞれ確認していくと、K-SUKEはアイスミントのお菓子が"人間になった"、なっつんはイチゴクリームのお菓子が"人間になった"と紹介されている。
言葉上に留まる表現なのか、それとも本当に「お菓子が人間になる事が可能な」世界からやって来たのか、その説明はなされない。
なお、ポップンワールドではクッキーがクッキーのまま動き回ったりする事もあるが、クッキーファンタジーな彼らはメレンゲ王国出身だという。ポップンミュージック、知らん土地が無限に出て来るぜ。

あるとき、お菓子の国に食いしん坊カエルの"たっちぃ"が大繁殖!
このままでは、お菓子と歌が大好きな"たっちぃ" によって
国中のお菓子が全部食べられてしまう!
(中略)
「"たっちぃ"を歌でおびき寄せて、捕まえよう!」
という作戦を考えた2人は、ライブや歌番組を通じて知り合った
世界中の仲間たちと共に、お菓子の国へ舞もどるのだった。

雲行きがもう怪しいわね。
前述していたノーツ、たっちぃの存在について触れられている。カエルの姿形をしたノーツ、ではなく、本当にカエルだったらしい。音符の両生類。もしかして、楽譜上の黒音符を指して「おたまじゃくし」と形容することからの派生も含むのだろうか。そう考えるならば、たっちぃはむしろ音価の擬人化の様にも思えてくる。かわいいね。
さて、このたっちぃが大量繁殖している、という部分が問題の様で。たっちぃの大繁殖により、要するに「人間になる事が可能」と思われるお菓子が全部食べられてしまう、という事件が発生しているという。

国がっ……!
国がひとつ滅びる騒ぎになってるっ……!

国のてっぺんがひっくり返るとか、世界そのものが消滅するとかの滅びではなく、人が生きていて、そこの国民全員が滅亡、とかの滅び。嫌過ぎる。
そういう訳で、彼等は仲間と共にたっちぃの捕獲に乗り出すのであった。筆者はグリル厄介の事を思い出しています。

そして、ライブや歌番組を通じて知り合った世界中の仲間たち、という部分。これが改めて、「ポップンミュージック本編」の出来事を示しているに違いない!と筆者が喜んでいるポイントである。
前述の「キャンペーン」モードでは選択できるキャラを解禁できると触れたが、このストーリーの内容は、うたっちというゲーム内でポップンキャラクターが選べる事の説明足り得る部分として読める訳だ。
という事はつまり、うたっちに出演しているポップンキャラ達は、基本的にはK-SUKEとなっつんの知り合い、もしくはそれ以上の関係値にあるとも言えそうだ。実家が大変なので! で駆け付けてくれるアーティスト達、あったけえな。バラエティ番組とも言う……

因みに、K-SUKEとなっつんは、ポップン本編への出演はおろか、何故かうたっち内ですら担当曲が存在していない。(うたっち発のオリジナル楽曲は2曲存在する。)本当になんで?

まとめ

・携帯ゲーム機の外伝だよ!
・DSも変なゲーム機だったと思う
・滅んでるかもしれねえ

次回の「そのほか」は、スマホで遊べたあいつです。案の定まだ書けてないのでゆっくりお待ちください。
機会があえば、またよろしくおねがいします。




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書いた人:ぬのじ
2013年以降を中心とした音楽ゲーム自由研究人間のオタクで、主に機種連動や合同イベントについてを多く口に含みつつ、どちらかというと常に世界観の事を考えている不審人物。脅すと原稿が出て来るらしい。
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次回の更新は10月7日(土)「”コンフレ”の楽しみ方 そしてその定義/かりんとう」の予定です。お楽しみに!