見出し画像

”混フレ”の楽しみ方 そしてその定義 / かりんとう

こんにちは。かりんとうです。音楽ゲームを遊んでいます。
好きな譜面は、混フレ譜面です。
主食も混フレです。
いえ、コーンフレークではなく。混フレを食して生きているという意味です。私は本気です。

というわけで皆さんは「混フレ」と呼ばれる譜面傾向をご存じでしょうか?
「同時押し」や「階段」といった極端な譜面傾向の次に挙げられるような、サブジャンル的な譜面傾向ですが、既にご存じの方は極めて多いはず。

ひとまず私は、メロディとリズム、あるいは2種の拍の異なるリズムや、またあるいは異なる2種のメロディ……総じて「フレーズ(旋律のパターン)に基づくノーツ配置を複数組み合わせて、ひとつの譜面の中で奏でるよう設計されている譜面傾向」を混フレと呼ぶのだ、という認識でいます。
そして音楽ゲームを提供する公式側による用語説明からも、その概念を見て取れるかと思われます。

混フレ
「混合フレーズ」の略で、ピアノの左手と右手のように、異なるフレーズが一体となって流れる譜面のこと。

BEMANI PRO LEAGUE 2021 用語集「譜面の傾向」より

とても美しい表現で良いですね。
ただ、ここで「ピアノの右手と左手のように異なるフレーズ」と表現されたことで、心の中に引っかかりが生まれたのです。

異なるフレーズの集合を全て混フレと呼ぶのなら……例えばこのような譜面たちも、混フレと呼べるのかもしれませんが。
心の中ではどうも納得できていないのです。
これは「混ざっていない」と。
混合フレーズとしての「快」が足りない、と。

私が斯様な事を考えるほど混フレに心を奪われてしまったいきさつについては、また別の機会にとっておきましょう。今回は、
「混フレって結局、何?」
「何がどうなってる混フレを、私は楽しいと思っているのか?」
という点に焦点を当てた、混フレを(電子上の先達の知恵を借りつつ)解剖してみた、その試みを記録した、ただそれだけの記事でございます。

ちょっと長めな記事になってしまったので、興味のある項目に応じて目次でジャンプしつつ眺めていただければ。実は1章と2章のバランスは3:1ぐらい偏っているので、後半だけなら1分で読めるらしいですよ。


1)混フレの定義について

前提として、「異なるフレーズが一体になって流れる譜面」という定義に異論はありません。別にこの定義を認める理由は「じゃあこの世の全てが混フレなんだ……!!」と口走った自分を肯定したいからでもありません。
ですがこれまでの経験を鑑みると、この定義の不十分さに突き当たります。
私たちはもっと、限りあるパターンを「混フレ譜面」と呼んでいるような気がするのです。
この直観のもと、混フレの定義をもっと突き詰められやしないだろうか。以下はそういった試みを含む定義づけである事をご承知おきください(これらが極めて私的な考察であることも、です)。

・例においては右手と左手で行う混フレを想定する
・このとき右手で「メロディ」を、左手で「リズム」を叩くものとする
・メロディとリズムの両方におけるそれぞれの譜面パターンを「フレーズ」と定義する
・リズムの方は絶え間なく、4分または8分音符のリズムで刻むものとする

上記は自分が定義を考えるにあたっての約束事なので皆さんは特に念頭に置かなくても大丈夫です。

①「フレーズ」の定義における3つの区分

まずは混フレの「フレーズ」にまつわる定義を整理しましょう。
この節ではchar_c3.Out様の「 混フレは8分型と付点8分型を知っておくと割と何とかなる(クロスビーツ混フレ攻略) 」という題のエントリを大変参考にさせていただきました。
「8分型」と「符点8分型」という2つの区分は、混フレ譜面を考えるにあたって重要なヒントになりました。加えて符点の特性、これらの区分では説明しきれない譜面などを検討し、一旦「多くの混フレ譜面が持つ特徴」を2つの区分に分けて考えてみます。

単純音符型
・符点音符型

上記2つの型のうち、単純音符型は基礎的でシンプルに考えればよいでしょう。(単純音符とは、通常私たちが思い浮かべるごく普通の音符で相違ありません)
ただし、フレーズ中に使用する音符は両者1拍~2分の1拍の範囲でリズムをとる方が、楽しい混フレにとっては望ましいように感じられます。
参考元の呼称としては8分型に当てはまります。そして今回の定義に沿えば、いずれのフレーズも4分音符の2分の1拍である8分音符(8分音符の偶数拍としての4分音符)しか使わない混フレ、ということになります。
4分でリズムを刻みながら、8分のメロディを奏でる……そうすると右手と左手の打鍵タイミングが重なる瞬間も多いですから、同時押しの傾向を強く感じるのも納得できます。

符点音符型は、その名の通り符点音符(元の音符から1.5倍延長された音符)を使用する混フレになります。参考元での呼称でいえば符点8分型がそれですね。
例えば符点8分音符は16分音符3つ分。符点8分音符でメロディを奏でる時、本来16分音符にしか出せないタイミングで「4分や8分で刻むリズムから必ずズレたメロディを鳴らす」ことができます。1+1=1.5、にはなりませんからね。(ただし2小節ごとに単純音符で”着地”し、このズレを解消する場合が多いです)
逆に言えば単純音符のリズムにもまた、符点音符には鳴らし得ないタイミングで音を鳴らす機会があるわけで。そのタイミングのズレ、絶対にもう片方のフレーズと重なる可能性がない音符が存在する点は、単純音符と区別してでも強調されるべき特徴だと感じます。

段々ゲシュタルトの崩壊を感じたので、リズム譜を用意してみました。
楽譜上でも単純型は1拍~2分の1拍の範囲内でリズムを作っていますし、符点型では同じ種類の音符を使っても、符点の有無でリズムに差をつけられることを示しています。

この2つの分類に当てはまらないような混フレは、もう自由型と言ってもいいのではないでしょうか。符点8分でリズムを刻んでいても、もしお相手が16分音符だったら? 必ず重ならない音符がある、そんな符点音符型の前提が無くなってしまいます。こういったケースはいくら分類してもしきれません。
一方で前述の「右手と左手で違う動きをする」点を考えると、2つのフレーズの双方が8分音符を叩き続ける、音ゲー的には「実質同時押しでは!?」というような譜面であっても、手や指の動かし方が異なっているため、文面上での混フレの定義に当てはまるといえます。それを納得しつつも納得しきれていないから、このような奇行をしているわけですが……。

②「混合」の定義

続いて混フレにおける「混合」の意味を整理していきますが、この項を「フレーズ」よりも後にしたのには理由があります。
だってフレーズ以上に、混フレが混フレであるための「混合」の境界が、わからないので…!
初めに引き合いに出した譜面に対して「混ざっていない」と言いきったことも、本当は言い過ぎていないか心配で心配で……!!

2つ以上の音やフレーズを拝借し、配置すれば、それすなわち混フレである筈。
しかし頭ではそう考えていても。
混フレを認識し「混フレだーーー!!!!!」と嬉々として浴びる譜面もあれば、「2つのフレーズを演奏しているのに混フレとしての楽しさを受け取れなかった」と感じる譜面もあります。
その理由はリズムパターンの違いによる、と考えられてはいても、私はリズムの違いについて上手く説明する言葉を持ちませんでした。また言葉を得てもなお、感覚で区別していいものかと思い悩んでいます。

というわけで図表をもう一度、今度は譜面っぽい絵を作ってみました。何が分かるわけでもありませんが、少しは考えやすくなったでしょうか。
ちなみに2つのパターンは用語説明に例として示された楽曲の譜面から拝借しました。(有志によりこちらの譜面が『Colors(radio edit) / dj TAKA』のHyper譜面であることが突き止められています)

図表左側、例1。先程の楽譜例の下段、符点8分で構成された左のフレーズに、16分のちょっとした階段のフレーズを混ぜた複雑な混フレです。もちろん頭の中で同時に唱えるのも、ちょっと難しい。
ここで2つのリズムを一緒くたにする(譜面を横向きに認識する)と、
”タカタタカタン” というリズムを繰り返す(太字がリズム側の押下タイミング) 混フレのパート」と説明できます。……それでも難しいものは難しいですが。

もっとわかりやすく “らしい” 混フレと言えば、図表右側、例2のような配置になるかと思われます。
青鍵盤で奏でる符点8分音符のメロディと、白鍵盤で刻む8分音符のリズムとが分担・分割可能な位置でくっきりと分かれ、タン タン タン”と混フレのリズムを成している、心地のいいパートになっています。最高ですね。

2つの例の違いは何でしょうか。
私は色々ありますが、何といっても「空白」に目が向きます。右側の譜面を横向きに認識した時に現れる、どちらのフレーズも叩かない16分休符の隙。
やっぱり感性的な部分は入ってしまいますが、16分音符が滝のように降ってくる場面は、忙しく、隙がありません。
そして(最初の図表にある、2つの譜面のように)片方のフレーズにあまりに隙が無い時、混合フレーズとしての概念を持っていても「混フレ譜面」よりもっと別(階段・同時押し・リズム難・トリル・エトセトラ…)の傾向を意識して、混フレ譜面として楽しむことが難しくなっているのかもしれません。

「どんな混フレが楽しいのか」。
以上の思索を踏まえると、混フレ譜面と呼ばれる混フレが楽しいのでしょう。

ごめんなさいちゃんと説明します。
混フレは「複数フレーズの集合」という大分類を持つ言葉でありながら、私(たち)は普段小分類である「混フレ譜面というカテゴリ」に定めたパターンを認識しているのです。だから大分類を前提としていた私は混乱し、また自分の中での定義が曖昧になっていたと思われます。
複数のフレーズを捌く事への純粋な充足感や、単純音符と符点音符によって現れる空白、同時押しとちょっとした交互押しとのメリハリなど。これらは音楽ゲーム用語としての混フレ譜面の魅力であり、それを感じられる譜面を私(たち)は混フレと呼んで、私は楽しんできた。
私はそのような結論を圧縮して、「混フレの混フレ部分が大好きだ」という回答が形になったのです。


余談:混フレの「歴史」を追えない

多くの方々が題名をオマージュしてきたであろうことでおなじみ『野球の遊び方 そしてその歴史 ~決定版~』を思い浮かべながら付けた題名であるものの、当の自分は混フレについての遊び方はともかく歴史……混フレの歴史って何!? になっていました。これでは〜決定版〜なんてとてもじゃあないが付けることはできませんね。そんな…。

先述の用語集の中でも「SOF-LAN譜面」や「餡蜜」など、明確に語源が存在する用語が記載されるに至っており、強烈なインパクトを持ったこれらの名称は今でもその歴史が語り継がれています。
が、混フレ、そういう継承の類をまるで見掛けません。
音楽用語なのかと思いきやそんなことはなく、検索上では各機種音楽ゲームの用語紹介ばかりがヒットします。普遍的な用語の組み合わせゆえに歴史に溶け込んでしまったのでしょうか。
流石にURL添付は憚られましたが、私が見つけた中で最古の「“混フレ”という単語が用いられたエントリ」は2002年6月。
ただbeatmania IIDXが既に7th styleまで、pop'n musicは8まで稼働しているような時期という事で、読む限りではこの時期すでに、混合フレーズの認識も、混フレという略称も定着していたように感じられました。
だって初代beatmaniaまで遡っても、プレイ動画を軽く漁れば混フレにあたりますからね!!『Believe again HYPER MEGA MIX / dj nagureo featuring miryam』のメロ+ドラムの混フレを知った、その時のえもいわれぬ感情、わたしは忘れられそうにありません。

インターネットなどという歴の浅く泡沫の如く信用ならないメディアの片隅で、この雑記を記した理由はただひとつ。
「あわよくば当時を知る方がこの記事を目にし、口伝をX(旧Twitter)に遺してくれたなら……!!!」という邪な思いを抱いたからです。私は本気です。暫くのちに『混フレ 起源』で検索をかけさせて頂きます。万が一にいらっしゃいましたら何卒よろしくお願いいたします。


2)混フレを楽しむために

①まずは基礎をだいじに

混フレは最低でも2つのフレーズが1つの譜面に集約されます。ということは、主に4分のリズムを取らせたり、ボーカル合わせのノーツのみを配置したりするような、簡単な難易度では混フレは現れ得ないことを指します。
例えばjubeatなどは、特にその傾向が顕著に感じられました。0からの初心者にとって譜面的な意味では確かに取っ付きやすい機種ですが、ある程度成長せねば混フレの楽しさに辿り着けない機種である事実を示してもいます。

まずは、ある程度四つ打ちを維持するリズム感覚と、メロディ通りに叩くことへの慣れが必要なのではないでしょうか。多くが2本指でのプレイを想定するスマホ音楽ゲームは、やはりこれらの能力を養える場として ”強い” なあと感じます。もはや混フレの聖地です。

②混フレを「攻略」する

今回述べたような”混フレ譜面” で培われるのは、あくまで混合フレーズ概念の基礎部分に過ぎません。
そして今回の考察は、混フレというパターンは多くの譜面傾向に通じる土壌でもある、という考えを補強してもいます。

リズムが絶え間なく刻まれた上で、”リズムが16分音符刻み” ”曲自体のテンポが速い” などの要因で同じ場所を素早く叩き続ける譜面であればそれは「軸押し」とも呼ばれています。
いわゆる「スウィング」を基調とした混フレもありますし、裏拍でリズムを刻む混フレはメロディ次第で「ハネリズム」に進化も可能です。
符点8分型の混フレにおいて、今回の例では2小節ごとにフレーズをリセットしていました。小節線を跨ぐリズムのズレ、これを解消せず維持したまま進行したなら、それは「ポリリズム」と呼んでいるリズムの基本形とも言えます。
そして当たり前ですが、3つ以上のフレーズが混合した複雑な譜面も、混フレのパターンの1つです。

私が出会った幾つもの曲と譜面を思い浮かべてみれば、まだまだ混フレの全てを楽しむ技量はない、そう考えざるを得ませんでした。
それも仕方のないことで、上記の如く「すべて」が混フレである以上、「すべて」を習得するのに年月が掛かるのは当然のことなのでしょう。
混フレを解読し、攻略に挑み、楽しめるように努力する……その道のりは未だ長く、だからこそ私は魅了されたのかもしれません。

③難所で、憩いで、やっぱり難所

総括すると私は多分、このような立ち位置でいる混フレを好きでいます。
リズムだけ、メロディだけをたどたどしく追っていた時期に出逢えば、両者が一緒くたになって襲ってくる、強敵として映る混フレ。
現在私が相対する、絶えず16分のノーツが降ってくるような高密度譜面の中にあれば、体内のリズムを整えられる比較的密度が薄い休憩地点として有り難がれる混フレ。
そしてフレーズが混ざり合い、難解な譜面パターンとして今でも立ちはだかってくる混フレ。

階段譜面でも、同時押し譜面でも、同じような理由で好む方がいるでしょう。私はそんな理由で好んだのが、混合フレーズの譜面でした。
音楽ゲームを嗜む中でなくてはならない「譜面」に、上り坂から山頂まで付き合う譜面傾向の中に好きを見出してしまった私は、幸運で、ちょっとだけ無敵だと思ったりしています。


最後に:この曲が混フレ!2023

ということで今回は、混フレについての私見をお送りしました。
個別のパターン例、個別の好きな曲、何もかもが語り尽くせませんが、もとはと言えばそれらを語ろうとしたところで、”定義”という哲学問答に足を取られたのですから、そちらはまたの機会にいたしましょう。
最後に1曲、「今一番楽しい混フレ曲って、何?」という自問に自答を行いまして、今回は一旦シメとさせてもらいます。

その曲とは『Surf on the Light / Tomoyuki Uchida』
4分で刻むバスドラムと、8分と符点8分のパキッとしたピアノのメロディ。そして最初から最後まで混フレたっぷりの譜面が織りなす、ワクワクの止まらない1曲。
ノスタルジアで初登場した当曲は、IIDX・pop'n・jubeatに移植され、このたび用語集を拝借しましたBEMANI PRO LEAGUEでも数度選曲されています
少しベタな選曲かもしれませんが、様々なきっかけでこの曲を知り、遊んだとき……混フレを楽しむための導線になれるような、曲調と譜面をもった譜面だと感じているからです。そんな曲があるのだと、気に留めていただけるだけでも幸いです。

ただしさっきも言った通り難易度はHardやHyper辺りからでないと出てきてくれないぞ! そこまでは自分の力で、頑張って上達してくださいね。




ー ー ー ー ー ー ー ー ー

書いた人:かりんとう
リズムゲームにやんわりと囲まれた幼少期を過ごし、高校時代からはGROOVE COASTERを目当てにゲームセンターへ通い始める。現在はpop'n music・ノスタルジア等BEMANIシリーズを中心に、媒体を問わず浅く広く楽曲を楽しむ一般音ゲーマー。

ー ー ー ー ー ー ー ー ー

次回の更新は11月4日(土)「東方アレンジ楽曲が音ゲーで遊べるようになった日/矢澤 豆太郎」の予定です。お楽しみに!