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雪の策略。

 雪の降る日はあたたかい。そうやって油断させられてきた。
 地面に落ちて溶ける雪、脆くも儚いものだよと欺いて、か弱さ、心細さを撒き散らし、涙に暮れながらしくしく溶けて忸怩を見せつけ、その実、後続部隊の足がため。夜が覆い被さればいよいよ時満ちて、闇のベールが剥がるる朝に、世をひっくり返した一面の銀世界。してやられたことに遅ればせながら気づくも、後の祭り。
 雪に占拠されたる街は、滑るは、動かぬは、どかぬは、居座るはで、都市の血流凍りつき、思考回転も寒さに凍え機能不全、テレワークであればなんとか凌ぎも叶いそうだが、電車でワープの出勤先は遠くにありて思うものに姿を変える。

 地方で猛威をふるった2月初めの大寒波、不幸中の幸いで都会の備えは杞憂に終わった。降る降ると脅され身固め心づもりの事前の策も、降れば降られぬ先の杖、降らねば降らぬ多雪の思い過ごし。

 とある都会オフローダーがあわてんぼうドライバーに化身して、スタッドレスタイヤを急遽、買い求めたんだとさ。スキーに行くでもなく、雪国キャンプに出かけるでもない。実家が北国であるものの、帰省で車を使うわけでもない。ただただ寒波で都会が非常事態に陥ちたなら、の転ばぬ先の杖。必要なかったね。というお話。まだ雪災難が終わったとは言えないんだけれどもね。取り急ぎ。ぷっ。


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