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【29.楽典のこと✏️】音と音の幅

紙に書いたある点からある点までの距離を計るにはcmという単位を用います。また卵一個の重さを測るにもgという単位を用います。では音と音の幅(2音間の高さの隔たり)は何と言えば良いでしょうか?

今回の記事では音と音の幅についてお話しします。音と音の幅あるいは2音間の高さの隔たりは、度数(詳しくは後述します)によって表されます。前回の記事で和音についてお話ししましたが、和音もⅠ度の和音、Ⅳ度の和音など「度」を使用しましたが、これからお話しする音と音の幅についても「度」を使用しますので混同しないように注意してください。


音と音の幅の数え方

音と音の幅とは、わかりやすく言ってしまえばドとファはどれくらい離れてる?というようなものです。このどのくらい離れてる?というのが音程ということになります。カラオケなどで音程の良し悪しが問題になりますが、音程が良い状態とはドからファに移行するときに正確に移行できた状態です。また音程が悪いという状態はドからファに移行しているつもりが、実際には全く別の音に移行してしまっている状態なのです。この「どれくらい離れてる?」の「どのくらい」をはかる単位として「度数」を用いるということです。
①ではドからファまでの音の幅ですので、ドから数え始めてファは4番目の音になりますのでこの音程は4度ということになります。
②ドからシまでの音の幅ですから、同様にドから数え始めてシは7番目の音になりますのでこの音程は7度ということになります。
譜例ではドから○までの音の幅として記載していますが、音程はレからでもミからでもどこの音からでも幅を数えることができます。
③では全く同じ音の幅の例となります。同じ音同士なので実際には幅はありませんが、これは1度として数えます。また一方が1オクターブ上の同じ音だとしたらこれも8度と数えます。1オクターブの記号に8が使用されるのはこの為です。
④1オクターブ以上離れている音と音の幅はそのまま9度、10度と数えることもありますし、⑤のように1オクターブと2度、1オクターブと3度のように数えることもあります。

ドからファなどの音程を数えていく方法をお話ししましたが、では今度はドに♯がついていたら?あるいはファに♭がついていたら?と疑問が出てきますね。こちらもルールがありますのでお話を進めます。

臨時記号がついた音の音程

上記の譜例はドからソの音程を基本に記してあります。ドからソの音程ですので基本は5度です。♯や♭がついた場合でもこの5度は変わりません。鍵盤図とともに順に見ていきましょう。
①ドからソ♭の音程を考えます。ソの音が♭で半音下がりますので、鍵盤上ではGから3の鍵盤に移動します。これは基本のドからソの音の幅よりも半音狭くなります。
②ドからソ♯の音程では①とは逆にソの音が半音上がりますから、鍵盤上でソの音はGから4に移動し、基本のドからソの音の幅よりも半音広くなります。
③ではドからソの音程で下の音=ドの音が半音上がっています(鍵盤図Cから2)
下の音が半音上がりますので基本のドからソの音の幅よりも狭くなります。
④ではドからソの音程で下の音=ドの音に♭(鍵盤図Cから1)、上の音=ソの音に♯(鍵盤図Gから4)がそれぞれついていますので、基本のドからソの音の幅よりも下に半音広く、上に半音広くなっており、合計半音2個分幅が広くなったということができます。ここでは譜例を示しておりませんが、逆のパターンとして上の音が半音下がって狭くなり、下の音が半音上がって狭くなり合計半音2個分幅が狭くなるという音程もあります。
⑤どちらの音にも同じ変化記号が付いている場合は(譜例は♭同士ですが、♯同士もあります)同じ変化ですので音の幅は変化ありませんので基本の5度と同じです。

同じ5度と言っても♯や♭がつけられ音程が変化してきますと、実際に音を出した時かなり響きが違ってきます。これほど違ってきますと、同じ5度と言い続けるには問題が生じてきますね。実はこのような変化した音程にはまだ詳細な区別がされています。この区別はかなり専門的になりますので必要だな、面白そうだなと思われた方は続きをご覧いただき、まあいいかなと思われた方は、読み飛ばしてください😅

詳細な音程

♯や♭が付けられる前の基本の音程の話をする前に「詳細な音程」の図中鍵盤図をご覧ください。鍵盤図に色を付けた部分は半音を表しています。ミファ、シドの2箇所は2音間が半音の関係です。このミファ、シドの二つの半音が音程を理解する上で重要なポイントとなります。

まず、2音間の幅は1度、2度、3度、4度、5度、6度、7度、8度の8パターンが考えられます。
③は2度・3度のパターンを表していますが、2度は隣同士の音になりますので、ミファ、シドそのものが半音になる音程です。このミファ、シドのどちらか一方が音程内に含まれているかどうかにより、基本の位置が決定されます。ミファ、シドは2度かつ半音ですので③の青文字ミファは短2度が基本の音程となります。青文字3度の音程内にミファが含まれていますのでこれも短3度が基本の音程となります。ピンク文字の2度は半音の関係ではありませんし、ピンク文字の3度もミファ、シドのどちらも含んでいませんので基本の音程はそれぞれ長2度、長3度となります。
④は6度と7度の音程です。6度と7度は音と音の幅が広くなりますので音程内にミファ、シドは必ずどちらかが含まれることになります。どちらか一方が含まれる時(ピンク文字)基本の音程は長6度、長7度、ミファ、シドの両方が音程内に含まれる時(青文字)基本の音程はそれぞれ短6度、短7度となります。
②は4度と5度の音程ですが、4度ではミファ、シドの半音が音程内にどちらも含まない音程が出てきます。特別な音程といえますが、ファからシの音程です。こちらは増4度という基本の音程になります。また5度でのシからファの音程はミファ、シドの両方を含んでいますので基本の音程が減5度となりこちらも特別な音程になります。その他の4度、5度の音程は必ずミファ、シドの半音が必ずどちらか一方を含んでいますのでそれぞれ完全4度、完全5度が基本の音程となります。
①1度と8度は同じ音と考えればよく、完全1度、完全8度です。

謎の言葉、「長(ちょう)・短(たん)・完全」について以下の図をご覧ください。

系列関係図

その度数によって完全系か長短系かが決められています。
1、4、5、8度は完全系
2、3、6、7度は長短系
基本の音程がこの図のどこかによって、♯や♭で変化した音程の幅が広くなっていくのか、狭くなっていくのかの流れが変わっていくのです。例えば基本の音程が短3度の音程があり半音一つ分幅が広くなった場合系列関係図の短から一つ右の長になるので変化した音程は長3度になります。また基本の音程が長6度の音程があり半音二つ分幅が狭くなった場合系列関係図の長から二つ分左の減になるので変化した音程は減6度になります。


重減(じゅうげん)⇄減⇄完全⇄増(ぞう)⇄重増(じゅうぞう)
重減⇄減⇄短⇄長⇄増⇄重増

完全系と長短系では上記の通り異なるコースを辿って音程が変化していきます。
この出発地点の音程(基本の音程)をよく理解しておく必要があります。

「臨時記号がついた音の音程」で示された譜例の詳細な音程は
①減5度
②増5度
③減5度
④重増5度
⑤完全5度
のようになります。


今回は音程についてお話ししました。音程がわかると何かメリットがあるのかという問題ですが、演奏においては、例えば5度の音程は以前にお話ししたポジションにおいて1指から順に鍵盤に指を置いたとき自然に1、2、3、4、5指と置けるポジションの1指と5指の関係になります。1指と5指の間隔が感覚として身についていけばポジション外の6度、7度、8度の音程(どれくらい指を広げれば良いか)の感覚が掴めてくると思いますので読譜が早くなる、ミスが少なくなるのではないでしょうか。また和音の記事ではお話ししませんでしたが、長3度の上に短3度を置いて作られるのが長三和音になるので細かく和音を解析することができます。これもまた読譜時等に役立つでしょう。難しい部分もありますが、興味を持って学習されると良いでしょう。

最後までお読みくださりありがとうございます😊次回もまたよろしくお願いします🙇‍♀️

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