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【38.楽典のこと✏️】発想用語についての考え方

「今日は雨が降っています」
という文章があった時、皆さんはどのように読みますか?小学生の頃の国語の本読みのような感じでしょうか?はたまた朗読劇のような感じでしょうか?それともニュースを読み上げるアナウンサーのような感じでしょうか?

「今日は雨が降っています」
という文章をただ読むということならば、皆さんは様々な経験の中で、ご自分の思うように読まれるでしょう。それは文章を読むことに日本人が持つ共通の認識があり、そこに違和感のないように読むことが出来るからです。

ではこの文章の前後に背景となる文章が書かれており、ある程度のストーリーが加えられていたらどうでしょうか?

ケース1(小学生)
遠足の日の朝、目覚めると雨が降っており、思わずついて出てきた言葉としての「今日は雨が降っています」

ケース2(農家の方)
この時期に雨が降らないと作物が育たない状況下で、やっと雨が降った日の朝、
「今日は雨が降っています」

ケース3(雨が降るとお仕事が出来ない職業の方)
何日も作業続きで、雨が降らない限りお休みが取れない状況下で、やっと雨が降った日の朝、
「今日は雨が降っています」

このように考えていきますと、同じ文章でもかなりニュアンスが違ってきますね。文章だけがポンと書かれている場合、先に示した通り、国語の教科書のように、朗読劇のように、アナウンサーのようにと一般的な文章の読み方になると思います。がケース1ではがっかりした小学生の様子を、ケース2では歓喜に舞い上がる農家の方の様子を、ケース3ではやっとお休みが取れるとホッとしている作業員の方の様子を表現しなければならないでしょう。

では、各ケースの様子を表すために文章に注意書きをしておくのはいかがでしょうか?脚本などの文章では朗読される方が直接注意書きをすることもあるでしょうが、もともと脚本家の方が注意書きをされている場合も多いのではないでしょうか。そうすることでこの場面では、このような背景の中、この場面の様子を表現するということが指示として残りますので、朗読される方がどなたであっても、この場面の様子は同じ感情が表現されることになります。


それでは、この状況を楽譜に置き換えてみましょう。とあるメロディーがあった時、そのメロディーをどのように演奏すれば良いでしょうか?何も指示がないままの楽譜でしたらまずは、一般的な演奏をしてみます。これは一般的に行われている演奏のことで、フレーズの終わりはデクレッシェンドして終わる、などのごくごく一般的な演奏です。あるメロディーの背景が前述のケース1から3までの場合ですと、ケース1では楽しみにしていた遠足が雨で予定変更になってしまってがっかりした小学生の様子を表現しますし、ケース2・3の場合もそれぞれの感情を表現することになります。文章の場合ですと注意書きで行う指示になりますが、楽譜上でそのような指示はどうすれば良いでしょうか?

それが、曲想についての用語になります。

曲想というとまず何のこと?と思われると思いますが、文章の場合で説明した通り、メロディーを演奏する際にどのような感情・ニュアンスで演奏するのかということを指します。その際に使用する用語を発想用語などと言います。作曲者が楽譜上で一般的な演奏の仕方を想定している箇所にはあまり細かに書かれていないと思いますが、一般的でない箇所、急に場面が変わる・徐々にテンポが変わる・心情の変化が起こる・曲全体の雰囲気が変化する、または一般的な演奏の仕方を行っていた場合とは違った演奏の仕方をして欲しい場合・敢えて同じように演奏して欲しい場合などの箇所で指示が書かれていることが多いと思います。特に注意して演奏して欲しい場合などにも書かれています。ですから作曲者の意図が明確になりどなたが演奏されてもある程度骨格の違わない曲が演奏できるのです。ただ、発想用語は数値で表されるものではありませんので、どの程度テンポを変化させるのか、どの程度柔らかく演奏するのかといったところで各演奏者の腕の違いが現れますので、全く同じ演奏にならないということになります。レパートリーとしての曲(主にクラシック曲)を仕上げる時にはこの発想用語をしっかりと解釈してご自分の演奏に落とし込む作業が必須ですので、バイエルやツェルニーなどの練習曲を仕上げる時よりもより曲に対する理解が必要になるでしょう。

一般的に使用されている発想用語は初めヨーロッパで音楽が発達した関係でドイツ語、イタリア語、フランス語などが多く、また後にアメリカやロシアなどでも発達しましたので英語やロシア語なども多くみられます。外国語に由来するものが多くありますので、その国の生活スタイルや宗教(キリスト教)なども学習しておくと曲の理解につながると思います。各国の言葉で書かれた発想用語ですが、記号として使用されているものや、ただ単に脚本家が文章に指示した注意書きのような文章で書かれていることもあります。その昔、そのような場合に遭遇した時は、辞書を片手に全く訳も分からず単語の意味だけを書き殴って、こんな意味かななどと解釈してレッスンに伺っておりました。今ではスマートフォンのアプリですぐに翻訳が出来るので便利になったことを痛感します😅

発想用語は皆さんがお使いの楽譜の付録のように巻頭・巻末などに記載されていることが多いと思いますので、そちらを参照されればよろしいかと思います。もしもっと詳しく知りたいと思われるのであれば、その他の楽典の知識も含まれている楽典の本や楽語辞典のようなものも購入されると良いでしょう。


今回の記事では発想用語を取り上げました。楽譜の巻頭・巻末に付録のように掲載されている記号にはどのような意味合いがあるのかのお話をいたしましたが、この考え方は私がいつも考えている事ですので、この考え方は間違っていると思われる方も当然おられることでしょう。ピアノをはじめられて間もない方、初心者の方に対して、発想用語をよりわかりやすく説明するためのお話とご理解ください🙇‍♀️

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