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after exposure to faint lights

昨日は"Faint Lights" 田中慎太郎 with Phidias Trioを無事に開催することができました。お越しいただいたお客さま、KMアートホールの皆さま、大事に作品に向き合ってくださったPhidias Trioの御三方、ステージをサポートしていただいた木下さん。その他関わってくださった全員に感謝の気持ちで一杯です。

今までの作曲活動を振り返ると、自分の創作活動のために作曲するか、商業の世界でクライアントのオーダーのもと作曲することがほとんどでしたが、この演奏会を通じて演奏者の顔を想い浮かべながら曲を書くこと、そしてそれを丁寧に取り組み演奏していただくことが、これほどに尊いものなのかと思い知りました。新作はどれも穏やかな音が続く印象を受けると思いますが、演奏者には深い集中力を要求する作品の連続だったと思います。そして会場に響いていた音楽は、私が楽譜の上で想像していたそれ以上に素晴らしいものになりました。「永遠と一日」の収録曲は私もギターで参加しましたが、その他の楽曲は私も客席の隅で、仄かな明かりを浴びながら聴かせていただきました。

アンコールはバッハ(BWV106 ’Actus Tragicus’からsonatina)のトリオ編曲です。現代音楽をはじめ様々な魅力的な音楽を知るうちに、私の探求するべき道はどこにあるのかと迷ってしまうこともありましたが(20代の頃は数年曲が書けない時期もありましたし、これからもその迷いの連続なのかもしれない)、そんな時いつも仄かな灯りとして道標になっていたのは、バッハやアルヴォ・ペルトの音楽でした。今回のコンサートを、私にとっての「仄かな明かり」で締めくくらせていただいた形です。

このコンサートはもともと9月に予定されていたのですが、出演者にコロナ陽性が判明し、今月に延期になっていたものです。延期になった分、結果としてさらに成熟した仕上がりになったと思います。そして、コンサートを実施できることや、ひとりひとりのお客さまにご来場いただけることが当たり前ではなくなった世界で、こうして無事にコンサートを終えられたことに特別な喜びを感じています。それと同時に、私たちには残された時間がある限り、何度でもリトライできるのだという力強い体験にもなりました。

とても力を入れていた公演だったので、やりきった達成感と心地の良い疲労感に包まれながら、今日はずっと放心状態。窓際でお日さまの陽を浴びながらゆっくり一日過ごしました。こうして私が布団と一体化している間にも、きっとPhidias Trioの皆さんは次の本番へと準備を進められていると思います。どうぞお身体をお大事に師走を乗り切ってください。そしてご来場いただいたお客さまへ…そんな大事な本番を見届けてくださって、本当にありがとうございました。

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