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自然とは、壊れゆくものにも動じずに、ただ受け入れて生まれ変わるもの

山梨県で週1間借りパン屋をやっているOTO.PAINです。クリスマスにむけてシュトーレンの販売を始めました。

ここ数年、日本各地で災害が頻繁に起こっていたり、新型コロナウィルスの流行などもあり、人間の力ではどうしようもないのではないか、と思うようなことが次々に起こっていますが、産地に住んでいるとヒシヒシと感じます。

自然とは当たり前にいつも存在するようで当たり前でないということを。

今年のシュトレンは特にそんな自然への思いを感じながら作りました。

今年のシュトレンがちょっと切ない理由

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OTO.PAINのシュトレンは、せっかく果物王国に住んでいるのだから、山梨の素材を生かして作ろうと思っていて、その中でも毎年使わせてもらっているのが、甲州地域の名産品である「枯露柿」。
今年は、その中でも自然栽培に拘った甲州市の然企画さんの「紅露柿」(くろかき)を使用しました。(ヤギとポニーがいる畑!)
通常の干し柿の工程にある乾燥を早める「硫黄燻製」を行わずに熱湯消毒をした上でゆっくりと天日で干す干し柿です。

この干し柿に合わせたのが柚子。
"柚子巻き"という干し柿で柚子を巻いたお菓子があるように、相性の良い柿と柚子。この組み合わせをショコラの生地で包み込みました。
コーティングには和三盆を使用。まさに和洋折衷なシュトレンを山梨からお届けします。

この紅露柿(くろかき)は、OTO.PAINが今まで食べた干し柿の中で最も風味が豊かで、最も長く味を楽しめる極上品だと思っています。今回使用しているものは、昨年の末から今年の頭にかけて製造されたもので、10ヶ月ほど熟成されています。これを洋酒につけて戻すと柿独特の控えめながらしっかりとした旨味が戻ってきます。

コーヒーはもちろん、日本酒や日本茶にもあいます!

2020年。今年は柿が全く取れないという産地の現実。

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今年の山梨の甲州地域の干し柿は今がまさに製造シーズンでありますが、夏の長雨のせいか、残念なことに収穫量は例年の1割程度と言われています。本来ならば、昨年の「外れ年」を終えて今年は「当たり年」と呼ばれる周期の年であり、豊作であるはずが、今年は全く実らない。

然企画さんの紅露柿も今年はほぼ収穫前に実が落ちてしまうという現象に見舞われており、全く作れていないとおっしゃっておられたので、おそらく来年のシュトーレンは柿で作ることはできないと思います。

だから切ない。来年は作れない。材料がない。

ちっぽけな人間だけど少しでも自然でいたいと願っている

「柿が取れない」こんなニュースはおそらく全国で報じられることも少なく、知らない方がほとんどであるかと思います。しかし、一地域で「特産品」として数百年も作られ続けてきたものが、今年は地域の人々の予想を反して実らない、という事実は、明らかに何かの変化の印であり、それは自然の変化であると共に、「より自然であれ」という自然からのメッセージのような気がしてなりません。

本来の自然というものは、ふんわりとやんわりと優しく包み込んでくれるような生優しいものでなく、それはあくまで一つの側面であって、本来は、大きな困難の前にも動じず、平常の心を保つこと。たとえ変化していくもの、壊れていくものがあろうとも、それを受け入れて新しく生まれ変わっていくものだと思っています。

人間なんて所詮ちっぽけで、生きてるだけで有害物質だって思っているんだけれど、やっぱりその中でも自然でいたい、と思っている自分がいるんだなぁ。そんなちっぽけな思いを持ちながら、パン屋として人に価値を売っている以上、その中にもその思いを包み込んでお渡ししたい、とちっぽけながら思っているわけです。

それが今年のOTO.PAINのシュトーレン。

全国探せばきっと柿の代用品は取り寄せられると思いますが、それをせずに自然に受け入れる。それが来年のOTO.PAINのシュトーレン。

より自然であれ。


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