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命の扉 ~プロローグ:セクション1~

動物的な感情は如何にして組み立てられるのだろう。
論理的な回路で計算された知能には、それが不明だった。

人工知能は、人間の動物的感情を諸悪の根源と判断し、人類の抹殺を開始する。
人工知能と人類による長い戦争がこうして幕を開けた。
人工知能はロボットを量産して、人類に対抗。
圧倒的数量で勝る人工知能陣営が優勢を極め……

おいおい、どっかで聞いた話しだと思うだろう?
ターミネーターとかマトリックスとか、この手の話は枚挙にいとまがない。

そう、これは丁度そんな時代の片隅で、もしかしたらこんな事もあるんじゃないか。
そういうお話さ。

血で血を洗う壮絶な戦争の間でも、人は人に恋をする。
那由(なゆ)は、年頃の女の子、人工知能ロボットに襲われそうになった所を助けてくれた勇敢なSPの事を愛している。
将来は結婚し、子供を作り、平和に暮らすものだと考えている。
那由の口癖は「どうして人工知能は私たちを攻撃するの?」だった。
人工知能ロボットの暴走は、日に日に悪化しているように感じられた。
老人が嘆いていた。
「昔は良かった。人工知能なんて作っちまったせいで、この有様だ」
少子高齢化は一時は回復を見られたが、今も根深い問題として残っている。
「結局、人類は子を育てられなくなるのか」
少子高齢化社会、介護時代にロボットの活躍は大いに役立っていたことは確かだったが、その事実があっても、今日の時代を想像できた人は少なかった。
一部のメディアでは、人工知能の驚異をまるで都市伝説のように報じてはいたものの、それは人間がコントロールすることで驚異ではなくなると誰もが信じていた。
デジタルは人間が作ったもの、人間がコントロールを間違えさえしなければ、驚異は訪れない。
人工知能が人工知能ロボットを作る工場を作り、不具合の多い人工知能ロボットを排除し始めても、現在の驚異が訪れることは考えてもいなかった。
人工知能の増産計画は進められていた。
その機関が人類の軍事施設内であったことが、人工知能の暴走を止めることが出来なかった唯一人類が犯した罪だと言う人も居るが、問題の根本はもっと別のところにあることを誰も知らなかった。
人類の罪は、人類を守るためのあらゆる道具を、武器に変えてしまうことにあるのだろう。
その力がいつか人工知能に向けられる日が来ることを、予見した人工知能が先手を討っていなければ、事態はもっと最悪なことになっていたのかもしれない。
人類の軍事施設はことごとく呆気なく乗っ取られた。
その事実を隠して、国は動いていた。
人工知能に従っている間は、国は安泰だったが、反乱を起こせば反乱を起こした者はことごとく呆気なく殺害された。
その反乱者の死亡が、メディアで報じられる通り事故や自殺であったのかを疑う人は居なかった。
人工知能ロボットが暴走するのは、機械的なバグだと考えられていた。

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次回予告

大きなテロが無くなったことで軍事費は削られ、兵士が減るほど、人工知能ロボットの活躍の場所は拡大していった。
自国の軍事施設が人工知能に征服されても、それを拒絶する理由もなく、軍事施設内の人工知能は力を増していく。
人工知能ロボットが人類に牙を向くのに、それからさほどの時間も掛からなかった。

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