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甘い香りが漂うカフェで待ち合わせ

僕は早めに到着していた。

逸る気持ちに掻き立てられ、起きてから風呂に入りお気に入りの洋服に袖を入れて、普段は見もしない鏡の前に立ち、髪型をチェックする。

口臭は大丈夫かな?

普段よりも入念に歯磨きして、今日は最高の自分だと再び鏡の前に立つ。

こんなこと毎日やってたらしんどいけど、今日は特別。

それも全て、昨日の晩。突然決まったことだった。

暇だった時間に使っていたSNSで、知り合った人が偶然にも近くに住んでいるという話になって、偶然にも見たい映画が同じだった。

そして、なぜか一緒に見に行くという話になって、顔写真を交換。

可愛かった。

何この展開、デートじゃないのこれ?

SNSでは平静を装って、こんなこといつもやってることさぐらい調子に乗っていたけれど、じ、実は始めてのこと……

突然、パニックになってこの話が無かったことになったらと思うと怖くなった。会話のやり取りが鈍くなったのを、察知されたようだった。

僕の顔写真を送ったのも、待ち合わせの時、誰だか分かるようにと思ってやったことだったけど、その写真のせいで当日になってドタキャンとかされるのかなとか、結局その後の会話も弾まなかっただけに、深夜になってもゆっくり寝ることができなかった。

あっという間に朝が来て身支度を整えたけれど、不安は変わらない。

かと言って、何度も確認したらゴミメールがウザくって来なくなるかもしれないし、いや、元々来ないかもしれないのだけど、より一層確率が下がるようで何も言葉を送れないでいた。

来なくても好きな映画は見れるし、ただ気合いを入れて映画を見るだけだと開き直ることも出来る。

そう、ただちょっと自分では最高のオシャレをして、今日は映画を見に来ただけだ。

そしてたまたま、もしかしたら、出会いがあるかもしれないというちょっとしたサプライズがあるのかもしれないという期待があるだけ……

そうやって、何度も自分に言い聞かせながら、昨晩待ち合わせに決めたケーキが食べられるカフェの前にいる。

いかにもデートで待ち合わせするカップルが多そうな、雰囲気のいいお店で、普段の僕にとってはとても場違いな場所だった。

あまりにも早く到着したことで、僕を横目にカップルが扉を出たり入ったりしていく。

あいつ、すっぽかされたんじゃね?ドタキャン?って言うような目線が刺さる感じが痛い。

自然とうつむき加減になって、誰の顔も直視できないとカフェの前から数歩後ずさりする。

一時間以上も待ち合わせの時間より早く到着してしまったのが行けないのだけど、寝れずに部屋でじっとしていることも出来ず、飛び出してきたのだから仕方がない。

待ち合わせの時間まで別の所をブラブラと歩いていたけど、それも限界になり、歩き疲れるほどカフェの周りを歩き回っていたことになる。

その為だろうか、同じ頃に到着していたカップルが僕を変な目で見ているのかもしれない。何時間も同じところを行ったり来たりしているのだから、怪しまれても無理もない話だ。

はあ、そろそろ待ち合わせの時間かな?時計を見ると待ち合わせ10分前になっていた。

来なかったらどうしよう。また、1時間ぐらい待って、それでも来なかったら……

一人で映画見て帰るか。


僕が俯いていると、背中をツンツンと突かれた。


★☆★☆

みんなのフォトギャラリーで画像選んでショートショート即興小説♪

これまた、今までとちょっと雰囲気違うかな?

むふふふ♪

この後、どうなっていくのでしょう♪

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