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Double48

自分の分身となって動き回り遠隔地の相手と会話できるロボットが誕生して、四半世紀「Double 48」が誕生した。

踊る機能があるわけでも、歌う機能があるわけでもない。

ましてや、可愛い衣装に身を包んでいるわけでもない。

遠隔地の相手と会話するロボットが誕生して10年後には、分身の術が普通の日常になっていた。

さながら、世界は忍者屋敷と言った所だろう。

人工知能の融合も比較的に早かった。

初期バージョンは誕生後1年で導入されていたが、特別何かをサポート出来たわけでもない。

人が操縦しない時に、邪魔にならない程度に動いて勝手に充電するといった程度であった。

「手を叩けば近くによってくる」というお散歩モードが導入されると、仕事のオフィス用途よりも遠距離恋愛中のカップルに人気が傾いていった。

その次のバージョンアップが行われた年には、世界中で遠距離ロボット同伴旅行がブームとなり、旅行会社がロボットの搭乗を荷物と扱うか一人の人間と扱うかで大きな社会現象を巻き起こしたりした。

今は専用の飛行機があり、その専用の飛行機は乗客同士の椅子が隣り合うことがなく、ロボットの入る隙間を十分に確保していることで、一回のフライトで人が搭乗できる人数が激減している。

その為、フライトの料金も特別料金と通常よりも高値であるが、その人気は衰えることがないようだ。

飛行機に乗る人が減っていく変わりに、飛行機に乗るロボットの数が増加しているのが現在の社会情勢となっている。

そう、こんなはずではなかった。

そもそも、このロボットが登場した経緯(いきさつ)は、本人が現地に行かずにネットワーク通信によって遠隔地の人と対話することが目的であった筈だからだ。

人の技術は得てして目的とは違う用途に使われて、予想もしない発展を遂げていくことがあるが、これはそのマレなケースの一つと言っても良いだろう。

人の代わりになってロボットが移動することになるという事はあまり想定していなかったことだ。

どんな道でもロボットが付いて行くなどという機能は、初期バージョンの頃には備わっていた。

ある程度の山道を付いて行くことは出来るが、ロッククライミングまでは出来なかった。

長年、人の後に付いて行くロボットとして、人のサポートが必要であったからだ。

これだけでも25年の年月が、どれだけ大きな変革の年月であったのか、想像に容易いだろう。

Double48は、初めて人のサポートを受けずに自走する機能を搭載した。

「おはようございます」Double48のディスプレイに映し出された男が挨拶を交わす。

「あれ?お前、昨日交通事故で入院中じゃなかったのか?大丈夫か?」上司と思しき男がDouble48に映しだされた男に様子を伺った。

「はい。病院から支給されたDouble48のお陰で、こうして出勤もできました。これ本当に凄いですよ!あ、まだ病院のベッドからは抜けだせませんけどね」はにかんだ男は申し訳無さそうに頭を掻きむしっている。

Double48のアームがこれまでと同様の仕事を始めるために会社のネットワークに繋げた。

「あまり、無理するなよ」上司はポンとDouble48を小突いたが、入院中の彼には届いていなかった。

BYODが一般化している企業では、持ち込みデバイスが何であれセキュリティは万全である。Double48も一つのデバイスとして認識することが可能であり、ネットワークに接続する行為も問題になることは無くなっている。

昔は個人デバイスの扱いにも右往左往して、セキュリティがという議論が耐えなかったが、そのような話はもう無くなっている。

サイバー犯罪、とりわけセキュリティ対策といった議論の中核に置かれているモノは、アカウント管理業者側の責務である。

行政一貫になって行われているアカウント管理は、デバイス一つのメモリ上に残った情報から個人情報を抽出する事を無効化してきた、国の監視下に置かれていることは安全を約束させた。

このロボットの登場からまた四半世紀。世界は様変わりする。

ロボットがGPSで管理されるIoTのご時世では、ロボットを盗む行為が自殺行為となっており、ロボットを破壊する事そのものがテロ行為として見做され、殺人罪に相当する罪を被ることとなっている。ロボットの健康状態を把握することは重要なシステムの一つである。

このような背景からも国家VSスパイ国家の紛争は、ロボットの登場とともに、激減していった。

ロボットの入国を拒否すると発表した大統領や権力者達は、多くの国で糾弾されその権力を追われることとなっていった。

ロボットが潜入できない場所は既になく、内紛続く地域の戦場カメラマンとして多くの活躍を行ってきた。有志あるロボットには感謝状が送られている。

こうして、人は人の行いをロボットと共存することで、人が直接被害を受けることが少なくなったのである。

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