なめらかな世界と、その敵 の読書感想文

SFを読んでいて楽しいのは、脳内に文中の世界を想像してその世界に没頭している時なのだが、この本は一行目からそれが非常に困難。だから気持ち悪い。私はそれを理由に一度読むのを諦めた。
だが、その奇怪さの理由が徐々にわかっていき、脳内映像が後から補完されていくのが非常に気持ち良い。
そして、この本には魅力的な文中世界が各短編ごとにある。後から補完され、構築されていく世界の気持ちよさが6回。だから、読み始めたらやめられない。
脳内に毎回難解な世界が生み出されるゆえに、読んでいて頭が痛くなるのだが、面白いという現実の前では痛みが霞んでしまう。面白いなら痛くても構わない。もう一作、もう一作と読んでいるうちに本を読み終わってしまう。
これだけの快楽を6回ぶち当ててくる筆者への信頼も、読んでいくうちにどんどんと上がっていく。本の後半になると、「今はわからん表現だけど、そのうち理解できるだろ」と思って脳内世界の構築を放棄して、ちょっと読むのが楽になる。

私が特に気に入ったのは「ゼロ年代の臨界点」である。収録されている作品の中では特に短いものなのだが、ラストの一文で全てを回収するような仕掛けがありシビれた。
こういうのに俺は弱い。去年見たシルバニアファミリーの「I am ME」とか、ライフイズビューティフルとか。

俺はこの本はSFの入門には向いてないと思う。
最初の一文が理解不能だからだ。
もっとわかりやすいところから入るのがいいと思う。
マトリックスとか電脳コイルがいいと思う。
ライトノベルや映像作品のおかげで今理解できている。感謝。
あと、ホーリーアイアンメイデンってSFなの?ファンタジーじゃない?
SFファンじゃないから文脈はよくわからないけど、とにかく一読者として非常に楽しめました。面白かった!!

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