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アクセサリーをめぐる冒険

 私の趣味はリサイクルショップ巡りである。

なんとかオフとかどーちゃらショップとかではなく、地元のお母さんたちが「不用品を引き取ってその売上で地域福祉に還元!」みたいな志でやっているボランティアショップが大好物である。値段付けが適当なのが最高にいい。

 そこに並べられているモノ達には物語がある。昭和の時代を生き抜いて捨てられずに令和まで生き残った彼らが、あのキラキラと無駄に希望に満ち溢れて夢を見ることが許されていた時代の片鱗を伝えてくれたりするのだ。モッタイナイ運動なんかもあったけれど、今では昭和テイスト(レトロモダン)とでもいうべきか、特殊なテキスタイルパターンで包まれたキッチングッズなんか人気があるから、勿体ないどころかカッチョエエ。だから、わりと争奪戦。そして自宅に使わない食器や昭和グッズが増えていくのである。

 昨日、店内ですぐに目に入ったネックレスの画像を見てほしい。これを手に取らない人がいるだろうか。情念とまではいわないけれど仏教でいうところの眉間の白毫が生えてるところ、第三の目が今にもパカっと開いて覚醒する直前のような膨らみ。平刀の彫刻刀で柔らかい桐をチマチマと彫っていく指先が見えるようだ、繊細というよりはその作業に取りつかれてるのではと思われるほどの細かさ、それが柔らかいカーブを作り出している。ギロっとにらむようなアイライン、渦巻く髪の毛、そしておちょぼ口!わー最高!

 銘の入った木箱に入っているくらいなので作家ものだろう、あとで名前を調べよう…と、思ったら甘かった。「橋本昭子作」と読めるその名前ではまさかのノーヒット。パートナーに画像を送って「作家名が不明なのだが」と伝えたところ、30分くらいして「この人じゃない?作風が似てる大山昭子さんなる木彫家」と昭和に出版された本の画像が届いた。おお、似ている。鼻の形は若干違うが平刀で削りだしていくスタイルとおちょぼ口は健在、絶対この人!ということで大山昭子検索がスタートしたのである。

 ところで、このペンダントの後ろには名前が彫ってある。「K.Dヨリ」とあたかも恋人に寄せて自分のイニシアールを素人が彫った感丸出しである。おいおい、作家作品に自分の名前を彫るなんて野暮なことするなよ、ダイスケ(仮名)。しかしながら、私の推理では大山さん(昭和4年生まれ)が結婚して大山になる前の作品かもしれないので、彼女が25くらいで結婚してたとして…70年弱の時間がたっているわけで。これをプレゼントされた女性も家を片づける年代になり排出された経緯なのだろう。戦後のロマンスを手の中に感じながら、とにかく「大山昭子」なわけ。ダイスケ(仮名)とその彼女の話はどうでもいい、もっと調べなくっちゃ!

 寝床に入ってもダラダラと「大山昭子」検索をしていたら…「川瀬武士」さんなるお父様について書いてるnoteを発見、身を起こした。その中に「武士氏の妹である昭子」さんのたこやきエピソードが!!!お兄さん発見!姪っ子さん発見!やった、でかした……と思った次の瞬間に「ん?川瀬…?川瀬さんだとしたら川瀬昭子さんじゃないの?橋本、ダレ?」と脳内で振り出しに戻る。もしかして昭子さんの作風を模倣した偽物では……!!

 たまらず、川瀬なな子さんのnoteにコメントを残してしまいました!

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