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大月書店通信*第131号(2019/12/26)

「大月書店通信」第131号をお届けいたします。

不都合なことは、なかったことにする。責任は、誰かのせいにする。――「モリカケ」「自衛隊日報」「桜」……その度合は増しているように見えます。
これらの問題については日本のメディアもその姿勢を追及していますが、「慰安婦」問題や、とりわけ徴用工訴訟をめぐる問題については、「解決の責任は韓国政府にあり」という論調が多数を占め、むしろ日韓関係の「対立」に油をそそぐかのようです。
しかし、その主張は本当に正しいのか。歴史をひもとき、日韓メディアの状況を検証するのが、12月新刊『だれが日韓「対立」をつくったのか――徴用工、「慰安婦」、そしてメディア』です。
本書で、『ハンギョレ』新聞・前東京支局長のキル・ユンヒョンさんは、「韓国には『反日』はありますが、日本の『嫌韓』のような、日本人を日本人であるという理由で差別・排除し蔑視する『嫌日』感情は存在しません」と記しています。
最悪と言われる日韓関係ですが、多くの人が状況の改善を望んでいることも事実でしょう。その際大切なのは、「不都合なことは、なかったことにする」姿勢ではないはずです。植民地支配のもとで虐げられた尊厳の回復、人権の問題として見る視点から解決の道を探る――対等な関係での対話は、そこから始まるのだと思います。


☆本書の一部をウェブで無料公開中。最新回は、「日本のマスメディアは日韓関係の悪化をどう報じ、何を報じていないか?」by 土田修さん(ジャーナリスト、東京新聞社友)です。

■新刊案内 『だれが日韓「対立」をつくったのか』ほか12月の新刊

12月の新刊です。お近くの書店にてお求めください。

●「悪いのは韓国」って本当ですか?
『だれが日韓「対立」をつくったのか』
岡本有佳・加藤圭木[編] Fight for Justice[編集協力]


「徴用工」問題に端を発し悪化の一途をたどる日韓関係。だが、そもそも問題の根はどこにあるのか? 「徴用工」「慰安婦」「少女像」の問題など、韓国への疑問や反発を解きほぐし、日韓の相互理解と対話へとつなぐ。

一部をウェブで無料公開中!

●「障害は不幸しか生まない」――被告の論理を社会は克服できたのか?

『いのちを選ばないで――やまゆり園事件が問う優生思想と人権』
藤井克徳・池上洋通・石川満・井上英夫[編]


社会を震撼させた障害者施設での殺傷事件から3年。出生前診断など新たな優生思想の登場を背景に、私たちの社会は被告の論理を克服したと言い得るのか。公判開始を前に、忘れてはならない人権保障の視点をあらためて提起する。

●時代と格闘し、積み上げた研究の歴史を知る
『歴史科学の思想と運動』
歴史科学協議会[編]

戦前日本の歴史科学の勃興期から、戦後の民主的諸学会の誕生、国民的歴史学運動の展開や六〇年安保を経て歴史科学協議会の成立に至る歴史科学運動の歩みとその思想を象徴する資料を、マルクス主義歴史学を中心に収録。

試し読みできます


●日本帝国主義史研究の精華
『上海日本人居留民社会の形成と展開――日本資本の進出と経済団体』
山村睦夫[著]

近代日本において資本進出先として重要な位置を占めた「国際都市」上海。重層的な構造を持つその日本人居留民社会を、明治の前史から日中戦争期、そして敗戦後の解体期まで、膨大な資料をもとに描きとおす。

試し読みできます


●『放送レポート』1月号 no. 282 特集=文化庁補助金不交付の衝撃

●シンポジウム 沖縄フェイクを追う(斉加尚代・滝本匠・砂川浩慶)●「表
現の不自由展・その後」再開その後(井澤宏明)●国連VS日本政府 「表現の自由」国連特別報告者の政府とメディアへの勧告をめぐって(藤田早苗)


『月刊 クレスコ』1月号 no.226 特集=ジェンダー平等を、前へ――子どもと教育の視点で

ジェンダー平等を願う多くの人々の声は、性教育バッシングなどに直面しながらも、#MeToo運動の広がり、性的マイノリティの権利拡大といった前進をもたらしてきた。あらためてジェンダー視点から、教育と社会を問い直す特集。

■イベント 雨宮処凛さん×末井昭さん トークイベント


★ 『この国の不寛容の果てに』関連トークイベント ★

相模原事件をテーマにした雨宮処凛さんの対話集『この国の不寛容の果てに』は早くも4刷。雨宮さんと、編集者・作家の末井昭さん(著書『自殺』『自殺会議』等)が、不寛容な社会のもとで「死なない方法」をめぐって対談するトークイベントです。

『この国の不寛容の果てに』×『自殺会議』
雨宮処凛さんと末井昭さんの自殺会議。

日時:2020年1月16日 (木) 19:00~20:30(開場18:30)
会場:青山ブックセンター本店内 小教室
料金:1,540円(税込)定員:50名
☆事前申し込みが必要です。詳細・予約は以下のページから。
http://www.aoyamabc.jp/event/kaigi/


■お知らせ ナディさんメディア出演

6月新刊『ふるさとって呼んでもいいですか――6歳で「移民」になった私の物語』(現在4刷)の著者、ナディさんのメディア出演情報です。

1)「クーリエ・ジャポン」にロングインタビューが掲載されました。

二児の母になり、イランに帰省して、これまで「日本が一番住みやすい国」と思ってきたナディさんの気持ちに変化が……その理由は?


2)朝日新聞国際面で12月31日から始まる新年特集連載「私は○○人」の第1回にナディさんが登場します。

3)NHK(Eテレ)の番組「ウワサの保護者会」(土曜夜9時半~)
1月18日の放送にナディさんがゲスト出演。外国にルーツを持つ児童への学校での支援のあり方について、かつての当事者の立場からお話しします。



■編集後記

商品券・切手・たばこ等は定価販売が当たり前(金券ショップを除く)との固定観念があったのですが、想定外の事態を経験しました。10月からの消費税増税に伴い導入されたキャッシュレス還元です。コンビニでSuicaを利用してたばこを購入したところなんと2%の還元が。割引とは性格が違うのでしょうが、結果は同じ。税金の塊のたばこが税金を使って割引だなんて矛盾を感じてしまいました。街中にある個人営業たばこ店は売り上げが下がってしまうのではないか? とお節介な心配もしてしまいます。(Box)


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