青白い部屋

月明かりだけの青白い部屋で
網戸から 春も終わりの
少しだけ肌寒い風が流れる中で
布団に包まり 思索することが
とても久しぶりに感じる

いや 確かに久しぶりだ
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「お久しぶり」
イアホンをつけてファミレスでワインを飲んでいた。どこか遠くから女の声が聞こえた_______幻聴。
「お久しぶり」
聞いていた音楽の中から聞こえる声か しかし とてもぼんやり聞こえる。
「おーい、お久しぶり」
ふと前を向くと女が立っていた。
過去に縁してきた輪郭・目・鼻・髪型などを 警察署にありそうな “少ない情報から犯人の顔を洗い出すパソコンの機能” のように くるくると記憶を回転させること2秒。
「あぁ、久しぶり、エミさん」
しっかり歯を出して笑う 目尻の下がった丸みのある笑顔が可愛い女性 4年前に振られてから一度も会っていなかったが 時々彼女に似た女優を映画で見る度に思い出していた女性である。女はまるっきり忘れてくれるが 男は一度好きになった女のことは一生好きなのだ。

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話が逸れたが とても久しぶりの思索
思索に没頭している間
人間は盲目になる
これは精神的な話ではない
物理的な話だ
本当に 本当に いや本当に
目の前の物が一切見えなくなるのだ

こんな思索は久しぶりだ
そして久しぶりの思索で
頭の中が好き勝手に放り込まれた
散らかり切った引き出しの中のように
なっていることを知った

一つの事を2分と考えていられない
次々に気になることや 違う思考が
割り込んできて あっちに行ったり
こっちに来たりするのだ
無駄な情報を取り入れ過ぎていることと
情報に振り回されていること
そして物事を深く
考えられなくなっていることに気付いた

青白い部屋で
網戸にして 風を感じながら
“眼球を閉じて”思索する時間も
ちゃんと確保しなければと
ブルーライトに照らされながら
思っている

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